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有益な者だけ
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「おはよう、リーネ」
「お、おはよう。ユーリ。…早いね」
まさかもういるとは思ってなかった…。
自分でも1時間も早くでは流石に、と思っていたのだが私が来た時にはすでに…。
それは私が聞きたい事がやはり重大なんだと思い知らされ少し不安げな顔を見せるとユーリは
『良かった』と呟く。
それに反応し下を向き掛けた顔をあげると、もう一度私に満面の笑みを見せ、それに私はドキっとしてしまい、胸の前に右手でグーを作りながらユーリを見た。
「良かった、ってどういう事?」
「リーネがこうやって朝早くに来ようと思ってくれて、それに実際にそうしてくれたから信頼出来るなぁって」
「そ、それは…ユーリも」
「ふふ、私と考えが同じだね。…じゃあこっちに来て」
ユーリは降りた馬車から一歩下がり私に馬車の中へ入るように促してくる。
その対応に私は軽く頷き馬車に近づく。
来た時はユーリがもういる事にビックリしたので乗ってきた馬車を気にしてなかったが今初めてじっくりと見た。
まるでお伽話に出てきそうな丸い球体をした馬車。
優しいユーリを象徴するかのようなピンク色。
開かれた扉の奥に広がる向かいあう形に置かれた椅子は昨日、アカデミーから家に送ってもらった時に乗せてもらったライオネス家が用意した馬車と同じ赤色だった。
それを見るとやっぱり高貴な貴族の出なんだと思った。
そんな馬車の入り口で立ち止まっていると
『ほらほら、早く入って』と私の背中を押し、中へと誘う。
私を中へと入れると外で待機していた運転手に扉を閉めてもらい私はユーリと2人きりになった。
馬車の椅子はとても座り心地が良く、腰掛けると反発しお尻を押し戻されるような感覚を覚える。
「じゃあ…」
ユーリが早速話し始めようとするので、私は少し待って。と何故か引き止めてしまった。
時間が止まるはずも無いので皆が来る前に話を聞くべきなのだが、ドキドキと緊張してしまい落ち着かなかった。
そんな私を見て、そっと両手を包み込むように触れてきたユーリ。
『大丈夫だよ』と声を添えながら。
「…ありがとう、ごめんね」
包み込まれた両手をゆっくりと離すとユーリは私が知りたかった『調べられていた』事を話しだした。
それは、ブライスが生まれた時に遡る。
長年ライオネス家では跡取りとなる男の子が出来ず、やきもきしていた時期があったと言う。
そしてようやく生まれたブライスを見た現当主はすぐにでもブライスの『嫁』になる可能性のある子を調べさせたらしい。
同い年のブライス、ユーリ、そして私や今年受けた受験生。
調査対象は貴族である事。
そして…ライオネス家にとって『有益となり得るか』
この2点だと私に教える。
「有益…。でも私の家は貧乏だし、有益なんて無縁だと思うんだけど」
話しを聞いてすぐに私の家柄はそんないい物ではないと否定するが、ユーリは首を横に振り私の言葉を否定してくる。
調査をしたのは生まれてすぐ、その時あなたの家はそんなに貧乏だった?と私に訪ねてくる。
それを聞いて少し顔を馬車の天井をみながら考えた。
(言われてみれば昔は羽振りが良かったかも。でも徐々に…。調査に引っ掛かったのは運が良かっただけでは?)
