オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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3:アトラスの謎と猛烈な求愛と

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 離れた唇が発した、その甘さを含んだ声は。お前の望むようにしてやると。今晩この売春宿のその手の部屋で一緒に寝るか――そんな意志が含まれているような気がして。

 「いや、だ、だから、泊まるつもりはなくって。そうじゃなくって・・・」

 と慌てて否定した。

 「そうだな。ここではやめておこう。もっといい宿を見つけてやる。行くぞ」

 「えっ・・・あっ・・・」

 再び勢いよく歩き出した相手に。しっかりと抱えられた身体が抵抗の隙もなく従う。

 (何なんだろうか・・・本当に・・・)

 その逞しい腕の中で考えることは。出逢いから四日ほどが過ぎても。いや、むしろ時が経てば経つほど、別格なのだと認識を深めずにはいられない。

 (もしかしたら・・・)

 腕の立つ熟練した戦士というよりは半神半人なのではないだろうか。

 (神族の血が入っているような気がする)

 仮に半分でなくても。先祖あたりにいるのではないかと感じるのだ。

 (だって・・・そうじゃないか・・・)

 心の中での自問自答を察知されないように。わずかにだけ相手を見つた後、また視線を足下に落とす。

 (やはり・・・何かちょっと違う・・・)

 おそらくは多くの死線を乗り越え、鍛えに鍛え抜かれていった鋼のような肉体と強靱な精神力と。そして、疑いようもなく知性を感じさせる常に的確な分析力は。

 統率者にしたのならば、申し分のない英断と支配力を見せ、知将として君臨することだろう。

 だが、それだけではないのだ。時折、身から放つアルケーの質と量、それらが桁違いのような気がしてたまらない。

 誰と比較したわけでもなく、また比較できるほど多くとは接していない。だから、何が一体わかるんだと言われたらそれまでだ。けれども、なんとなくなのだが、そう感じるのだ。その秘めたる潜在能力を。

 『剣がお前のアルケーに合ってない。だから、本来の力が出せてないだけだ』

 その言葉は、大事にあたる前に身体がなまっていてはいやだと。二日目の朝に剣術の手合わせを願い出た結果、負けた時に言われた言葉だ。

 憎たらしいほどに強かったのだ。太刀打ちできなかったのだ。

 その時、慰められるようにして言われた言葉を真になど受けてはいなかったが、どうやら本気だった相手に連れられて。

 グライアイの三姉妹が生息するゴルゴーンの岩山へと向かう途中で街に立ち寄り、武具を扱う鍛冶屋で霊刀アルケークスィフォスの鞘を購入した。

 (ほんとに何者なんだ・・・)

 問いただしたくとも、記憶と過去を清算した元囚人から得られるモノなどない。何をして監獄に入れられたのかとか。本当はツガイもいたのではないかとか。

 この男に問いかけたい質問は自分にも当てはまる。自分は一体、何をして罪人となったのだろうか。家族はツガイはいたのだろうか。

 「テセウス、どうした?」

 「いや・・・何でもない」

 失われた過去に想いを寄せていることを知られたくなくて。すぐさま打ち消した。

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