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引き剥がし

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こちらに向かってくる馬車を間一髪の所で避け、難を逃れた。
しかし、私が避けた馬車は街行く人の方へフラフラと進みながら通りを過ぎていく…。
悪い事は続くと言うが何事もなくて良かったと胸を撫で下ろし、再びカフェへと急いだ。

通りを歩き、カフェが見えてくるとそこにはユーリの姿、そしてその近くにはラークさんの姿も確認できた。

(もう聞いたのだろうか…?)

こちらに気付く事も無い様子だったので、私はゆっくりと進んでいく。

「…リーネ」

店の外を掃除しているユーリが私に気付き、こちらにやってきた。

「あ、あのさ…」

私はすぐにでも聞いたのかを問おうと思ったが、なかなか口に出てなかった。

「疲れていたんでしょ?だから起こそうとはしなかった。
でも酷いよね。本を当ててくるなんて…」

「気付いていたの?」

「あんなにハッキリと背中に当たれば嫌でも気付く」

「…ごめん」

「でもあなたの聞きたいのはそこじゃないでしょ?」

そういうと店の入り口付近に目を移すと掃除しているラークさんが手を止めてこちらをずっと見ているのに気付いた。
掃除道具を持ちながらすこし顎を上げ威圧しているようにも見えた。

「…まだ聞いてない。
それよりも気になったのは…」

カタン…


ユーリが話すのを遮るように店の方から音がしてきた。
そこにはラークさんが箒をわざと落とし、注意を自分の方へと向けさせるような感じだった。
そして、音に気づきそちらを向いた私達の方へとゆっくり近づいてくる。
落とした箒はそのままにして…。

「リーネさん、遅刻ですよ?
もうユーリさんと掃除は終わらせましたが…」

「す、すみません」

「遅刻…?そもそも何時に来るかなんて決めてなかったですよね。
それを言ったらフリックさんはどうなんですか?」

「…相変わらずうるさいですね。あなたは。
いまはリーネさんと話しているでしょう。見てわかりませんか?」

「…あなた、リーネの事」

「えぇ、好きですよ。それがなにか?」

悪びれる事も照れる事もなく、淡々と私の事を『好き』だと宣言してくる。
それも、街には人が多く行き交っている中で、だ。

「…あなたにリーネは靡ませんよ」

「そんな事わからないですよね?
これからここで接していけば変わる事だって十分あり得る。
それとも僕に靡かない確固たる理由でも?」

「それは…」

自信満々にユーリの事を説き伏せていく様子はやはり前から感じていたこと…ブライスに似ている…。

「さぁ、リーネさん、中の準備を手伝ってください」

ユーリの事はほっといて中へと誘うラークさんに困惑してしまい、咄嗟にユーリに助けを求める視線を送ってしまっていた。

でも…

さぁ、と私の背中に手を添えて強引にユーリと距離を取らせ店へとグイグイと押していく…。



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