そう思った。
上を向いて考える私にユーリは『運も必要だよ』とまるで見透かしたように声を掛けてくる。
『うっ』と声を出し反応する私にクスクスとユーリは笑い出す。
「な、なんで分かるの?」
「ふふ、だってリーネは分かりやすいから。
ぜんぶ顔に出るから私はそんなあなたが好きよ」
好き…と言ってくるユーリの顔を直視できず私は両手で顔を隠した。
そんな行動をとる私にユーリは更に『ふふ』と笑いを続ける。
しかし…
「…周りもそろそろ来そうね。この話は内緒ね、リーネ」
扉を開け先に降りるユーリを私は隠した両手の隙間から見た。
「お、おはよう。ユーリ。…早いね」
まさかもういるとは思ってなかった…。
自分でも1時間も早くでは流石に、と思っていたのだが私が来た時にはすでに…。
それは私が聞きたい事がやはり重大なんだと思い知らされ少し不安げな顔を見せるとユーリは
『良かった』と呟く。
それに反応し下を向き掛けた顔をあげると、もう一度私に満面の笑みを見せ、それに私はドキっとしてしまい、胸の前に右手でグーを作りながらユーリを見た。
「良かった、ってどういう事?」
「リーネがこうやって朝早くに来ようと思ってくれて、それに実際にそうしてくれたから信頼出来るなぁって」
「そ、それは…ユーリも」
「ふふ、私と考えが同じだね。…じゃあこっちに来て」
ユーリは降りた馬車から一歩下がり私に馬車の中へ入るように促してくる。
その対応に私は軽く頷き馬車に近づく。
来た時はユーリがもういる事にビックリしたので乗ってきた馬車を気にしてなかったが今初めてじっくりと見た。
まるでお伽話に出てきそうな丸い球体をした馬車。
優しいユーリを象徴するかのようなピンク色。
開かれた扉の奥に広がる向かいあう形に置かれた椅子は昨日、アカデミーから家に送ってもらった時に乗せてもらったライオネス家が用意した馬車と同じ赤色だった。
それを見るとやっぱり高貴な貴族の出なんだと思った。
そんな馬車の入り口で立ち止まっていると
『ほらほら、早く入って』と私の背中を押し、中へと誘う。
私を中へと入れると外で待機していた運転手に扉を閉めてもらい私はユーリと2人きりになった。
馬車の椅子はとても座り心地が良く、腰掛けると反発しお尻を押し戻されるような感覚を覚える。
「じゃあ…」
ユーリが早速話し始めようとするので、私は少し待って。と何故か引き止めてしまった。
時間が止まるはずも無いので皆が来る前に話を聞くべきなのだが、ドキドキと緊張してしまい落ち着かなかった。
そんな私を見て、そっと両手を包み込むように触れてきたユーリ。
『大丈夫だよ』と声を添えながら。
「…ありがとう、ごめんね」
包み込まれた両手をゆっくりと離すとユーリは私が知りたかった『調べられていた』事を話しだした。
それは、ブライスが生まれた時に遡る。
長年ライオネス家では跡取りとなる男の子が出来ず、やきもきしていた時期があったと言う。
そしてようやく生まれたブライスを見た現当主はすぐにでもブライスの『嫁』になる可能性のある子を調べさせたらしい。
同い年のブライス、ユーリ、そして私や今年受けた受験生。
調査対象は貴族である事。
そして…ライオネス家にとって『有益となり得るか』
この2点だと私に教える。
「有益…。でも私の家は貧乏だし、有益なんて無縁だと思うんだけど」
話しを聞いてすぐに私の家柄はそんないい物ではないと否定するが、ユーリは首を横に振り私の言葉を否定してくる。
調査をしたのは生まれてすぐ、その時あなたの家はそんなに貧乏だった?と私に訪ねてくる。
それを聞いて少し顔を馬車の天井をみながら考えた。
(言われてみれば昔は羽振りが良かったかも。でも徐々に…。調査に引っ掛かったのは運が良かっただけでは?)
そう思った。
上を向いて考える私にユーリは『運も必要だよ』とまるで見透かしたように声を掛けてくる。
『うっ』と声を出し反応する私にクスクスとユーリは笑い出す。
「な、なんで分かるの?」
「ふふ、だってリーネは分かりやすいから。
ぜんぶ顔に出るから私はそんなあなたが好きよ」
好き…と言ってくるユーリの顔を直視できず私は両手で顔を隠した。
そんな行動をとる私にユーリは更に『ふふ』と笑いを続ける。
しかし…
「…周りもそろそろ来そうね。この話は内緒ね、リーネ」
扉を開け先に降りるユーリを私は隠した両手の隙間から見た。
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