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8:牛頭ミノタウロスの迷宮と陵辱と※

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 (は、速い・・・)

 その動きは目で追うのがやっとだ。突き上げるように出てくる石柱の荒々しさなど。振い落とすように揺れて割れる地面など。全く関係ない。

 渦を巻いて動く、切り分けられた石の上を。タンッ、タンッ、タンッと。どれほど高低差があろうと、どんなに形がいびつであろうと軽やかに移動する。

 ゴゴゴゴゴゴォォォォーーッ・・・・・・ズドドドドドォォォォーーッ・・・・・・

 轟音と激震の中を、その身が一つの流れる閃光のようになって。螺旋を描くようにしながら上昇していく。

 (あ、危ない!!)

 無限の空間と化した闇色の天井から、侵入者を見えない底へと落とそうと。丸い巨石が振り子のようにして、ブオンッと飛んでくる。

 だが、攻略を目指す側が動じることはない。完全に読み取っているのだ。スッ、スッ、スッと。次から次へと見事にかわしていく。

 (あぁ、よかった・・・)

 今にも心臓が飛び出しそうで。鼓動が速まる胸を手でいさめながら嚥下する。

 ハラハラと安堵を繰り返す視線の先で、上りつめたアトラスが今度はスーッと急降下をし始めた。

 ズズズ、ズズズズズゥーーッ・・・・・・

 と石柱が自らの意思でも持っているかのように動く、その無気味な暗闇の中で。突如として中央に、幅の広い低い柱が出現した。

 上部には半透明の緑色に光る三角すいが置いてある。その異質な柱の周りを。アトラスが狙いを定めたかのように右に左に飛び回っている。

 (なんだ、あの柱・・・結界が張られている・・・)

 そうか、あの動きは打破のための何かしらの手順を踏んでいるのか。そう感じたのと同時に、バチバチバチッと。アトラスが右手に青紫色のアルケーをまとった。

 バシーーンッ!!

 面に向かって振り下ろされた攻撃が強烈な光とともに弾かれた。

 「なかなか、やるじゃないか」

 拒まれた者がフッと余裕の笑みを浮かべる。

 (あっ・・・)

 すると、ブワンッと。次なる臨戦仕様なのか、それとも攻撃を受けて損傷を受けた結果なのか。三角錐が人が入れるほどの大きさに膨らんだ。アトラスがスッと距離を置く。

 「あぁ・・・やはり中にあるな」

 傍観するこちらからは、わからない何かを見て取った様子で。右手を横に掲げた。

 「一気にやるか」

 告げるや否や、ボワンッと。青紫色に光る長くて鋭い霊槍アルケーロンヒが現れた。

 (あれは・・・)

 目にした途端に記憶が蘇った。グライアイの老婆たちの時に物質化していたあの武具だ。身長ほどの長さがある。一目見て、ただの槍なんかではないとすぐにわかる。

 (なぜ・・・あんなモノを・・・)

 持っているのか。その上、瞬時にして、神器にすら思える武器を取り出せるとは。キラキラと光の粒子を放つ聖具と同様に、その潜在能力におののかずにはいられない。

 だが、それよりも。あの槍はどこかで見たことがあるような気がすると。考えたその時――

 ((いやだ・・・どうして・・・そんなことは・・・しないで・・・))

 と突然、三角錐の側面から小さな身体が飛び出してきた。

 「!!」

 その姿に息をのんだ。

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