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Episode1:Welcome to the new world
1-11 お国訛りが出ちゃう。だって田舎者だもん
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「その桃ちゃんと色々話しているうちに、どうも君や草田さんと高校の同級生だったってことが分かって。『えっ、莉子の元カレ!? 累くんって聞いたことある~!』って彼女も驚いてたよ。それで意気投合して、その日は一夜を共にして……」
「何、つまみ食い!!!!???」
「何もしてないよぉ。ただお酒を飲みながら一晩中語り合っただけ」
誤解を招くような言い方をしないでいただきたい。いや、本当かどうか怪しいもんだ。桃もあんなだし。
「そこで君から相談を受けたっていうことも全部聞いてね。どうも今カレとの関係に刺激が足りないとか何とか言うから、スパイスが必要なんじゃないかとアドバイスしたって……」
あのビッチ……………!!!!!! 何をペラペラ喋ってくれとんじゃぁぁぁぁ!!!!!!!
「というわけでね、それなら僕、役に立てるんじゃないかなぁと思ったんだ。適任じゃない? 君と、草田さんと、僕とでさんぴ……」
「わ゛ーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」
慌てて累くんの口を手で塞ぐ。公の場所で何てことを口走ろうとしているのか。
「なにっ、なっ、なんてことば言うんだべかこの童ゃぁぁぁ!!! そっ……そつくたらことできるわけないべさァァァ!!!」
「それ方言? なんて言ったかよく分からないけど、でも、君だってこのままじゃいけないって感じてたんじゃないの?」
「そっ……それはそう……なんだけど。でも、いくら何でもそんなこと……」
動揺するあたしの様子を楽しむように、累くんはクスクス笑った。そしてベンチに座ったままあたしの耳元に顔を寄せ――
「冗談だよ♡」
艶のある甘い声で囁いた。
ゾクゾクゾクッ………! と全身に震えが走る。耳に彼の息がかかったせいだ。同時に顔が一気に熱くなった。さらに心臓がバクバク。
数年前、恋人同士だった頃は会うたびにこんな風に耳元で甘い言葉を囁かれた。その頃の記憶が蘇ってしまった。
反射的に身をのけぞらせ、耳元を自分の手で押さえながら累くんの方を見ると、彼は相変わらずニコッと笑った。
「そっ……そういう冗談やめてよ! もぉっ、急に近寄るとかもやめて!! びっ、ビックリすんじゃん!!」
「ごめんごめん。でも、そんな動揺しなくてもいいじゃない」
ニコニコそんなことを言いながら、彼はどんどんじりじりと距離を詰めてくる。
「ちょっ……近い近い! 来ないでっ!!」
逃げようとして脇に置いていたトートバッグを持って立ち上がろうとすると、その持ち手を掴みそこね、中の荷物がバラバラと飛び出してしまった。
「あぁもぅっ!!」
「あらら、大変」
散らばった財布やらポーチやらを慌てて拾い集めようとすると、累くんも手伝ってくれた。でも、その荷物のひとつを彼が手に取った瞬間、あたしはハッと息を呑んだ。
しまった――
「………莉子ちゃん、こういうのに興味あるの?」
時既に遅し。彼が拾ったのは、この公園に来る前に立ち寄った書店で買った1冊のマンガ本――男の子二人が甘い眼差しで見つめ合う少女マンガタッチのイラストが表紙に描かれる、いわゆるBLもの。
――オワタ。
青ざめて固まるあたしを見て、累くんはまたさっきまでと同じようにニコッと笑った。
「『地味でネクラな俺が激甘王子系後輩に溺愛されてます』――って、オフィスものかぁ。なんかこれ、僕と草田さんみたいじゃない? へぇ~……結構過激だねぇ♡ 莉子ちゃんにこんな趣味があるなんて知らなかったなぁ」
本のページをパラパラめくり、その中身とあたしの顔を交互に見比べる。あたしはダラダラと冷たい汗を流した。
「あのっ、これは……その、えっと、人に頼まれて……? あたっ、あたしが読むわけじゃなくて……」
「へ~ぇ、そうなんだぁ」
苦しい。苦しすぎる。累くんも絶対信じてない。
