全てを失った私を救ったのは…

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盗人

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眠りについたのを確認すると私も少しうたた寝を始めていた。
疲れ、恐怖、心配、様々な感情を持ちつつ……。




ーーーーーー



気づくと朝を迎えていた。
横ではジャックさんが寝息を立て寝ている姿を見て少しホッとした。
でもこのままでは怪我が治るわけでもないので、私は洞穴から出て薬を調達しなくては……と考えた。
しかし、森の中。
どうすれば……悩む私は一つだけ浮かんだ。
生家に行き薬を持って帰れば、と。


木だらけの森の中、この場所に帰って来れないのでは意味がないと思い、私は着ているワンピースの裾を小さく破り点々と草の上に『目印』として置いていった。

彷徨いながらなんとか森を抜けると街並みが見えホッとした。
そしてその足で私は追い出された生家に向かった。

「リースの奴めっ」

あの煉瓦の家近くに来ると父の声がした。

「逃げやがるとは……それより『離婚』などしやがって」
「ホントいい迷惑ですわ」
「金も途絶えるし、働く気にもならん。おい、酒」
「……またですか?最近体の調子が」
「うるさいっ。亭主に向かって意見を言うな!」

父は文句を言う母に手を上げていた。
昔の父では考えられない言動と行動、お金に取り憑かれ全てが変わってしまったのだろうか。
私は暗くなるのを待ち、寝静まった間に生家へ入る事を決めた。
だが、その気持ちとは裏腹に動けないジャックさんを思うと、本当は罵られても今行くべき……とも思ってしまう。

(もう少しだけ、我慢してください)

祈る私は夜を待ち、生家に『盗み』を決行しようとした。




月夜に照らされ辺りは静かになり、街を歩く者は居なくなった。
もちろん生家にいる両親も寝入ったのか、灯りはなく真っ暗だった。

「行こう……」

緊張と不安の中、一つ生唾を飲んだ私は生家に向かいゆっくりと中へと入っていった。
昔と違い、勝手が違う生家に迷いながら足を進めていく。

以前お酒を飲む場面を遭遇した部屋は灯りもなく、今なら入れそうだと思い、音を立てずに入った。
暗い部屋の中、手探りで部屋を物色すると、幾つも引き出しがある棚に手がぶつかった。

(ここにあれば……)

暗闇にようやく目が慣れ、ぼんやりと五段ある棚の上から一つずつ開けていく。
一段、二段、三段……開けるが薬らしいものは何もない。
諦めかけた五段目に瓶がいくつもあるのを確認できた。
ラベルに目を凝らしながら見ると『アルコール』の文字を確認できた。

「……やった」

どうやら一番下は薬置き場だったらしく、他にも包帯やガーゼ、シーツなど持てるだけ持ち、足早に生家を出て行こうとした。
だが、焦る気持ちが足元を伝わり、転ぶと瓶をコロコロと転がしてしまった。

カラカラカラ……と音を立てる物音に気づいた両親が『何事だ!』と声を上げこちらに来るのがわかった。

(マズい)

すぐに便を取り上げ家を飛び出そうとすると後ろから父の激昂する声が聞こえた。

「誰だ!お前は!?」

振り返らず私は一目散に逃げた。
後を追う父は月夜に照らされた私を見て、『お前、リースかっ?!』と叫ぶ。
でもそんな声に私は何も反応せず逃げる事を優先した。

「親不孝の次は盗人か、お前はっ!?」

ズキンッと心が痛んだ……。
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