オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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5:非道な霊託と淫毒を刺された身体と

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 咄嗟に左腰から刀のつかを外した。

 「来い、霊刃アルケークスィフォス!!」

 手から闘気を流しこむ。と、ビュオンッ!! と柄から長く鋭い黄白色の刃が現れた。

 「ケールを離せ!!」

 「なんじゃぁあぁ、刀じゃぁあぁーー!!」

 「ワシらに刃を向けじゃぁあぁーー!!」

 「許さんじゃぁあぁーー!!」

 (しまった・・・)

 相手の一層、激化した邪気に。身構えたものの、火に油を注いだかと感じ取る。その耳に。遠くで、ピィィーーと笛を拭いたかのような音が聞こえた。

 「ペルセウス、お前は淫毒まみれにしてやじゃぁあぁーー!!」

 「!!」

 一瞬の間に。ビュゥウーー!! ビュゥウ--!! ビュゥウ--!! と勢いよくかけられた。

 「ゲホッ、ゴホッ・・・」

 髪から、目の上からと流れ落ちる、ねっとりとする不潔な液体が口の中にも入りこむ。すぐさま外套で顔を拭きながら、ペッ、ペッと吐き出す。と足に枝が絡みついた。

 「うあぁっ!!」

 ザザザザザッと。勢いよく宙に逆さまとなって。吊り上げられたと感じた途端に、チクリと脚に突き刺すような痛みが走った。ガッと剣を振り降ろして、枝を切りつける。だが、切れない。
 
 「おほーっ!! こいつはオメガじゃぁ、オメガのオスじゃぁあぁ!!」

 「オメガじゃぁ!! 上等なオメガじゃぁあぁ!!」

 「オメガに淫毒を刺すじゃぁ!! もっと注ぐじゃぁあぁ!!」

 「くっ!!」

 抗う両手と両脚に枝が巻き付けられ、脇腹の防具の隙間にチクリとまた痛みが走った。その瞬間――

 ドクンッ!!

 と心臓が跳ね上がった。ドクドクドクドク・・・と脈が乱れ始める。

 (な、なんだ・・・これ・・・)

 全身が火を付けられたかのように。突然、熱くなった。

 「ケケケ・・・いたぶってやじゃぁ」

 「ハデスの血で昂ぶってじゃぁ、延々とヤれそうじゃぁ・・・ヒヒヒ・・・」
 
 「イーヌドーグは竈に捨てじゃぁ・・・ククク・・・」

 (ケール!!)

 まずいと感じるや否や。枝に囚われて身動きのできない、真っ黒な体がビュンッと闇色の穴へと投げ捨てられた。

 「ケーーール!!」

 叫ぶと同時に―――

 ヒューーーッ・・・・・・・・・バシュンッ!!

 と後方の闇の中から突如として飛んできた矢が、ケールを飲みこんだ竈の中へと突き刺さる。ボワンッ!! と真っ赤な炎が天まで上がった。

 「なんじゃぁあぁ!?」

 「火じゃぁ!! 火じゃぁあぁ!!」

 「消すじゃぁ、ダイモーン、早く消すじゃぁあぁ!!」

 「消えんじゃぁ!! なぜじゃぁ、ダイモーンが燃えるはずがないじゃぁあぁ!!」

 慌てふためく老婆たちの間で吊り下げられたまま、ゴクリと嚥下する。一体、何が起こったのか。

 ケールの放った火の玉がすぐさま消されていたのとは違って。まるで邪気を燃料にでもしているかのように。メラメラと燃え上がったほむらが竈の闇を一気に駆逐していく。

 「なぜじゃぁ、なぜ、消えんじゃぁ・・・まさか・・・この火は・・・」

 「まさか・・・プロメテウスじゃぁ・・・」

 「ありえんじゃぁ・・・ありえんじゃぁ・・・天の火じゃぁ・・・」

 おののく老婆たちの背後で地を這うような低い声がした。

 「ババァどもが。やってくれたな」
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