それでもなお笑顔を崩さず、ページを一通りめくり終えると、彼はその本を「はい♡」とあたしに差し出した。奪うように受け取ってバッグにズボッと押し込み、そのままスライディング土下座のポーズを取った。
「お願いしますッッ!! さいぞーには言わないでぇぇ!!! この通りっ!!!」
「え、どうして?」
累くんはケロッとした顔でそう聞き返してきた。
「なしてって……こったらモン持ってるなんて知られたら、ドン引きされるべさ!? そもそもほんの出来心なの! 元々好きだったわけでないの! 腐女子だとかそういうわけでなくて、今日もこったらモン買うつもりでなくて、本屋行ったっけたまたま目についちゃっただけで……ただの興味本位!!?」
アタフタするとどうしても地元訛りが出てしまうけど、これは本当だ。たまたま偶然通りかかった青年マンガコーナーで、たまたまこれが平積みされていたのが目に飛び込んでしまっただけなのだ。イラストの男の子たちがどことなく才造と累くんに似てる気がするのも、ただの偶然に他ならない。
「そっか。じゃ、目覚めかけってとこだね。いいじゃない別に。趣味嗜好は人それぞれだし、隠すことないよ。ほら、立って」
彼はあたしの手を取って立たせ、ベンチに座るよう促した。
「るっ、累くんはいいかもしれないけど、さいぞーはどう思うか分かんないでしょぉぉぉぉぉ??? 幻滅されるぅぅぅ~~~」
半泣きで訴えると、累くんはあたしの背中をさすりながらうーんと首を傾げた。
「草田さんの君への気持ちって、そのくらいで冷める程度のものなのかな」
「えっ?」
「僕にはそう見えなかったけどなぁ。莉子ちゃん、草田さんのこと信じられない?」
……そういう問題なのか? あたしは思わずポカーンとしてしまった。
すると、累くんは少し悪い顔でクスッと笑った。
「じゃあ……試してみようか?」
「試すって……何を?」
「草田さんのキャパシティだよ。そうだなぁ……桃ちゃんにも協力をお願いしようか」
「桃に!? 何を!!?」
「まぁ、任せておいて」
一体、何をどう任せろというのか。そう考えてる間に、彼はもうスマホを取り出して電話をかけ始めた。
「あぁ桃ちゃん? うん、僕、累だよ。この間はどうも。あのね、ちょっと面白い話があるんだけど、桃ちゃんにも手伝ってもらえないかなぁと思って。そう、莉子ちゃんと草田さんのことで」
この人今、面白いって言いました!!?
なんかロクなことにならなさそうな予感しかないんですが――?
「何、つまみ食い!!!!???」
「何もしてないよぉ。ただお酒を飲みながら一晩中語り合っただけ」
誤解を招くような言い方をしないでいただきたい。いや、本当かどうか怪しいもんだ。桃もあんなだし。
「そこで君から相談を受けたっていうことも全部聞いてね。どうも今カレとの関係に刺激が足りないとか何とか言うから、スパイスが必要なんじゃないかとアドバイスしたって……」
あのビッチ……………!!!!!! 何をペラペラ喋ってくれとんじゃぁぁぁぁ!!!!!!!
「というわけでね、それなら僕、役に立てるんじゃないかなぁと思ったんだ。適任じゃない? 君と、草田さんと、僕とでさんぴ……」
「わ゛ーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」
慌てて累くんの口を手で塞ぐ。公の場所で何てことを口走ろうとしているのか。
「なにっ、なっ、なんてことば言うんだべかこの童ゃぁぁぁ!!! そっ……そつくたらことできるわけないべさァァァ!!!」
「それ方言? なんて言ったかよく分からないけど、でも、君だってこのままじゃいけないって感じてたんじゃないの?」
「そっ……それはそう……なんだけど。でも、いくら何でもそんなこと……」
動揺するあたしの様子を楽しむように、累くんはクスクス笑った。そしてベンチに座ったままあたしの耳元に顔を寄せ――
「冗談だよ♡」
艶のある甘い声で囁いた。
ゾクゾクゾクッ………! と全身に震えが走る。耳に彼の息がかかったせいだ。同時に顔が一気に熱くなった。さらに心臓がバクバク。
数年前、恋人同士だった頃は会うたびにこんな風に耳元で甘い言葉を囁かれた。その頃の記憶が蘇ってしまった。
反射的に身をのけぞらせ、耳元を自分の手で押さえながら累くんの方を見ると、彼は相変わらずニコッと笑った。
