アルファの戦士はオメガにされて愛される~オメガバース・ギリシャ神話~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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第2章 美貌の案内人オルフェウス

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「ンン、コホン……ではエウリュディケ、今からお前には特別な任務を与える。
 案内人オルフェウスとともに地上の厄災を含む六つの難題を解決すること、それをお前に命ずる。
 もし、この使命を見事に全うした暁にはお前の罪は不問に処され、封印された過去の記憶も全て取り戻せるだろう。
 さらには冥府の王しか外すことのできない貞操帯、その下に隠された罪人の焼き印も消し取られ、自らの意思で自由に外すことも再び可能となる。
 他に願いがあるのであれば叶えてやるつもりだ。
 まずは『遺失の森』で待つオルフェウスにことの詳細を尋ねるがいい。
 お前のために用意した案内役だ。だが、この任務はエウリュディケ、必ずお前自身の力で成し遂げなくてはならない。
 それを心せよ。では旅立つがよい。朗報を待つ」

 告げ終わったのか、鳥頭と猿頭が揃ってまじまじとこちらを見つめてくる。
 小さな手に持った巻物の紙面からは黄金に光る文字が宙に浮かび上がってユラユラと揺れ続けている。
 その荘厳さから紛れもなく神族が作った通知書であることが理解できた。
 黙ってただ凝視していると片割れがおずおずと尋ねてきた。

「えっとあの…通告は以上…なのですが…ご質問は…ありますか?」
「いや、特に…けど、もしも…その特別な任務とやらを…ここで断ったらどうなる?」
「えぇーーっ」

 二体が目を白黒させて、それはいくらなんでもダメでしょーっと体を反り返るようにしながら叫んだ。

「だいたい囚人だったわけだしっ、ここは受け入れることが大前提ですよねっ」
「ま、まあ…そ、そうだよな」
「えぇっ、なに、その態度!? ち、違うのかなぁ…ど、どう思う、モルモー?」
「う、うん、ど、どうなんだろ…」

 強気に発した割にはすぐさま頼った鳥頭に猿頭もまた自信なさげに小首を傾げた。

「と、とにかくですね、あなたはこれを持って『遺失の森』へ行って下さいっ、そこでオルフェウスたる人物が待っているようですからっ。
 で、今の疑問も含めてその方に全部尋ねて…下さいっ、うん、はい、以上です!!」
「おぉ、モルモー、そうくるよねっ、やっぱりそうくるよねっ、やっぱりそれが一番だ!!」

 わからないことはそのオルフェウスとやらに聞けとばかりに、鳥頭と猿頭がうんうんと強く頷き合った。

「では、お仕事が終わりましたので、エンプサ、帰ろう!!」
「そ、そうだね、これでおしまい、よし帰ろう!!」
「オピス、神殿に戻ってくれ!!」
「じゃ、そういうことで!!」

 二体がそそくさと大蛇の首にしがみつき、鎖を手で握るとピタッと蛇の表皮に並らんで頭を付ける。
 隣に伸びていた蛇の頭がぬぅうぅぅと後方の上空へと持ち上がった。
 クルリと器用に大きな胴体の向きを変えるや否や、ザブンッと水の中へと潜った。
 その反動でダプンッと現れた時よりも荒々しい波が今度は顔にまでかかった。
  
 ザザザザザザザーーッ……
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