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第十四話 組合わせ

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 事故からもうすぐ一か月が過ぎようとしていたある日、またジルバルさんの前に全員が集められ

「二週間後、第二回目の野外訓練を行う」

 集められた時点で全員予想していたのか誰一人として声を上げなかった。だが一部のクラスメイトには不安な表情が浮かび上がり、震えている子までいた。

「今回の野外訓練は自由参加だ」

この言葉にクラス全員が一人の男がなんと発言するかを待っていた。

「質問いいですか」

「何かな。勇者殿」

「なぜこのような早い段階で二回目を実施しようとしたのですか?」

 ジルバルさんの理由としてはまずなるべく早く魔物に対するトラウマを消すためである。冒険者の中には魔物の恐怖のあまり、それ以降魔物と戦うことが出来なくなる者もいるため、早めに克服するに越したことはない。
二つ目に全体的なレベルが低いことである。今クラスの中でレベルが10を超えているのは五人しかおらず、トップはLv15で桐山、同列3位Lv12で俺と滝下、Lv11で那須君、Lv10で東方さんとなっていた。
今後のことを考えてもレベルを上げておいた方がいいとのことである。

三日後に決議を取るというのを伝え解散となった。
 俺はその日の夜、自室で空を眺めながら考え込んでいた。一回目と同じ失敗をしないためにはどうすればいいかを。

 次の日、その日はガテンさんが、野暮用があるとかで一週間ほど休みになった。そのため朝から自由だった。予定外に自由になった俺は城下町にある魔道具店によった。
 俺の戦闘スタイルは軽量装甲を活かしたスピード重視。そのため防御力を上げるために装備を重くするのは反って戦闘力が下がる。軽量かつ攻撃または防御面を上げれる装備として思いついたのは、魔道具によるステータス上昇だった。
 店内には杖やポットのような魔道具が揃っていた。その中には攻撃力を上げる指輪や魔力を上げるピアスなど求めていたものがあった。
 しかし念のため掘り出し物がないかと、店の中を散策する。

 すると人が一人すっぽり入りそうなほど大きな壺を見つけた。気になって店主のおばあちゃんに聞いてみたところこれは錬金壺という魔道具だった。
ゲームであるような素材を入れるだけで新しい素材になるみたいな代物だ。こっそり魔力を流すと確かに動き出した。

「おばあちゃんこれ買うよ。いくら?」

 俺は錬金壺を城のほとんど誰も来ない裏庭に置いた。

 そういえば余談だが夜に訓練していたことがアリアさんにバレた。なんでも訓練している俺の姿を幽霊だと勘違いをした人が噂を広げ、城内が大騒ぎになったとか。そのため夜中の訓練は禁止されてしまった。
 だからこうしてお天道様が高いうちから始めようとしている。

 話を戻すが、当初の目的であるバフアイテムは買うことが出来なかった。生産職になって早半年が過ぎようとしているのに、全く装備を作っていない。
 今回はそんな現状を打開するため買ったのだ。決して衝動買いをしたわけではない。
 だが結局、この壺は金貨2枚もした。ぼったくられた気もしなくもないが背に腹は代えられないと思いつい買ってしまった。
 使い方は店主のおばあちゃんに教えてもらった。まず組み合わせたい素材を中に入れ、魔力を注ぐ以上。ただし注意事項として爆発の恐れありとも言っていた。
 それを聞いたときはやっぱり爆発するのかと、呆れたような安心したような変な感覚だった。
 まず混ぜるものとして何があるのか、俺はアイテムボックスの中をいじった。出てきた素材は以下の通りである。

コリナ草×6 ファンズ草×3 ジダフの実×15
スライムゼリーの瓶×3 ニードルラビットの角×2
魔石(小)×2 鉄の片手剣×6 鉄の短剣×3 鉄の盾×4 鉄の槍×2

 片手剣や槍などの武器は、以前研磨の修業を行う際に騎士団から買い取った物で『適当』と『性能アップⅠ』のおかげで武器自体の性能は新品同然にまで戻った。
 またスライムゼリーやニードルラビットの角はギルドが解体を請け負ってくれていることをガテンさんに教えてもらい、その日のうちに持っていくと小一時間程度できれいに解体してくれた。

 どれとどれを組み合わせようかと五分ほど悩み俺は鉄の片手剣とスライムゼリーの瓶を、取り敢えず壺の中に放り込み、魔力を流し込んでみることにした。
 壺に魔力を込めるとガタガタと古い洗濯機のように左右前後に揺れる。三分ほど待つと動きが止まり、蓋との隙間から白い煙が立ち込める。
 もしや壊れたんじゃないかと心配して恐る恐る開けてみると、刃の部分だけがスライムのように半流動体状になっていた。
 この状態では剣と言いうより鞭に近く振り回してみると切れ味はそのままに伸びる剣が完成した。と思いきや地面に剣が刺さり抜けなくなった。近づき抜こうとしたが、刃の部分はスライムとは言え、切れ味は剣そのもの。引っ張って抜こうなんてしたら指が切れてしまう。
 俺は長いひもを用意し柄に括り付け引っ張ってやっと抜けた。

 目標としてはスライムの特性を生かした剣を作りたいと考える。そこで俺は買い取った剣を研いだ時のようなにスキルの併用を試してみることにした。
 色々試した結果として最も錬金壺と相性が良かった組み合わせは『適当』と『調合Ⅱ』である。
 まずどんな完成形にしたいか明確なイメージを持ち、素材を持つと『適当』が発動する。『適当』は武器の生成以外も錬金壺に素材を入れると、思い浮かべた完成形になるための適切な分量を色で教えてくれる。なるべく白に近い状態まで素材を入れ、蓋を閉める。
 次に魔力を流すと同時に『調合Ⅱ』を発動させる。『調合Ⅱ』の効果は、調合の成功率を上げる効果がある。それは錬金にも適応され、魔力流す際に使うことで成功率を上げる。
 結果完成したのはさっきのような完全な半流動体状ではなく魔力を流すことでスライムのような半流動体状になるというあやふやな剣である。
 魔力を流した状態で剣を振ると剣が伸び、魔力を遮断すると元の剣の状態に戻る。名付けて伸縮する剣(シュリンクソード)。

 それから俺は毎日のようにああでもないこうでもないと言いながら時間を見つけては素材を組み合わせた。
 そしてすぐに二週間が過ぎ第二回目の野外訓練が始まった。
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