全てを失った私を救ったのは…

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暗闇での仕打ち

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薄く伸びる日を背にファーラスはカッ、カッとステッキを突きつつ私に近づき、目の前へ立つと『ガンッ』と勢いよくステッキを床に突いた。

「ドブネズミ、貴様みたいな奴がフィリス家の屋敷に入るなんてな……。ましてや、妻として招くと言われた時は冗談かと思ったが、あの目は本気みたいだから敵わん」

日を背にしたファーラスの顔は逆光でどんな顔をしながら言ってるか分からなかったが、良い顔をしてるとは到底思えなかった。
見上げた私は『私が望んだ事じゃない』というが、それがより刺激したのか、ファーラスは床に突いたステッキを浮かせたかと思ったら、痛む左肩に押し付けてきた。

「痛っ!」
「ふん、なにが痛いだ。強く押し付けてもいないんだぞ。痛いというのはこういう事をいうんだ」

押し付けたステッキの先をグリグリと力を込め回し始めた。

「やめて!?」

私の悲痛の声などお構いなしに更に回しながら押し付け、痛がる私を弄び、その様子を見ては『どうだ、やめて欲しいならさっさと屋敷から出てけ』と叫ぶ。
痛さから逃れようと体を左に捻ると、ステッキがスッと体から外れ、バランスを崩したファーラスは右膝を床へついた。

「貴様!」
「……こんな事していいの?私がニコルに言ったらあなたは殺されるかもしれないのに」
「はっ、まるで妻気取りだな。望んだ訳じゃないといいつつもその地位を利用し、脅すとはな。
いいだろう、言ってみるがいい。それより先に」

ファーラスは持ったステッキを勢いよく私の顔めがけ横払いしてきた。
一瞬の事で避ける事もできず、バシッと音を立て左顔に当たった。
こんな時に能力を使えば回避もできたはずだが、私は使い過ぎた事が脳裏に浮かび使う事はしなかった。

「あっはっはっ!どうだ、痛いだろう?大人しく屋敷から出ると言えばこんな目に遭わなかったのに」

満足気に話すファーラスと叩かれた事で軽い脳震盪を起こし、呆然とする私。
そんな時だった。
薄暗い物置部屋だと思う部屋の扉が開き、その先にはニコルと数名のメイドと衛兵がいた。

暗かった部屋は廊下から入る日により明るくなり、顔を赤く腫らした状態の私をニコルは見た後、ファーラスへと視線を送った。

「起きたなら部屋から出す様に言ったはずだが?」
「申し訳ありません、急に椅子から転んだ為その処理に手間取っていました。さぁ、立て!」

ファーラスは立ち上がると右手を差し伸べてくるが、私はそれを叩き払いのけた。

「なにをする?」
「よく言えますね、そんな事。あなたは私をそのステッキで叩いた。その証拠がココにある」

私は叩かれ赤くなった顔をよく見える様に日に照らし、ニコルをはじめ、周りの人達にも示した。
メイド達は口を押さえつつ驚きの顔を見せ、ニコルに至っては私に近づいて来て、赤くなった私の顔に手を添えた。
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