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-光を呼ぶ剣-
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--- そうだねぇ、何から話したらいいかねぇ…。
先ずは、南阿蘇村が異常気象だと言われてることなんだけどもね。
もちろん、異常気象なんかじゃないさ。
南阿蘇村をこんな状態にした奴がいる。
そう!タケルの頭の中に不意に浮かんで不敵な笑みをした女こそが、南阿蘇村を変えてしまった奴さ。
タケルは気のせいにしようとしているけども、子供の頃に一度見てるんだ。
それも、宮崎県の高千穂でね。
まだタケルが小学校に上がる前、もう17、8年前のことだから、無理もない覚えてないのさ。
そんな不気味な女が、なぜ突然タケルの頭をよぎったのか…。
それは、その女がタケルの前に現れる予兆だったんだよ…。
え?私…!?
私が誰かって?
ちょっと物知りな田舎のお婆々だよ。
まぁまぁ、私のことはいいから…。
その不気味な女のことなんだけどもね。
私らが住んでいる、この日本列島。
この日本列島が創られた太古の昔まで、さかのぼる話なんだよ…。
日本列島が誕生した頃、太陽の神アマテラスと、その弟スサノオが天上界で暮らしていたんだけれども、この二人はあまり仲の良い姉弟ではなくてね…。
日頃から田畑を荒らして回る弟スサノオの乱暴に、アマテラはいつも頭を悩ましていたんだ。
ある日、あまりにも度を越したスサノオの乱暴に激怒したアマテラスは天岩戸(洞窟)に身を隠してしまうんだ。
太陽の神アマテラスが隠れてしまったから、天上界も地上界も暗い闇に包まれた暗黒の世界になってしまってねぇ…。
暗闇が続くと、悪霊や化け物が徘徊しはじめてね、あらゆる所で災いや病が起こるんだよ…。
疫病も蔓延するから、出歩く者など誰ひとりいやしないさ。
でも、そんな毒々しい闇の中でも、含み笑いをする一体の女の姿があった…。
闇の女王ヤトヨミ。
タケルの頭をよぎった女、ヤトヨミさ。---
太陽の神アマテラスが身を隠した天岩戸の前にはかがり火が焚かれて、八百万の神々の顔と、アマテラスを誘い出す儀式が整った広場をゆらゆらと照らしていた。
岩戸の脇には人の背丈程の榊が立ててあり、その榊に飾り付けられた勾玉や鏡がキラキラとかがり火をはじている。
長い尾羽を垂れた長鳴鳥(ニワトリ)が止まり木を掴み、何かが始まるのを予感してかそわそわと首を動かして辺りの様子をうかがっていた。
--- 八百万の神々たちは、アマテラスが天岩戸から出てくるようにと、切なる願いを込めて祝詞をあげて儀式を執り行ったんだ。
しばらくはおごそかな時間が流れて、始めは神々も神妙な面持ちでいたんだけども、その儀式が終盤ともなると、こともあろうに八百万の神々たちは、それぞれで持ち寄った酒や肴で酒盛りを始めてしまったんだよ…。
実は、この宴会こそが神々の狙いだったんだ…。
酒を酌み交わしてお囃子を奏でて、飲めや歌えの大騒ぎさ。
宴も盛り上がって神々も酔いがまわる頃になると、アメノウズメノ命という女の神が、鈴の付いた笹の葉を持って踊って更に場を盛り上げるんだ。
衣の合わせがはだけて乳房があらわになったり、袴のヒモがほどけてしまっても、かまわずに淫らな腰つきで踊り続けるアメノウズメに、神々たちは手拍子を打っての大喜びさ。
特に、男神はねぇ…。
この大騒ぎの宴会を、天岩戸に隠れていたアマテラスが気にならないはずがない。
「何事だ!」と思って、アマテラスはそっと岩戸の扉を開けて外の様子をうかがった…。
