全てを失った私を救ったのは…

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意識

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勢いよく飛び出したジャックさんをリック兄弟は驚きつつも冷静だった。

「……なんだ、お前か」
「またやられに来たのか?」
「前回はこっちの落ち度だ。今日は違う」

会話内容からジャックさんは二人とやり合った事があるらしく、そして負けたみたいだ。

「で、何か用か?こっちは腹も空いてるからやり合う気など無い。失せろ」
「……悪いが、それなら都合が良い。お前らがいると迷惑だからな、大人しくやられてくれ」
「あぁ!?雑魚がうるせぇな。腹が減ってると言ってるだろうが!」
「まぁ待て、兄貴。やっぱり体で教えないと分からんらしい。……それに鬱陶しいから殺るしかないんじゃないか?」
「……あぁ、そうだな。二度と顔を見たくないからな」

二人はジャックさんと向き合うとナイフを取り出し構え始めた。

(どうしよう…始まっちゃう……)

オロオロする私は能力を使っていた。
激しくやり合う光景、息遣い、交わるナイフ……見る映像にハラハラする私に飛び込んできた。
それは…

「えっ」

思わず声を漏らしてしまった。
出てしまった言葉をバレないように口を塞ぎつつ、様子を伺った。
でも、バレてないようで一安心したが…。

「今のは……」

見た映像は私に向かって来るジャックさんの姿。
しかも必死な表情を浮かべていた。
でもそこで終わりを告げ、同時に私はズキッと激しい頭痛に見舞われた。
どうやら限界近くまで見てしまったらしい…。
左右のこめかみ辺りをズキズキと叩かれているかのような痛み、そして吐き気。

それに襲われた私は地面に突っ伏してしまった。



「おらっ、どうした?以前より動きがトロいな」
「はっ、何を言ってるんだか。そっちこそキレが無いが?」
「んだとっ!?」

ナイフをお互いにぶつけ合い、そして避ける。
一対ニの状況でもジャックさんは引けを取らず決定打を打たれずやり合っている。
しかし、それはジャックさんも同じで繰り出しても当たる事は無かった。

やり合っていると日が沈み始めたのか、辺りが薄暗くなり始めていく。
目的地に着くのを優先していたジャックさんは焦りを感じ始めていた。
何故なら『私』がいるからだ。

「あ?なんだ、急に手を抜いてるじゃねぇか」
「何を言ってるやら、そちらこそ腹が空きすぎてスピードがでないのか?」
「うるせぇ!?」

だが、言葉とは裏腹にジャックさんの意識は私へと向いていた。

「……なぁ、兄貴。こいつ一人じゃないんじゃないか?」
「あ?なんでだ?」
「俺らより後ろを気にしてるみてぇだ」
「なに?」

「いきなり何を言い出すやら、負け惜しみか?意識がこっちに無いのはそっちだろ?」
「あぁ!?」

私へ意識を向けないように詭弁を述べているが一度生じた疑惑は簡単には拭いされず……。

「兄貴、食い止めていてくれ。やっぱ気になる」
「……しょうがねぇ、違ったらただじゃおかねぇからな」
「わーってるよ!」

赤髪の男がジャックさんから離れ、私を探し始めた。
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