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逃亡
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中に入るとまるでニコルの屋敷の様な感覚を覚えた。
煉瓦で造られた壁、床は赤い絨毯……見渡しつつ奥へと行くと灯りが漏れる部屋があった。
近づくと笑い声があり……
「いやぁ、リースには頭が上がらないな」
「そうね、お陰でこんな家まで住めるなんて」
陽気な父と母の声だ。
更に近づくとお酒でも飲んでいるのだろうか、瓶か何かを置く音も聞こえてくる。
キィィィ……ッとゆっくり開けるとやはりそこには父と母がおり、二人とも顔を赤く、テーブルには何本ものワイン瓶が置かれ、全て空だった。
「おぉ、リース!」
「どうしてここに?珍しいわね」
気付いた私に声をかける二人は『……っく』と酔いながら答える。
昼間なのにお酒ばかり飲む二人を私は不思議に思った。
「ね、ねぇ。何でお酒なんか……。普段飲むなんて事、いやそんなお金無かったでしょ」
「あぁー……、っく」
父は文句を言う私に不満を表しつつ言ってくる。
「いいじゃないか、別に。何もしなくても金なら入る」
「……どういう事?」
「なんだ、知らんのかお前は。お前がニコル様と婚姻を結んだからじゃないか」
「それとお金がどういう……?」
「……お前は本当に何も知らんのか?しょうがないな、教えてやるよ。
お前がニコル様と婚姻したから俺達はフィリス家から援助受けてるんだよ。毎月毎月、だから働かなくても莫大なお金が入るんだ」
その言葉にピンときた。
あの紙の内容はそれか……、と。
「で、なんでここにいるんだ?まさか、孫かっ!?」
父は嬉しそうに声を張り上げるとつられて母も『本当にっ』と声をあげる。
そして私に近づいてきては『居ない』孫を探し始めた。
「どこだ、孫は!?」
「……いない、って」
「あぁ?居ない?」
「だから、居ないって」
「ちっ、いないのか、じゃあ何でここにいるんだ?ニコル様の屋敷にいるはずだろう?」
父の言葉に黙っていると、ついて来た衛兵が部屋へと入ってきた。
「失礼、私はフィリス家の衛兵です。
ラルク様とリーネ様ですね、こちらを」
衛兵は二人に一枚の紙を差し出し、それを受け取り見始めるとみるみる顔色が青ざめていった。
そして持つ紙がカサカサと音を鳴らした後、クシャッと紙を真ん中に寄せた。
「嘘ですよね?」
「いいえ、事実です」
「そ、そんな……」
父は持つ紙を落とすと私の足元にそれが落ち、それを私は拾い上げ読んだ。
そこには『ニコル=フィリスは妻リースと離婚した。よって今まで送っていた援助金を打ち切る』と書かれていた。
言葉を失くした二人だったが、すぐに私に突っかかってきた。
「お前はなんて馬鹿なんだっ!?フィリス家だぞ!子も作れと言ったはず!?」
怒る父とそれに合わせて怒る母。
「やめてっ、私は、もう……」
「あぁっー!?うるさい!?今すぐ謝りに行け!そして撤回してもらうんだ!?」
「……無理」
「無理じゃない!?しろっ、今すぐに!?」
ごねる私に苛立ち衛兵が持つ槍を奪い去ると私の左腕に刺してきた。
「いたっ」
「痛いじゃないっ!?そんな馬鹿な娘だとは思わなかった!?……早く行かんかっ!?」
何度も刺そうとする父をさすがに黙ってみているわけにもいかず、衛兵は父を止めに入った。
「どこにでもいってしまえ!?お前なんかもう娘じゃない。とっとと出てけ、この恩知らずがっ!?」
怒れる父は持つ槍を更に私に向けてくる。
殺されると思った私は家を飛び出し、その恐怖から逃げる事にした。
煉瓦で造られた壁、床は赤い絨毯……見渡しつつ奥へと行くと灯りが漏れる部屋があった。
近づくと笑い声があり……
「いやぁ、リースには頭が上がらないな」
「そうね、お陰でこんな家まで住めるなんて」
陽気な父と母の声だ。
更に近づくとお酒でも飲んでいるのだろうか、瓶か何かを置く音も聞こえてくる。
キィィィ……ッとゆっくり開けるとやはりそこには父と母がおり、二人とも顔を赤く、テーブルには何本ものワイン瓶が置かれ、全て空だった。
「おぉ、リース!」
「どうしてここに?珍しいわね」
気付いた私に声をかける二人は『……っく』と酔いながら答える。
昼間なのにお酒ばかり飲む二人を私は不思議に思った。
「ね、ねぇ。何でお酒なんか……。普段飲むなんて事、いやそんなお金無かったでしょ」
「あぁー……、っく」
父は文句を言う私に不満を表しつつ言ってくる。
「いいじゃないか、別に。何もしなくても金なら入る」
「……どういう事?」
「なんだ、知らんのかお前は。お前がニコル様と婚姻を結んだからじゃないか」
「それとお金がどういう……?」
「……お前は本当に何も知らんのか?しょうがないな、教えてやるよ。
お前がニコル様と婚姻したから俺達はフィリス家から援助受けてるんだよ。毎月毎月、だから働かなくても莫大なお金が入るんだ」
その言葉にピンときた。
あの紙の内容はそれか……、と。
「で、なんでここにいるんだ?まさか、孫かっ!?」
父は嬉しそうに声を張り上げるとつられて母も『本当にっ』と声をあげる。
そして私に近づいてきては『居ない』孫を探し始めた。
「どこだ、孫は!?」
「……いない、って」
「あぁ?居ない?」
「だから、居ないって」
「ちっ、いないのか、じゃあ何でここにいるんだ?ニコル様の屋敷にいるはずだろう?」
父の言葉に黙っていると、ついて来た衛兵が部屋へと入ってきた。
「失礼、私はフィリス家の衛兵です。
ラルク様とリーネ様ですね、こちらを」
衛兵は二人に一枚の紙を差し出し、それを受け取り見始めるとみるみる顔色が青ざめていった。
そして持つ紙がカサカサと音を鳴らした後、クシャッと紙を真ん中に寄せた。
「嘘ですよね?」
「いいえ、事実です」
「そ、そんな……」
父は持つ紙を落とすと私の足元にそれが落ち、それを私は拾い上げ読んだ。
そこには『ニコル=フィリスは妻リースと離婚した。よって今まで送っていた援助金を打ち切る』と書かれていた。
言葉を失くした二人だったが、すぐに私に突っかかってきた。
「お前はなんて馬鹿なんだっ!?フィリス家だぞ!子も作れと言ったはず!?」
怒る父とそれに合わせて怒る母。
「やめてっ、私は、もう……」
「あぁっー!?うるさい!?今すぐ謝りに行け!そして撤回してもらうんだ!?」
「……無理」
「無理じゃない!?しろっ、今すぐに!?」
ごねる私に苛立ち衛兵が持つ槍を奪い去ると私の左腕に刺してきた。
「いたっ」
「痛いじゃないっ!?そんな馬鹿な娘だとは思わなかった!?……早く行かんかっ!?」
何度も刺そうとする父をさすがに黙ってみているわけにもいかず、衛兵は父を止めに入った。
「どこにでもいってしまえ!?お前なんかもう娘じゃない。とっとと出てけ、この恩知らずがっ!?」
怒れる父は持つ槍を更に私に向けてくる。
殺されると思った私は家を飛び出し、その恐怖から逃げる事にした。
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