その時!天岩戸の脇に潜んでいた力の神タジカラオが、岩戸を塞いでいた岩の扉をこじ開けて、太陽の神アマテラスの手をとって外へ連れ出してしまうんだよ。---
天岩戸の入り口から眩しい光が溢れて出て、白い衣に金色の光を帯びた太陽の神アマテラスが、背中まである黒髪を揺らせながら再び姿を現した。
色白で切れ長の目、勾玉を首にかけて、額に太陽を型どった飾りを乗せた姿は、まさに八百万の神々たちが心の底から待ち望んでいた太陽の神アマテラスだった。
「アマテラスさま…」
「アマテラスさま」
八百万の神々はアマテラスの名を口にして、アマテラスの姿に目を細め笑みをうかべた。
そして、安堵のため息をつく。
抱き合って涙を流す女神もいた。
アマテラスは、八百万の神々の表情で神々たちの気持ちを読み取ると苦笑いをして、左足側の衣の下から剣を抜き取って目の高さまで持ち上げるた。
磨かれた銀色の諸刃が、凛としたアマテラスの顔を映している。
アマテラスは、細やかな飾り模様が刻まれている柄を白い指で力強く握りしめると、まだ完全には明けきれてはいない目の前の暗闇を一直線に切り裂いた。
ピキっ!と、かん高い音と同時に闇が裂けると、闇のすき間から金色の光が瞬く間に暗黒の世界に拡がり、やがて天上界と地上界の隅々まで降り注いでいった。
「オオーっ!!」
日向(ひむか)の国の山の峰々が揺れ動く程の神々たちの歓声が、光が満ちた世界に鳴り響いていく。
夜が明けた。
長鳴声がけたたましく鳴いて夜明けを告げると、枯れた木々が青葉をつけ、腐った草花からは新しい芽が吹いて、大地にはまた命が宿った。
「ぐぇーっっ!」
ついさっきまで、我が物顔で闇の中をうろついていた化け物は、太陽の日差しを浴びると体の奥から絞り出すような悲鳴をあげて、ハラハラと崩れ落ちて土と化してしまった。
浮遊していた悪霊も粉々に砕け散り、その気配さえも感じられなくなってしまった。
先ずは、南阿蘇村が異常気象だと言われてることなんだけどもね。
もちろん、異常気象なんかじゃないさ。
南阿蘇村をこんな状態にした奴がいる。
そう!タケルの頭の中に不意に浮かんで不敵な笑みをした女こそが、南阿蘇村を変えてしまった奴さ。
タケルは気のせいにしようとしているけども、子供の頃に一度見てるんだ。
それも、宮崎県の高千穂でね。
まだタケルが小学校に上がる前、もう17、8年前のことだから、無理もない覚えてないのさ。
そんな不気味な女が、なぜ突然タケルの頭をよぎったのか…。
それは、その女がタケルの前に現れる予兆だったんだよ…。
え?私…!?
私が誰かって?
ちょっと物知りな田舎のお婆々だよ。
まぁまぁ、私のことはいいから…。
その不気味な女のことなんだけどもね。
私らが住んでいる、この日本列島。
この日本列島が創られた太古の昔まで、さかのぼる話なんだよ…。
日本列島が誕生した頃、太陽の神アマテラスと、その弟スサノオが天上界で暮らしていたんだけれども、この二人はあまり仲の良い姉弟ではなくてね…。
日頃から田畑を荒らして回る弟スサノオの乱暴に、アマテラはいつも頭を悩ましていたんだ。
ある日、あまりにも度を越したスサノオの乱暴に激怒したアマテラスは天岩戸(洞窟)に身を隠してしまうんだ。
太陽の神アマテラスが隠れてしまったから、天上界も地上界も暗い闇に包まれた暗黒の世界になってしまってねぇ…。
暗闇が続くと、悪霊や化け物が徘徊しはじめてね、あらゆる所で災いや病が起こるんだよ…。
疫病も蔓延するから、出歩く者など誰ひとりいやしないさ。
でも、そんな毒々しい闇の中でも、含み笑いをする一体の女の姿があった…。
闇の女王ヤトヨミ。
