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1章:恋に落ちちゃいました~呪われたオメガの王カール・オージー・サンデス・メイ・ジセイカ~

いよいよカエルの番

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 ドシラソ・ドシラソ・ドミレと鐘がやたらと連続して鳴り響いている中(今日はやたらとお見事判定が多いな)とうっすらと感じ取りながらも心の行く先はただ一つだ。

(早くしてくれ…)

 歌、手品、生け花、ダンス、ものまね、漫才、ジャグリング、一輪乗り、バク転、朗読、愛犬と一緒にヨガのポーズ、変顔、謎の祈祷――何をされたって何一つ入ってきやしない。

(声が聞きたい…)

 存在の全てが気になって気になって仕方がない。

(名前も知りたい…)

 欲求が次から次へとこみ上げるようにして湧き上がる。
 けれども、だからといって彼の資料を直ちに持ってこい…などとも口にできない。
 君主たる者、いつだって万人に平等であれ精神なのだから!!

 これでくっそ~の嵐にならないわけがない。

(本当に早くしてくれ…)

 半ば祈るような気持ちになりつつ。
 完璧なまでに彫像のように張り付いた微笑を浮かべながら時に拍手をし、時に優しく頷いてみせる。
 ある一つの方向だけに全力で注視していることなど誰にも覚られないようにだ。
 けれども心の中は欲望の暴風域だ。

(何度見ても…申し分ない…)

 時折さりげなさを装って眺める双眼鏡の手が興奮のあまりに震えそうになる。
 どんなに質の低い演舞だろうと律儀にその都度手を叩き、相手を賞賛する姿勢であるのは好感しかない。
 だが必死に抑える。
 君主たる者、いつだって万人に平等であれ精神じゃなくてはならないので!!

 あぁ、けれどもそんな理性とは裏腹に。
 もはや、ありのままの欲望がノンストップ状態だ。

(身体も知りたい…触ってみたい…触りまくりたい…仲良くしたい…もちろん、ベッドで…いやダメだ、性急すぎて怖がらせてはいけない…だから最初はやはり手繋ぎから始めたっていい…けれども最終的には大人の関係で…そして、それこそ最後は好き放題にさせて欲しい…)

 とこれほどまでにも想いを滾らせているというのに、凝視することもままならないとは。
 これをくっそ~と言わずにして何をくっそ~と言うのか。

 君主たる者、いつだって万人に平等であれ精神なんてくそ食らえだっていうのに!!

 そんな持てる者としての矜持きょうじも王族としての品位も自己同一性アイデンティティの基盤ですらも失いそうになる苦行のように長かった時間がようやく終わり――

「さぁ、最後はタケノコーノ・サト島はキノーコ山の麓、オラーガ村よりはるばるやってきました。
 ちょっと変わったオシャレさん、初めての参加者です、どうぞ~」

 といよいよ彼の番となった。
 ゴクリと嚥下する。

 玉座の目の前に設置された、円錐状にこんもりと盛り上がった特設舞台ステージへと。
 トテトテトテ…と鍬を背負ったカエル姿が坂道を上がってやって来る。

 だだっ広くも平たい最頂部の真ん中に到着するとペコリと大きな頭を下げた。

(あぁ…)

 なんて眩しいのか。
 前のめりになった身の心臓がドクドクドクッと口から飛び出しそうだ。

 一体何をして見せてくれるのか。
 声を聞かせてくれるのか、笑顔を見せてくれるのか。
 まずは自己紹介なのか。
 何でもいい。
 早く、どんな存在なのか教えてくれ。

 と秘かに興奮するその目の前で、カエルが鍬を背中から下ろした。
 そして利き手を前にして反対の手は後ろを持ち、足を踏ん張って中腰になるとビシッと構えた。
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