上 下
103 / 169
10:ハデスの神殿と揺るがない求愛と

1

しおりを挟む
 暗闇の中――

 『いやっ・・・いやですっ!! やめっ・・・アァッ!!』

 悲鳴のような声が聞こえた。途端に、ぼわんっと光景が浮かび上がって。

 『いやぁっ!! アァッ!! アァッ!!』

 白い華奢な裸体が後ろから抱えられて、赤みがかった黒い闇人間の腕の中で身悶えている。

 (あぁ・・・いやだ・・・)

 性行為を強要されているその様子を目にして、即座に不快感が湧き上がる。そんな姿は見たくない。見たくないのに。

 『いやですっ!! アァッ!! アアッ!!』

 ゆっさゆっさと下から揺さぶられて、儚く清らかな存在が金の髪を振り乱しながら喘いでいる。

 『美しい・・・妻よ・・・気持ちがいいのか? ん? どうだ?』

 赤黒い男が低い声でねっとりと聞いた。

 『はぁあっ!! いやぁあっ!! いやぁあっ!!』

 妻と呼ばれても、陵辱されているとしか思えない者が拒否し続ける。そこへ、

 『僕も入れて下さいよ』

 と青みがかった黒い闇と声が加わった。大きく開かされている脚の間にしゃがみこむと、その股間へと顔を埋めた。

 『あぁっ!! や、やめなさいっ!!』

 細い腕が咄嗟に抗うが、青黒い男の頭が躊躇うことなく上下し始めて。

 『あぁっ!! はぁあっ!! やぁっ、ぁあんっ!!』

 しゃぶられる音とともに、質を変えた嬌声が上がり始めた。

 『姉さんはこうやって舐められるのが本当に好きですよねぇ・・・フフフ・・・』

 『やぁあっ!! あっ!! あっ!! ぁあんっ!!』

 (あぁ・・・)

 先ほどまであれほど拒んでいたというのに、本当は違うはずなのに。あっという間に溺れ始めて。その淫らに悶える様子に打ちのめされる。悲しくてたまらない。

 『お前はまったく・・・オレの妻だぞ』

 『いいじゃないですか? こんなにも美しい姉さんを独り占めなんてずるいですよ』

 『まぁな・・・ほら、どうした? もっと締め付けろ。いいんだろう?』

 『いやぁあっ!! はぁあぁっ!! あんっ!! あぁんっ!!』

 後ろから突き入れられては、勃った前も口で弄られてと。二者に容赦なく責められて、闇の中で、肢体がビクビクッと跳ね上がる。

 『極上のオメガだから仕方ないですよね、姉さん? 姉さんを欲しがらないオスはいませんよ。そう・・・・・・だって本当は・・・フフフ・・・』

 『あぁ、そうだな・・・・・・だって、お前を欲しがっていた。やむえず・・・・・・になったけどな。ハハハ・・・』

 (そんな・・・)

 その会話が聞こえてきた瞬間、血の気が引いた。

 (まさか・・・そんな・・・うそだ・・・)

 驚愕と同時に、深い悲しみが競り上がった。信じられない。

 (なんで!? 噛んだのに!!)

 と叫び声が上がる――と同時に、ハッと目が覚めた。

 (なんだ・・・今のは・・・)

 ハァ、ハァ、ハァと気が付けば呼吸が乱れていた身を、息をゴクリとのむことで落ち着かせようとする。

 (なんで、こんな夢を・・・?)

 また夢を見たのだ、それも淫夢を。しかも後味が悪く、悲しい気持ちにさせられる類いの。

 (あぁ・・・いやだ・・・)

 不快さを感じながら、寝具の上に投げ出されている自分の腕を視界に捉える。とそのまま視線をぼんやりと彷徨わせた。

 (えっ・・・ここは・・・)

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺のアイスは、一目惚れ

BL / 完結 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:7

異世界のんびり散歩旅

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,251pt お気に入り:745

ありあまるほどの、幸せを

BL / 連載中 24h.ポイント:3,721pt お気に入り:351

裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:518

俺の可愛いオメガ

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:106

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:305

処理中です...