タケルの頭をよぎった女、ヤトヨミさ。---
太陽の神アマテラスが身を隠した天岩戸の前にはかがり火が焚かれて、八百万の神々の顔と、アマテラスを誘い出す儀式が整った広場をゆらゆらと照らしていた。
岩戸の脇には人の背丈程の榊が立ててあり、その榊に飾り付けられた勾玉や鏡がキラキラとかがり火をはじている。
長い尾羽を垂れた長鳴鳥(ニワトリ)が止まり木を掴み、何かが始まるのを予感してかそわそわと首を動かして辺りの様子をうかがっていた。
--- 八百万の神々たちは、アマテラスが天岩戸から出てくるようにと、切なる願いを込めて祝詞をあげて儀式を執り行ったんだ。
しばらくはおごそかな時間が流れて、始めは神々も神妙な面持ちでいたんだけども、その儀式が終盤ともなると、こともあろうに八百万の神々たちは、それぞれで持ち寄った酒や肴で酒盛りを始めてしまったんだよ…。
実は、この宴会こそが神々の狙いだったんだ…。
酒を酌み交わしてお囃子を奏でて、飲めや歌えの大騒ぎさ。
宴も盛り上がって神々も酔いがまわる頃になると、アメノウズメノ命という女の神が、鈴の付いた笹の葉を持って踊って更に場を盛り上げるんだ。
衣の合わせがはだけて乳房があらわになったり、袴のヒモがほどけてしまっても、かまわずに淫らな腰つきで踊り続けるアメノウズメに、神々たちは手拍子を打っての大喜びさ。
特に、男神はねぇ…。
この大騒ぎの宴会を、天岩戸に隠れていたアマテラスが気にならないはずがない。
「何事だ!」と思って、アマテラスはそっと岩戸の扉を開けて外の様子をうかがった…。
その時!天岩戸の脇に潜んでいた力の神タジカラオが、岩戸を塞いでいた岩の扉をこじ開けて、太陽の神アマテラスの手をとって外へ連れ出してしまうんだよ。---
天岩戸の入り口から眩しい光が溢れて出て、白い衣に金色の光を帯びた太陽の神アマテラスが、背中まである黒髪を揺らせながら再び姿を現した。
色白で切れ長の目、勾玉を首にかけて、額に太陽を型どった飾りを乗せた姿は、まさに八百万の神々たちが心の底から待ち望んでいた太陽の神アマテラスだった。
「アマテラスさま…」
「アマテラスさま」
八百万の神々はアマテラスの名を口にして、アマテラスの姿に目を細め笑みをうかべた。
そして、安堵のため息をつく。
抱き合って涙を流す女神もいた。
アマテラスは、八百万の神々の表情で神々たちの気持ちを読み取ると苦笑いをして、左足側の衣の下から剣を抜き取って目の高さまで持ち上げるた。
磨かれた銀色の諸刃が、凛としたアマテラスの顔を映している。
アマテラスは、細やかな飾り模様が刻まれている柄を白い指で力強く握りしめると、まだ完全には明けきれてはいない目の前の暗闇を一直線に切り裂いた。
ピキっ!と、かん高い音と同時に闇が裂けると、闇のすき間から金色の光が瞬く間に暗黒の世界に拡がり、やがて天上界と地上界の隅々まで降り注いでいった。
「オオーっ!!」
日向(ひむか)の国の山の峰々が揺れ動く程の神々たちの歓声が、光が満ちた世界に鳴り響いていく。
夜が明けた。
長鳴声がけたたましく鳴いて夜明けを告げると、枯れた木々が青葉をつけ、腐った草花からは新しい芽が吹いて、大地にはまた命が宿った。
「ぐぇーっっ!」
ついさっきまで、我が物顔で闇の中をうろついていた化け物は、太陽の日差しを浴びると体の奥から絞り出すような悲鳴をあげて、ハラハラと崩れ落ちて土と化してしまった。
浮遊していた悪霊も粉々に砕け散り、その気配さえも感じられなくなってしまった。
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