全てを失った私を救ったのは…

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朝食

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一人になった部屋にいるとどうも気持ちが落ち着かない感じがした。
あんな事をされて嫌なはずなのに考える自分がいるなんて、と。
まるで小さな男の子が好きな子にちょっかいを出し、それに気付く、みたいな感覚だ。

「お腹が空いてるからだろう……」

自分自身を納得させ、ベットに腰掛けるとイリーナが来るのを心待ちにした。
でも、持ってくると言ってから少し経っても現れる様子もなく時間だけが過ぎ外は日がだいぶ昇りつつある。
窓から入る日が自身に当たり、影が部屋の中に形成されテーブルまで達していた。

「遅いな」

お腹はとうに限界を超えており、焦りや苛立ちといった感覚を次第に強めていった。
そして、我慢出来なくなった私は部屋を出て辺りを見渡した。
すると、廊下の向こう側がなにやら騒がしく、話し合う事が聞こえた。

「なんなの、まったく……」

イライラする気持ちのままそちらへ向かうと、話し合う声が徐々に大きくなり、曲がり角近くに来るとニコルとイリーナがやり取りをする声が聞こえた。

「そんな、私が!」
「いい、退け」
「ニコル様!?」

すると、ニコルがお盆を持ちこちらへやってきて私と鉢合わせになった。

「……なんでここにいる、部屋にいろ」
「なに、してるの?」
「見たらわかるだろう、お前の飯だ」
「なんであなたが?イリーナが持って……」

ニコルの後に続くようにイリーナが姿を現し、首を横にフルフルと動かし何かを訴えている様子であった。

「ずっと腹がなっているんだろう?昨日……」
「ちょ!?」

昨日の出来事をイリーナの前で話出しそうな雰囲気を感じ、つい声を上げ、みなまで言わせないようにカットした。

「なんだ」
「いいから!……それ、私のでしょ。貰うから」
「は?いい、退け。運んでやる、邪魔だ」
「いいから、もう自分で!」

私はニコルが持つお盆…その上には小さめのロールパンが二つ、コーンスープ、そして鮭の切り身が載せられていた。
ニコルから奪い去るように手を伸ばすが、間にイリーナが割り込み私が伸ばした左手を掴んでくる。

「イリーナ、なぜ?」

また首を横に振っており、近づくなり耳元で『落としたらもうずっとありつけない』と言ってくる。

その言葉を聞き、ニコルへと目を移すと煙たそうに私の顔を見てきた。

「もういいか?」

もう一度イリーナに目を戻すと、今度は縦に首を振る。

「……ごめんなさい」

ニコルに謝り、道を譲ると私の部屋へとスタスタと向かっていった。

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