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不穏な気配を感じながら
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これ以上は絶対にダメだゾ、許さないゾと。
ここは人魚王子としても、キリンエットちんとしても断固として最大限の厳しい態度で非難しなくてはなりません。
ところがクラクラと目が回ってしまってままなりません。
「ハァハァ…あっつ…ハァハァ…ッ…」
「キリリン!?」
そんなキリンエットの酔っ払った状態に王子が即座に気がつきました。
頬はもとより目尻、耳の裏、首筋、それこそ全身が桜色に染まっています。
「まいったな、これほどまでに酒に弱いとは…」
そう口にしつつも、なんだか嬉しそうに王子がさわさわとキリンエットの身体を触ることをやめません。
「やぁっ…ハァハァ…あっつ…い…ハァハァ」
「…少しつらそうだな、水を。
それと酔いが覚めるミジシ入りの…例のアレを持ってきてくれ」
「はっ」
「おそれながら、殿下」
直ちに王家秘伝の万能薬を取りに行った侍女を横目で見送りながらも、またしてもモブー二が進み出ました。
「なんだ?」
「はい、その前に…お前たち、ドウブのワゴン以外は全部片付けてくれ」
「かしこまりました」
信頼の置ける参謀の独断による指示を、すぐさま人払いがしたいと理解した王子が異論を唱えることなく従者たちを下がらせます。
人がいなくなったところで再度尋ねました。
「それで…どういうことだ?」
「はい殿下、キリリンさまには今晩はこのままお休み頂くのがよろしいかと」
「なんだと」
「殿下、先ほどのお話ですが、先方は既に財力に物を言わせ、発言力のある貴族たちへの根回しを着々と進めております。
殿下におかれましては、まずは陛下と王妃殿下に聖女さまが御前に降臨したご報告を速やかに行い、キリリンさまの地位を確立し、陣営の結束力を盤石にするべきかと」
「なるほど……確かにそうだな」
「一刻の猶予も許されない状況かと。
このままだと既成事実もねつ造されそうな勢いです」
「そうか、わかった…そうだな、まずは父上と母上にだな」
(なんのこと…だろう…)
どうも不穏な気配がします。
果たして誰の話をしているのかと。
自分のあずかり知らないところでなんだか何かが勝手に進められているように感じてキリンエットは不安を覚えてしまいました。
キリンオと心の中で呼びかけながら手を差し伸べるとぎゅっと握り返されました。
「大丈夫だよ、キリリン、なにも心配はいらない。
酔いの回りが早いのもきっと疲れているからだろう、少し休もうか」
力強い腕に上半身を抱えられて、ちょうど侍女が持ってきたグラスを今度は優しく口に添えられて飲まされます。
意外なおいしさもあってゴクゴクと飲み干すと途端にとろんとまぶたが重くなりました。
ここは人魚王子としても、キリンエットちんとしても断固として最大限の厳しい態度で非難しなくてはなりません。
ところがクラクラと目が回ってしまってままなりません。
「ハァハァ…あっつ…ハァハァ…ッ…」
「キリリン!?」
そんなキリンエットの酔っ払った状態に王子が即座に気がつきました。
頬はもとより目尻、耳の裏、首筋、それこそ全身が桜色に染まっています。
「まいったな、これほどまでに酒に弱いとは…」
そう口にしつつも、なんだか嬉しそうに王子がさわさわとキリンエットの身体を触ることをやめません。
「やぁっ…ハァハァ…あっつ…い…ハァハァ」
「…少しつらそうだな、水を。
それと酔いが覚めるミジシ入りの…例のアレを持ってきてくれ」
「はっ」
「おそれながら、殿下」
直ちに王家秘伝の万能薬を取りに行った侍女を横目で見送りながらも、またしてもモブー二が進み出ました。
「なんだ?」
「はい、その前に…お前たち、ドウブのワゴン以外は全部片付けてくれ」
「かしこまりました」
信頼の置ける参謀の独断による指示を、すぐさま人払いがしたいと理解した王子が異論を唱えることなく従者たちを下がらせます。
人がいなくなったところで再度尋ねました。
「それで…どういうことだ?」
「はい殿下、キリリンさまには今晩はこのままお休み頂くのがよろしいかと」
「なんだと」
「殿下、先ほどのお話ですが、先方は既に財力に物を言わせ、発言力のある貴族たちへの根回しを着々と進めております。
殿下におかれましては、まずは陛下と王妃殿下に聖女さまが御前に降臨したご報告を速やかに行い、キリリンさまの地位を確立し、陣営の結束力を盤石にするべきかと」
「なるほど……確かにそうだな」
「一刻の猶予も許されない状況かと。
このままだと既成事実もねつ造されそうな勢いです」
「そうか、わかった…そうだな、まずは父上と母上にだな」
(なんのこと…だろう…)
どうも不穏な気配がします。
果たして誰の話をしているのかと。
自分のあずかり知らないところでなんだか何かが勝手に進められているように感じてキリンエットは不安を覚えてしまいました。
キリンオと心の中で呼びかけながら手を差し伸べるとぎゅっと握り返されました。
「大丈夫だよ、キリリン、なにも心配はいらない。
酔いの回りが早いのもきっと疲れているからだろう、少し休もうか」
力強い腕に上半身を抱えられて、ちょうど侍女が持ってきたグラスを今度は優しく口に添えられて飲まされます。
意外なおいしさもあってゴクゴクと飲み干すと途端にとろんとまぶたが重くなりました。
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