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3章:捕まっちゃいました~呪われたオメガの王さまmeetsカエルの王さま~

すごい…

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(あったかい…)

 人肌を感じるのはいつぶりだろうか。
 いや、単純に体温という問題ではないような気がする。
 なんだかとても安心するのだ。
 人間時代を振り返っても、こんな風に抱きしめられて寝たことなどあっただろうか。
 情交後はすることしたらもういいと、さっさと身勝手に寝てたような気がする。
 
(あぁ…王さまってやっぱりすごいな)

 包容力がかつての自分なんかとは違うのだ。
 優しさも思いやりも情の深さも何もかもだ。

『これから少しずつ慣れていくから大丈夫だ。
 いずれ懐中時計もいらなくなる』

 ポンポンと大きな手に優しく背中を叩かれて、じわんと左胸が熱くなった。

(いずれ懐中時計もいらなくなる…)

 その言葉が示していることはこの先もずっと側にいるという気持ちだ。
 
『あの、あの…ケロ』

 真意を確かめたくて口を開いた。

『ん、どうした?』

 胸がキュンと締め付けられるほどに柔らかく尋ねられて。
 本当に自分なんかにどうしてなのだろうかと戸惑ってしまう。
 だが、聞きたいことがあるのだ。
 もぞっと身じろぎながら続けた。

『あの、あの…ぬ、ぬいぐるみがお好きなのですか…ケロ』

『…いや、別に』

『へっ……ケロ』

『嫌いではないが、取り立てて好きというわけでもないが』

『じゃ、じゃあ…カ、カエルがお好きなのですか…ケロ』

『…いや、別に』

『へっ……ケロ』

『嫌いではないが、取り立てて好きというわけでもないが』

 一体これはどういうことだろうか。
 ことごとく予想と異なる返事なのだが。
 あれ、あれれと頭の中をはてなマークが飛び始める。

『あぁ、だが子宝に恵まれなかった母の前に一匹のカエルが現れ、オレを宿すことを告げたらしいのでカエルとは妙な縁はあるかもな』

 と聞かされても、やはり何かが違うような気がする。

『あの、あの…カエルのぬいぐるみが好きなのではないのですか…ケロ』

『あぁ…そういうことか』

 心情を察した相手がふふっと笑い声を上げた。
 両脇に手を入れられてひょいと持ち上げられる。
 身体を上へとずらされ、視線を同じ高さに合わせられた。

『ヘケロに会った日はオレも眠れなかったよ。
 厳密に言えば、会った日以来、ほとんど眠れていなかったがな』

 と横たわったままの状態で寝具に肘をついて頬杖をした美貌が微笑んだ。

『自分でもこうなったら腹をくくらないとなって思ったよ。
 カエルのぬいぐるみが己の性的嗜好なのだと。
 だが――』

 そっと大きな手を頬に置かれた。

『遠目ではわからなかったことが目の前にして視えた』

 吸いこまれそうな美しい金色の眼差しでまるで水底でも覗くかのように見つめられる。

『そう…本当の瞳の色は瑠璃の宝石のように青い』

『!!』

『そうだろ?』

 言い当てられて大きく息をのんだ。
 なぜ、それがわかったのか。

『ヘケロは自分のことをカエルもどきなのですとしか言わないが、それはつまり詳しく言いたくないというよりは明かしてしまうと不利益を被る可能性を踏まえているからだ。
 呪いの一般的な理論セオリーを考慮しているとオレは推測している』

(すごい…)

 そうだ、全くその通りなのだ。
 今までだって呪いをかけられてカエルの姿にさせられたとしか誰にも伝えていないのだ。
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