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始まりの朝

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準備もほぼ終わり、これで明日への備えは大丈夫と思い、お風呂に入り、そしてベットへと潜り込んだ。

(何時に行けばいいかな…?)

ユーリは8時より前に、と言っていたが具体的にこの時間とは決めておらず横になりながら考えた。

あまり早いと気を遣わせるかも、でも時間よりも少しだけ早いだけでは他の人が来てしまうのでは…?と
悶々とした気持ちのまま時間だけが過ぎていった。

そんな時、ボーン、ボーン…っと1階から聞こえる置き時計の音。
時刻を知らせる為に鳴る時計の音は9回。
つまり今はもう夜の9時を指していた。

「もう…!?」

ユーリとの約束を考えているだけでかなりの時間が過ぎていたみたいだった。
明日に備えるつもりがかえって自分を苦しめる事になっていた。

「…よし、7時に行こう」

私はゴチャゴチャ考える事を止め、7時にアカデミーに行こう。
そしてユーリをそこで待つ、と決めたら部屋の明かりを消し、目を瞑り休むことにした。



******



翌朝、日が昇る前に私は起きた。
そして部屋のカーテンを開き、窓を開ける。
まだ季節は春先になったばかりで、朝早く日が出る前ではかなり寒さが残り、身震いがした。

「寒い…」

ブルっと震えながら1階に降りると、もう両親が起き、私の為にご飯を用意してくれていた。

「起きたか、リーネ」

これからアカデミーで暮らすためしばらく一緒にいることが出来ない私と時間を共にしたいのだろうか、いつもでは起きるはずもない時間に2人の姿を見た。

「リーネ、これ…」

母は私に一つのリボンを渡してきた。
白く艶々したそのリボンは昔、母が髪を纏めた際に使った物だという。
そんな大事な物を私に渡してくれた。
そして私に近づき膝をついたらゆっくりと抱きしめてくれた。
その温もりはとても居心地が良く、これからアカデミーで起こるであろう出来事や悩みをその時ばかりは忘れさせてくれるほどだった。

「しっかりね、リーネ」

「うん…」

私は少し涙ぐんだ。
そして私もゆっくりと母の背中へと手を回し抱き返した。

その後はしばらく無いであろう家族の団欒を過ごし、部屋に置かれた置き時計の時刻をみると私は
両親に挨拶をし家を出て行った。


両手にぶら下げたバックを持ちアカデミーへと向かう。
普段歩き慣れた道なのにキョロキョロと周りを気にしながら歩いていくと、ようやく日が昇りつつあった。
薄暗い街が段々と明るくなってきて今から通うアカデミーが私の目に映る。

(アカデミー…か)

これから始まる学び…いや、学びでは無い。
ブライスが直々に言った『嫁になる者』を探す場だ。
正直私なんか選ばれず他の誰か…それこそユーリとかでは無いかと考える。
そんな風に思いながら歩いて行き、アカデミーの入り口付近に来ると、一台の馬車が止まっていた…。

「まさか…」

すぐに私はその馬車の元へと掛けて行き、近づいたらゆっくりと扉が開いた。
そして、中からはユーリが現れ、私を見ると満面の笑みで出迎えた。
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