オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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11:メデューサの岩窟とペガサスと

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 ルーベが放つ青い魔炎の向こう側に広がっている光景は、大河が三叉に分かれて流れこむ岩窟だ。

 ゴツゴツと険しくそびえ立つ岩山の。左右と中央にぽっかりと深い穴があいていて、それぞれに細くなった河が流れ入っている。

 一見、別々の大きな岩窟が三つ並んでいるようにも見える。だが、アトラスの話では奥まで突き進むと、迷路のように入り組んだ狭い通路で繋がっているらしい。

 その邪悪な気が漏れ出る無気味な洞穴を、

 (待つしかないか・・・)

 と諦めの境地で見つめる。

 おそらくは川沿いの岸を歩いて岩窟の中に入ったのだろうが、追いかけたくても、どの岩穴を選んだかがわからない以上、かえって行き違いになる可能性が高い。

 「ほんとに勝手だよ・・・外に出ないのなら、これだって、オレには必要ないのに」

 左腕の防具の上にかたどられた、思っていたよりも小さかった楯を触りながら思うことは、アトラスのことだけだ。

 鏡のように美しく輝くミノタウロスのアスピダも、何かあった時のためにお前の腕に付けておくと。元より自分は使う気はなかったが、

 (本当に大丈夫なのだろうか・・・)

 と不安が胸をよぎる。

 『オレは目を閉じた状態で、仕留めることができる。何の心配もいらない』

 見た者を一瞬にして石化するという怪物メデューサの邪眼について。尋ねた時、そう、サラリとかわされたが、こちらは心配でたまらない。

 アテナの聖なる神殿で。ポセイドンと関係を持ったメデューサがとりわけよく知られているが、ゴルゴーンの三姉妹と呼ばれ、実際は他に二体もいるのだ。蛇の胴体を持つ異形が。

 三体の化け物に同時に襲われたら、どうするのだろうか。だが――

 (仕方ない・・・)

 あれこれと考えていたところで追うこともできない以上、信じて待つしかない。フゥ・・・とまた溜め息をつくと、イーヌドーグに声をかけた。

 「ケール、ルーベ、おやつをあげるよ。おいで」

 「ワフッ!!」
 
 途端に、二匹がパタパタと尻尾を嬉しそうに振った。

 「魔炎はもういいから。そんなの出してたら、食べるのに邪魔だろ? どうせ、こんなに離れているわけだし」

 岩窟からは随分と遠い岸辺につけているのだ。何の心配もいらないだろう。けれども、

 「クゥゥ・・・」

 それはダメだと大小のイーヌドーグが同時に首を振る。

 「大丈夫だって。なにかあったら、また守ってくれればいいから。じゃないと、大好きな蜂蜜のお菓子が焼け焦げちゃうよ、食べる前に」

 中に入って、ゴマと蜂蜜を使った焼き菓子の入った荷物袋サルキィナと酒瓶を持ち上げる。涎を垂らしながら待っていた魔獣たちの前へと戻ると――

 「さ、少し、休憩しよう」

 そう告げて、袋を開けた。御者台にのせた途端、二匹が魔炎を収めてガツガツと食べ始める。微笑ましく眺めながら、自分もまた酒瓶を口にした。

 元々が日の光とは無縁のおどろおどろしい空の下、水が注ぎこむ魔窟は。くすんだ茶色に緑、黒と複数の色が流れるように重なっていて、邪龍でも張り付いているかのような印象を与える。

 だが、入り口周辺は鬱蒼と木々が生えていて、岩石だらけというわけでもない。

 チビチビと酒を飲みながら、ぼんやりと眺めていると突然、右の洞窟からほわんっと白い光が現れた。

 (えっ・・・)
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