理解されないモノたちへ~オカルト研究会④

釜借 イサキ

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第5章 終幕

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 時は、少し前。二つの異物が、廃墟に紛れ込んできたときのこと。理解者を自分から剥ぎ取ろうとする二つの異物に抗えなかったは、自分の棲み家から、必死に逃れる。血塗れの現実か、はたまた理解者から裏切られた事実か、何から逃げているのかは、自分でも分からない。
「……なんで?」
初めて、絶望を分かり合えた相手だった。やっと、独りぼっちに耐えなくてよくなった。けれど、滴る血をみた瞬間、純粋に、失う恐怖を覚えた。
「やくそくした! でも、おにいちゃんがしぬのはこわかった……」
嘆きながら、ひたすら走る。感情の整理がつかない。約束を破られてしまったことに対する怒りか、理解者を喪うかも知れない恐怖か、既に歪な形のそれに、判別する術は、最早、ない。
「どうしてどうしてドウシテドウシテ」
混乱する思考は、自我を瓦解させていく。矛盾した二つの感情を受け止めるだけの器が、そこには在りはしないのだ。
「あいつら、なかなかやるじゃない。」
無い目が見据える先には、不気味に微笑む人形が一つ。ガラス玉の目が二つ、こちらを見ている。
「……ひっ……」
尋常ではない空気を纏う人形の横を、素通りしようとする。しかし、
「まあ、ゆっくりしていきなさいよ。」
それを、不気味な人形は赦さない。
「急ぐ旅でも、ないでしょう?」
ぴくりと、ソレの体が跳ねる。禍々しい、歪な空気。何故か、振り向いてはいけない気がした。
「ねえ、もう自分がやったこと、分かってるんでしょう?」
人形は、こちらに向かって歩く。ソレは、思わず後退る。怪しく嗤う表情のない人形の髪が、張り付きそうな風に靡く。
「しらないシラナイシラナイ」
いやいやをするように、頭らしい部分を振るが、ある一点で立ち止まる。否、行き止まる。
「ねえ、をきちんと見れば?」
動く筈のない指が、ソレの背後を指差す。何故か抗うことが出来ない。ソレは、恐る恐る、後ろを振り向く。
「……ああ……」
あらゆる関節が出鱈目な方向に折れ曲がった歪な形。空洞の目が、こちらをぎろりと睨み付けてくる。吉田まじめだったモノが、そこにいた。
「……」
声にならない悲鳴。突き付けたのは、歪んだ願望の先にあるもの。
「……良かったじゃない。あんた、『仲間』だけは沢山作れたじゃない。」
嘲るような人形の声に、ソレは願望さえ粉々に打ち砕かれて、静かに絶叫する。
 いつの間にかモヒカン姿に戻っていたよっしんは、メリーさんに問いかける。
「あの、あいつは……?」
やはり、声は震えている。
「強制的に未練を晴らしてやったのよ。」
悪戯っぽく微笑むメリーさん。よっしんはその先の問いを閉ざす。きっと、碌な末路は辿っていないのだろう。それはそれで仕方がないのだと、自分に言い聞かせる。無い筈の体が、軽くなるのを感じた。
「あんたがいてくれて助かったわ。ありがと。」
「……」
照れたようにこちらを見て、賛辞を述べるメリーさんに、よっしんは複雑な表情を返す。
「……あいつも、よくやった。」
少しだけ、その言葉が濁る。
「……アニキ……」
「……あいつらが何とかするでしょ。」
不安げなよっしんに、メリーさんの返事は素っ気ない。
「……戻るんでしょ?」
歩き続ける、動く筈のない人形は優しく問いかける。
「……はい!」
不安げに歪んだ笑顔で、よっしんは普段通りの明るさを返す。
「あなたも、恩を返せて良かったわね。」
そんな間抜けな怪異を従えながら、メリーさんは静かに天を仰ぐ。
「にゃあ!」
かつて、成し得ない再開を果たした黒猫は、その恩を返す。満足げに喉を鳴らすと、笑いながら体を丸める。
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