「そっ……そういう冗談やめてよ! もぉっ、急に近寄るとかもやめて!! びっ、ビックリすんじゃん!!」
「ごめんごめん。でも、そんな動揺しなくてもいいじゃない」
ニコニコそんなことを言いながら、彼はどんどんじりじりと距離を詰めてくる。
「ちょっ……近い近い! 来ないでっ!!」
逃げようとして脇に置いていたトートバッグを持って立ち上がろうとすると、その持ち手を掴みそこね、中の荷物がバラバラと飛び出してしまった。
「あぁもぅっ!!」
「あらら、大変」
散らばった財布やらポーチやらを慌てて拾い集めようとすると、累くんも手伝ってくれた。でも、その荷物のひとつを彼が手に取った瞬間、あたしはハッと息を呑んだ。
しまった――
「………莉子ちゃん、こういうのに興味あるの?」
時既に遅し。彼が拾ったのは、この公園に来る前に立ち寄った書店で買った1冊のマンガ本――男の子二人が甘い眼差しで見つめ合う少女マンガタッチのイラストが表紙に描かれる、いわゆるBLもの。
――オワタ。
青ざめて固まるあたしを見て、累くんはまたさっきまでと同じようにニコッと笑った。
「『地味でネクラな俺が激甘王子系後輩に溺愛されてます』――って、オフィスものかぁ。なんかこれ、僕と草田さんみたいじゃない? へぇ~……結構過激だねぇ♡ 莉子ちゃんにこんな趣味があるなんて知らなかったなぁ」
本のページをパラパラめくり、その中身とあたしの顔を交互に見比べる。あたしはダラダラと冷たい汗を流した。
「あのっ、これは……その、えっと、人に頼まれて……? あたっ、あたしが読むわけじゃなくて……」
「へ~ぇ、そうなんだぁ」
苦しい。苦しすぎる。累くんも絶対信じてない。
それでもなお笑顔を崩さず、ページを一通りめくり終えると、彼はその本を「はい♡」とあたしに差し出した。奪うように受け取ってバッグにズボッと押し込み、そのままスライディング土下座のポーズを取った。
「お願いしますッッ!! さいぞーには言わないでぇぇ!!! この通りっ!!!」
「え、どうして?」
累くんはケロッとした顔でそう聞き返してきた。
「なしてって……こったらモン持ってるなんて知られたら、ドン引きされるべさ!? そもそもほんの出来心なの! 元々好きだったわけでないの! 腐女子だとかそういうわけでなくて、今日もこったらモン買うつもりでなくて、本屋行ったっけたまたま目についちゃっただけで……ただの興味本位!!?」
アタフタするとどうしても地元訛りが出てしまうけど、これは本当だ。たまたま偶然通りかかった青年マンガコーナーで、たまたまこれが平積みされていたのが目に飛び込んでしまっただけなのだ。イラストの男の子たちがどことなく才造と累くんに似てる気がするのも、ただの偶然に他ならない。
「そっか。じゃ、目覚めかけってとこだね。いいじゃない別に。趣味嗜好は人それぞれだし、隠すことないよ。ほら、立って」
彼はあたしの手を取って立たせ、ベンチに座るよう促した。
「るっ、累くんはいいかもしれないけど、さいぞーはどう思うか分かんないでしょぉぉぉぉぉ??? 幻滅されるぅぅぅ~~~」
半泣きで訴えると、累くんはあたしの背中をさすりながらうーんと首を傾げた。
「草田さんの君への気持ちって、そのくらいで冷める程度のものなのかな」
「えっ?」
「僕にはそう見えなかったけどなぁ。莉子ちゃん、草田さんのこと信じられない?」
……そういう問題なのか? あたしは思わずポカーンとしてしまった。
すると、累くんは少し悪い顔でクスッと笑った。
「じゃあ……試してみようか?」
「試すって……何を?」
「草田さんのキャパシティだよ。そうだなぁ……桃ちゃんにも協力をお願いしようか」
「桃に!? 何を!!?」
「まぁ、任せておいて」
一体、何をどう任せろというのか。そう考えてる間に、彼はもうスマホを取り出して電話をかけ始めた。
「あぁ桃ちゃん? うん、僕、累だよ。この間はどうも。あのね、ちょっと面白い話があるんだけど、桃ちゃんにも手伝ってもらえないかなぁと思って。そう、莉子ちゃんと草田さんのことで」
この人今、面白いって言いました!!?
なんかロクなことにならなさそうな予感しかないんですが――?
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