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第4章 ケリュネイア山の黄金の羊
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追いかけてきた魔鳥にスリスリと甘えられ、その愛らしい仕草にホッとひととき和む。
けれども、いよいよ始まるのだ、本格的に。
オルフェウスが傍らにいない状態で使命に挑むのは初めてだ。
「イオン…トリトスの気配を感じたらすぐに教えてくれ」
屈強な男に守られながらこなしてきた今までとは訳が違うのだ。
真剣な声で命じれば、クィイ…と小さく鳴いて応じられた。
(見られている…)
サワサワと呼応するかのように揺れる木々の間から奇妙な視線を感じずにはいられない。
先ほどの声が幻聴でなければ、向こうにとっても話があるはずなのだ。
いつ出現するのか、いつまた声をかけてくるつもりなのかと意識を周囲に向けながら慎重に慎重に足を進めると、ヒュンッ、ヒュンッと左右の木々の枝葉が一斉に伸び始めた。
ザザザッザザッ…ザザザッザザッ…
斜め上で複雑に絡み合うと、奥へ奥へと続く緑の屋根を自ずと作っていく。
その白い靄がかかった緑色の通路を、招き入れられるようにして一歩また一歩と歩み続けていくと開けた場所にたどり着いた。
(あれは…)
見上げるほどに高く、両手を伸ばしても届かないほどに幅広い円錐状の物体が見えてきた。
『待ってたよ~』
その上に立っている白金に輝く存在がニッと口を開けた。
『ねぇ、名前は? なんて呼べばいいの?』
口は開いてはいても音は発していない。
声が頭の中で響いているのだ。
「なんて呼べばいいのって…急に言われても…」
唐突に念で話しかけられて、馴れ馴れしくないかとつい苦笑いをしてしまう。
見た目はモコモコとした毛皮にクルンと丸く曲がった黄金の角と蹄を持った、いかにも聖獣らしい姿だというのにどうも性格は違うようだ。
『だって…精霊族のおにーさんって呼ぶわけにはいかないでしょ?』
「精霊族!?」
ニュンペー族と言ったら精の霊気を操る種族だ。
誰がだ、オレがかと。
驚くあまりに素っ頓狂な声を上げると、クイィイイーッとイオンがけたたましく鳴きながら肩から飛び立った。
『あっ、やめてよっ、やめてよーーっ』
バサッバサッバサッと。
こいつめとばかりに嘴で突かれ、足でも蹴りを入れられ、わかったから、わかったからーーっ、もう言わないからーーっと白金の羊が逃げ回りながら悲鳴を上げている。
「イ、イオン、どうしたんだ、だめだ、そんなことしちゃ…」
慌てて、一頭と一羽の揉み合う姿へと走り寄っていった。
どちらかというと温和な鳥類だ。
そんなイオンの何に触れたのか。
敵意を露わにしているようにも見える態度と目つきに、こっちに来て、いい子だからと近づきながら手招きをすると、ドスッと最後に強く頭を小突いた後に飛んで戻ってきた。
「ど、どうしたんだよ、イオン?」
肩の上に降り立ち、クゥックゥー、クゥックゥーと胸部を上下させている様相はまさに怒りに満ちている。
(オレを精霊族のおにーさん…と呼んだから…?)
けれども、いよいよ始まるのだ、本格的に。
オルフェウスが傍らにいない状態で使命に挑むのは初めてだ。
「イオン…トリトスの気配を感じたらすぐに教えてくれ」
屈強な男に守られながらこなしてきた今までとは訳が違うのだ。
真剣な声で命じれば、クィイ…と小さく鳴いて応じられた。
(見られている…)
サワサワと呼応するかのように揺れる木々の間から奇妙な視線を感じずにはいられない。
先ほどの声が幻聴でなければ、向こうにとっても話があるはずなのだ。
いつ出現するのか、いつまた声をかけてくるつもりなのかと意識を周囲に向けながら慎重に慎重に足を進めると、ヒュンッ、ヒュンッと左右の木々の枝葉が一斉に伸び始めた。
ザザザッザザッ…ザザザッザザッ…
斜め上で複雑に絡み合うと、奥へ奥へと続く緑の屋根を自ずと作っていく。
その白い靄がかかった緑色の通路を、招き入れられるようにして一歩また一歩と歩み続けていくと開けた場所にたどり着いた。
(あれは…)
見上げるほどに高く、両手を伸ばしても届かないほどに幅広い円錐状の物体が見えてきた。
『待ってたよ~』
その上に立っている白金に輝く存在がニッと口を開けた。
『ねぇ、名前は? なんて呼べばいいの?』
口は開いてはいても音は発していない。
声が頭の中で響いているのだ。
「なんて呼べばいいのって…急に言われても…」
唐突に念で話しかけられて、馴れ馴れしくないかとつい苦笑いをしてしまう。
見た目はモコモコとした毛皮にクルンと丸く曲がった黄金の角と蹄を持った、いかにも聖獣らしい姿だというのにどうも性格は違うようだ。
『だって…精霊族のおにーさんって呼ぶわけにはいかないでしょ?』
「精霊族!?」
ニュンペー族と言ったら精の霊気を操る種族だ。
誰がだ、オレがかと。
驚くあまりに素っ頓狂な声を上げると、クイィイイーッとイオンがけたたましく鳴きながら肩から飛び立った。
『あっ、やめてよっ、やめてよーーっ』
バサッバサッバサッと。
こいつめとばかりに嘴で突かれ、足でも蹴りを入れられ、わかったから、わかったからーーっ、もう言わないからーーっと白金の羊が逃げ回りながら悲鳴を上げている。
「イ、イオン、どうしたんだ、だめだ、そんなことしちゃ…」
慌てて、一頭と一羽の揉み合う姿へと走り寄っていった。
どちらかというと温和な鳥類だ。
そんなイオンの何に触れたのか。
敵意を露わにしているようにも見える態度と目つきに、こっちに来て、いい子だからと近づきながら手招きをすると、ドスッと最後に強く頭を小突いた後に飛んで戻ってきた。
「ど、どうしたんだよ、イオン?」
肩の上に降り立ち、クゥックゥー、クゥックゥーと胸部を上下させている様相はまさに怒りに満ちている。
(オレを精霊族のおにーさん…と呼んだから…?)
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