オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
96 / 169
9:塗り替えられていく身体と心と※

5

しおりを挟む
 ビュンッ、ビュンッ、ビュンッと風を切るような勢いで。腕の中にいても、あまりの速度に視線が追いつかない。

 ブオォオンッ!! ブオォオンッ!! 

 と上空から、石柱が次々と襲いかかってくる。

 サッ、サッとかわした横で、ドゴォオォンッ!! ズォオオンッ!! とぶつかり合いながら、豪快に転げ落ちていく。

 ゴゴゴゴゴォォォーーッ・・・・・・
 
 と下から烈風が巻き上がり、空間そのものが大きく揺れ動いた。

 (あ、危ない!!)

 眼下に気を取られていた隙に、巨石が目前まで飛びこんで来た。思わず、ギュッと目をつぶる。すると、タンッ!! と一際高く、アトラスが飛翔した。

 (す、すごい・・・)

 まるで翼でもあるかのように、パタパタと。外套クライナをたなびかせて、長く長く上昇すると、境界線の床へとスタンッと降り立った。その着地したタイミングで――

 ズドドドドドォォォォーーッ・・・・・・ドドドォォォォーーッ・・・・・・

 と背後で床そのものが、歪んだ空間そのものが。深く暗い奈落の底へと崩れ落ちていく。

 (そ、そんな・・・)

 その壮絶なまでに損壊していく様を、アトラスの肩越しに呆然と見守った。

 ズドォオオォォーーーンッ!!

 まるで巨人が力尽きて倒れたような、格段と激しい轟音と凄まじい振動がして。視線の先に、ぽっかりと抉れた黒い穴が広がった。

 (あぁ・・・)

 一瞬にして、全てが窪みに飲みこまれたかのような、全てが破壊つくされたかのようなその痕跡に。信じがたい気持ちで一杯になる。つい先ほどまで、その下にいたというのに。

 けれども、スタスタスタ・・・と。何の感慨も見せることなく、何一つ顧みることもなく。前に進むアトラスによって、元いた祭壇の上に降ろされ、座らされた。

 床にはキラキラとアリアドネーの糸玉が光っている。

 「ケール」

 「ワフッ!!」

 「どこかに転がっているはずだ。アスピダを取って来い」

 「ワフッ!!」

 命令に忠実な小型の魔獣が、タッとまた先ほどの空間へと戻っていく。

 「えっ・・・待っ・・・て…あぶな・・・から・・・ハァハァ・・・いい・・・って・・・そんな・・・しなくて」

 アスピダなんてこの際、どうでもいいじゃないかと。荒い呼吸を押さえながら、瞳で訴える。

 「問題ない。終わってる。瓦礫の中から探すだけだ。それよりも・・・」

 バッと、前を隠していた外套クライナが大きな手で払われる。胸を押されて、台座に肘をついた。

 「お前から、他のオスの臭いがしているのがどうにも耐えられない」

 思い詰めたような声とともに、グッと両膝を持ち上げられて。反動で、力の入らない身体が、ふわさっと仰向けになる。

 (えっ・・・)

 そのまま足の裏を台の縁にかけるように、両脚を立てさせられて。目を大きく見開いた。

 「ア、アト・・・ラス?」

 貫頭衣トゥニカの下に身に着けていた下穿きは、ミノタウロスに奪い取られている。裾を捲られて、前も後ろも晒されたその恥ずかしい体勢に。頬にカッと朱が走った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

処理中です...