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3章:捕まっちゃいました~呪われたオメガの王さまmeetsカエルの王さま~
王さまに抱かれたい…
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「まず摘み取った新芽を蒸気で蒸して、重ならないように広げて扇ぐことで熱を冷ます。
次に熾した炭とわらの入った焙炉の上に助炭と呼ばれる作業場を作り、乾燥を促すようにそこで両手で手揉みをする。
それも一時間半近くもだ。
その後も葉を大きく転がしたり、絡み合って塊になった茶葉を丁寧にほぐしたり、一度他の入れ物へと移して冷まして、全体の水分を均一にしたりと。
で再度、助炭に戻して両手で揉んだりと。
そうだ、香味をよくするために台の上に擦り付けてもいたな。
そして最後に板で茶葉をより丸く細くする…楽しかったが、実に大変な作業だった」
「おっしゃる通りです…ケロ」
「はい、どうぞ」
作業工程を思い起こしながら最後の一滴まで注いだ相手が茶器を差し出してくる。
「あ、ありがとうございます…ケロ」
「では頂こうか」
「はい…ケロ」
同時に持ち上げて口に含むとフフッと互いに笑みを交わす。
「最高に美味いな」
「はい…ケロ」
と頷きあった。
新茶もあるのだろうが、やはり自分たちで力を合わせて作ったせいだろうか。
今までで一番の味わいに目元がほころんでしまう。
「工程を簡易化できないかとも考えたが、あの手間がまたこの味に繋がっているんだろうな」
「おっしゃる通りです…ケロ」
そう応じながら深く堪能している様子をチラリと窺う。
(きれいだなぁ…)
見た目だけでなく心根も美しい存在なのだ。
いやな顔一つせずに村民と一緒に笑い合って。
偉ぶることもなく、素直に教わり、相手の視点にたって会話をし、率先して茶揉みもしていた。
こんな人が世の中にいるなんて。
真の人格者なのだ、かつての自分なんかとは格が違う。
「もちろんもう一杯、飲むよな?」
「はい、頂きたいです…ケロ」
「任せてくれ」
笑顔で立ち上がって湯を入れにいった背中に視線を送る。
(ほんとに信じられないなぁ…)
まさに言うなれば雲の上の存在だ。
その別世界の住人がなぜ自分なんかに全面的な好意を寄せてくれているのか。
実は夢でも見ているのではないかと疑ってしまう。
けれども――
(嬉しい…嬉しいなぁ…)
不釣り合いだとわかっていても心が躍る。
共に過ごす時間が長くなればなるほど、どんどんと惹かれていって。
呪われた身にも思いも寄らない僥倖があるもんだと噛みしめてしまう。
じわっと目頭が熱くなって、ムクムクと心の片隅で頭をもたげ始めるのは王さまに好かれたいという願望だ。
(抱かれたいなぁ…)
ふわっと頭に浮かんだ言葉にハッと我を取り戻した。
一体なんてことを考えているのか。
ブンブンと大きな頭を振る。
好かれたいはいいとしても抱かれたいだなんてとんでもない。
(落ち着け…落ち着け…)
と腹の小袋の中に手を入れた。
ギュッと懐中時計の一つを握りしめる。
(ど、どうして…)
この六年近く性欲なんて皆無だったはずなのに。
これぞ呪われたオメガの美貌王と名高い相手の持てる力なのだろうか。
いや、けれどもよくよく振り返れば自分はアルファだったのだ。
カエルの着ぐるみになった身ではもはや関係ないことなのかもしれないが。
(王さまに抱かれたい…)
一度そう思い始めると意識をそらすことができない。
なぜだか衝動的に「王さま、お願いですから抱いて下さい!!」と口にしてしまいそうでポケットの中で懐中時計を二つ強く掴んだ。
(な、なんだろ…この落ち着かない感じは…)
次に熾した炭とわらの入った焙炉の上に助炭と呼ばれる作業場を作り、乾燥を促すようにそこで両手で手揉みをする。
それも一時間半近くもだ。
その後も葉を大きく転がしたり、絡み合って塊になった茶葉を丁寧にほぐしたり、一度他の入れ物へと移して冷まして、全体の水分を均一にしたりと。
で再度、助炭に戻して両手で揉んだりと。
そうだ、香味をよくするために台の上に擦り付けてもいたな。
そして最後に板で茶葉をより丸く細くする…楽しかったが、実に大変な作業だった」
「おっしゃる通りです…ケロ」
「はい、どうぞ」
作業工程を思い起こしながら最後の一滴まで注いだ相手が茶器を差し出してくる。
「あ、ありがとうございます…ケロ」
「では頂こうか」
「はい…ケロ」
同時に持ち上げて口に含むとフフッと互いに笑みを交わす。
「最高に美味いな」
「はい…ケロ」
と頷きあった。
新茶もあるのだろうが、やはり自分たちで力を合わせて作ったせいだろうか。
今までで一番の味わいに目元がほころんでしまう。
「工程を簡易化できないかとも考えたが、あの手間がまたこの味に繋がっているんだろうな」
「おっしゃる通りです…ケロ」
そう応じながら深く堪能している様子をチラリと窺う。
(きれいだなぁ…)
見た目だけでなく心根も美しい存在なのだ。
いやな顔一つせずに村民と一緒に笑い合って。
偉ぶることもなく、素直に教わり、相手の視点にたって会話をし、率先して茶揉みもしていた。
こんな人が世の中にいるなんて。
真の人格者なのだ、かつての自分なんかとは格が違う。
「もちろんもう一杯、飲むよな?」
「はい、頂きたいです…ケロ」
「任せてくれ」
笑顔で立ち上がって湯を入れにいった背中に視線を送る。
(ほんとに信じられないなぁ…)
まさに言うなれば雲の上の存在だ。
その別世界の住人がなぜ自分なんかに全面的な好意を寄せてくれているのか。
実は夢でも見ているのではないかと疑ってしまう。
けれども――
(嬉しい…嬉しいなぁ…)
不釣り合いだとわかっていても心が躍る。
共に過ごす時間が長くなればなるほど、どんどんと惹かれていって。
呪われた身にも思いも寄らない僥倖があるもんだと噛みしめてしまう。
じわっと目頭が熱くなって、ムクムクと心の片隅で頭をもたげ始めるのは王さまに好かれたいという願望だ。
(抱かれたいなぁ…)
ふわっと頭に浮かんだ言葉にハッと我を取り戻した。
一体なんてことを考えているのか。
ブンブンと大きな頭を振る。
好かれたいはいいとしても抱かれたいだなんてとんでもない。
(落ち着け…落ち着け…)
と腹の小袋の中に手を入れた。
ギュッと懐中時計の一つを握りしめる。
(ど、どうして…)
この六年近く性欲なんて皆無だったはずなのに。
これぞ呪われたオメガの美貌王と名高い相手の持てる力なのだろうか。
いや、けれどもよくよく振り返れば自分はアルファだったのだ。
カエルの着ぐるみになった身ではもはや関係ないことなのかもしれないが。
(王さまに抱かれたい…)
一度そう思い始めると意識をそらすことができない。
なぜだか衝動的に「王さま、お願いですから抱いて下さい!!」と口にしてしまいそうでポケットの中で懐中時計を二つ強く掴んだ。
(な、なんだろ…この落ち着かない感じは…)
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