恋の実、たべた?

午後野つばな

文字の大きさ
上 下
35 / 37

35

しおりを挟む
 徹が切なげに目を細めた。日下は徹の胸に手をつくと、もう片方の手で自分の後孔に彼のペニスを押し当てた。
「いいか?」
 一秒でも早く徹が欲しかった。徹が日下の身体を支えてくれる。
「――……っ」
 カリの部分通るとき、少しだけ苦労した。わずかな痛みさえ悦びを感じた。自分の内部に徹のペニスが入ってくる感触に、ぞくぞくするほど快感が走る。やがてすべてを呑み込むと、日下はほっと息を吐いた。
「衛さん……」
 愛おしそうに自分を見上げる徹に頭を下げ、口づける。
「好きだ」
 囁いたとたん、日下の内部で徹の性器がぴくりと震えた。徹の素直な反応に、愛しさが増す。
 始めはゆっくりと、徹の上で腰を揺らす。腰に添えられた徹の手が、やさしく日下の動きを助けてくれる。
「……ん、あ……っ、あ……んっ」
 リズムを刻むごとに、堪え切れない衝動が日下の内側からこみ上げてくる。ずきずきと脈打つ徹のペニスが愛おしかった。日下のペニスは痛いほどに張りつめ、透明な滴が白い太股を濡らした。
 徹の手が日下の胸を愛撫する。とっさに、彼のペニスを締め付けてしまった。はっと息を飲むような声が聞こえた。次の瞬間、くるりと体勢を入れ替えられる。
「あ……っ」
「ごめん、衛さん。これ以上は我慢ができない」
 苦痛を堪えるように、日下を見つめる徹の瞳は情欲が滲んでいた。徹の髪から落ちた汗が日下の胸を濡らした。これまで見たこともないくらい、雄の本能を剥き出しにした徹の姿に、くらくらするほど欲情した。
 これは僕のものだ。もう誰にも見せたくない。
 次の瞬間、徹のペニスが一気に奥まで入ってくる。
「あ……っ、あっ、あぁ……っ」
 激しさを増した抽送に、日下は翻弄されるように徹の身体にしがみつく。
「あっ、あん、あぁ……っ」
「衛さんが好きだ」
 徹が顔を下げ、日下にキスをした。うれしそうな、ひどく幸せそうな笑顔に、胸の奥が苦しくなった。
 これまで日下は気づかないうちに、自分の周りに壁をつくってきた。傷つきたくなかったからだ。人は嘘つきで、平気で誰かを裏切る。そのくせ、自分が悪者にはなりたくないから、いい人の振りをする。その矛盾に気づいてさえいない。
 表では完璧な顔を装い、他人を受け入れないことで日下は自分を守ってきた。だけど徹といると、日下はそんな自分が嫌になる。たとえ傷ついてもいい、もっと他人を信じてもいいんじゃないかという思いが沸いてくる。
 変わりたい。なぜだか泣きたいような気持ちで、日下は強く願った。
「……もっとキスしろ」
 にっこり笑った徹が、すぐに日下の願いを叶えてくれる。やがて動きは再び激しくなる。心臓が破裂しそうなほど苦しい。脳が酸欠状態でくらくらする。でも止めたくない。
「あ……んっ、あ、あぁ……っ!」
 達した瞬間、徹の身体に倒れ込んだ日下を、彼の腕が抱き止めてくれる。汗で額に張り付いた前髪を徹が掻き上げ、キスをした。
 怖いことは何もなかった。あるのは圧倒的な幸福感と安堵だ。ゆらゆらと、たゆたうような心地よさに、日下は全身を委ねた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

「水の行方」~ 花言葉の裏側で(水シリーズ②)

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

異界の魔術士

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:730

【R18】鬼華

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:134

龍と曲がり魔女におけるDestiny

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

獄牢町

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

君に選ばれて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

忘れもの

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

本当の自分

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...