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第5章 カグヤさんはお怒りです
第51話 カグヤさん、甘えん坊?
しおりを挟む「あの…、カグヤさんや…?」
ダンジョンを無事に脱出。自由都市エスペラントに戻る道を歩きながら俺は新たに仲間、そして家族になった闇の精霊の少女カグヤに声をかけた。
「なあに?お兄ちゃん…ふふ」
そのカグヤは嬉しそうに応じた。
「その…、どうして俺の腕をずっと…?」
カグヤは浮遊し俺のすぐ隣にいて恋人がそうするように俺の腕に自らの腕に絡めている。ダンジョンを出ようと移動を開始してからずっと腕を絡めたままだ。
いや…、違うな。絡めると言うよりまるで体全体で抱きつくようにしている。その姿はまるで公園や小学校の校庭にある遊具のひとつ、登り棒に掴まる子供のようである。
俺はいわゆる日本人男性の中でも平均的な体格である。一方でカグヤは見た目は小学生くらいの少女だ、俺とは身長差があるので普通ならこうして抱きつけるものではない。浮遊できるからこそできるのだ。
そのせいかカグヤが抱きついているこの俺の腕には重さというものを感じられない。けれどもカグヤが抱きついている感触だけはしっかり伝わってくる…それがなんとも不思議だった。
やがてカグヤが口を開いた。
「だめ?」
少し沈んだようなカグヤの声、腕を取ったまま不安そうな目でこちらを見ている。
「いや…、その…」
その姿に俺はどうにも歯切れが悪くなる。
くいくいっ。
カグヤが抱きついている腕とは逆の腕をミニャが引いた。
「ねぇねぇカヨダ?」
「ん?」
「きっとカグヤは寂しかったんじゃニャいかな?ずぅっとあのダンジョンに一人だったんニャから…」
「あ…」
そうか、カグヤは星幽の黒剣を守ってずっとあの真っ暗な中に一人で…。
「分かった、カグヤくっついてて良いよ」
「ほんとう?」
「ああ、だけど移動中はやっぱり気になるからちょっと遠慮してくれ。その代わり…」
そう言って俺は創造のスキルでレジャーシートを創造して街道から少し離れた平たい地面に敷いた。
「今から少し休憩にする。その間にくっついていてくれ。休んでいる間に俺はアイテムを創造するから…」
「アイテム?何か作りたい物があるのニャ?」
レジャーシートに座りながらミニャが尋ねてくる。ロゼは車椅子のままで良いようだ。新たにレジャーシートを作らずドームハウスをストレージから取り出しても良かったのだが、それだと道端から近いしあまりにも目立つだろうしな。
「俺の装備だな。今のままだと俺に戦う力は無いからなあ…、だから身を守れそうなモンを作るかと思ったんだよ。それにこの服装は目立っちまってるからなあ」
俺も胡座をかいて座った。すかさずカグヤが俺の隣に座って…なかった。
「………ふふ」
これ、何?
カグヤが胡座をかいて座る俺の膝の上に覆い被さるようにして何やらご満悦だ。
「これでお兄ちゃんを独り占めだね、…ふふ」
「そ、そうだね」
小さな彼女に漂うなんとも言えない存在感を感じながら戸惑いがちに俺は応じる。
「ま、まあ良いや。剣は手に入った訳だから…服装を…、それも身を守る効果を付けて…。…ああ、あれが良いか!アイテム自体が自動的に効果を発揮してくれるような。名状しがたい名称の塔に出てくる宝物みたいなヤツ」
そう言って俺はアイテムを創造り始めた。
「見た目は普通の服と変わらないようにして…」
懐かしのレトロゲームから着想を得てアイテムを生産していく。
「ねえ…、お兄ちゃん?」
不意にカグヤから声がかかった。
「ん、どうした?」
丁度、羽飾りを付けたブーツを創造り終わったところだったのでそれに応じると膝の上でカグヤが俺を見上げるようにしていた。
「…ふふ」
目が合ったカグヤが笑みを浮かべた。
「なんでもない」
そう言うと彼女は目を閉じ再び俺の膝の上に顔を乗せた。
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