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3章:捕まっちゃいました~呪われたオメガの王さまmeetsカエルの王さま~
甘噛みをさせて
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「ヘケロ」
大きな手で肩を掴まれてビクッと身を強張らせる。
「大丈夫だから。
懐中時計はお腹のポケットに入れてあるか?」
「は、はい、入れてあります…ケロ」
「ん、枕元にも置いてあるから心配はいらない」
「は、はい…ケロ」
「ヘケロは本当になにもかもがかわいいなぁ」
ピッタリと背中に密着されると同時にチュッ、チュッ、チュッと後頭部に口づけられて、
「あわわ…ケロロロ…」
と嬉しさよりも混乱が上回った。
「……もう一つ握っておこうか」
目にもとまらぬ素早さで懐中時計が左手に握らされる。
途端にスーッと冷たい布を被せられたかのような空気に覆われてパチパチッと目を瞬かせた。
「焦るつもりはないんだ、焦るつもりは…」
あたかも自分に言い聞かせるように口にして。
背後から手をまわした相手が右手の吸盤をぷにぷにと柔らかく摘まんでくる。
「互いにどれほど特異な存在かよくよくわかっているからな。
でも…どうだろうか…」
「っ!!…ケロ」
手を持ち上げられてチロッと赤い舌先で吸盤を舐められる。
ボンッと頬が赤くなった。
「ダ、ダメです、そ、そんなっ!!…ケロ」
「ん…そうなんだよな。
この程度のお休みのキスだけでもヘケロはとても純朴で感受性が強いから……だからどうだろうか、少しずつ慣れるために甘噛みをさせてもらえないだろうか」
「へっ……ケロ」
いま何を言われたのか。
この程度のお休みのキスが断じてこの程度ではない、そしてとても純朴とは一体、さらに感受性が強いだなんて、しかも甘噛みって――といった言葉が頭の中をグルグルと回り始める。
「はい、しっかり握って」
「は、はい…ケロ」
ギュッと大きな手に包まれて自身でも懐中時計を持った左手に力を入れた。
「つまりどういうことかというと、ほんの少し歯をあてるだけなんだ。
ただ耐性を付けるために。
心配しなくても大丈夫だ、本気噛みは絶対にしない。
求愛を受け入れてもらって身も心も結ばれる時にでないと意味がないからな。
だが、事あるごとに気を失っていてはこれから先も困るだろう?
だからオレに対してほんの少し免疫を付けると思って、ちょっとだけ歯をあてさせてもらえないだろうか」
(いや…そんな…)
その提案はものすごく理に適っているようにも、ものすごく唐突のようにも、ものすごく外堀を埋められているようにも思えるのは気のせいだろうか。
(本気噛み…は絶対にしない…って言ってるけど…)
もちろんかつてアルファだった者からすれば、噛む、噛まれるという行為がどういう意味合いを持っているかなど十分にわかっている。
相手を番にする時に首筋などにされる愛の誓いとも隷属化とも言われる儀式のようなモノだ。
「あのあのあの…ケロ」
「甘噛みだけだから、オレを信じて…な?」
そう艶っぽく囁かれても。
ものすごく甘噛みだけでも許したら最後のような気もするし、ものすごくして欲しいような気もするしで目をクルクルさせてしまう。
「オレはヘケロの嫌がることは絶対にしない…だから、ね?」
「あのあのあの…ケロ」
さらに、ものすごく戦略家のような気もするし、ものすごく大切にされているような気もするしが混乱する内部感情に加わる。
「試しにほんの少し指先だけだから…ん?」
指先に唇を付けられたまま、とろりとした蜂蜜のように甘い眼差しで請われてゴクリと嚥下した。
「でもでもでも…きゅきゅ吸盤が…きゅきゅ吸盤に…ゆゆ指先にきゅきゅ吸盤だなんて……ケロ」
混乱するあまりに意味不明な言葉が口から出た。
「大丈夫、この吸盤だからいいんだよ」
そう告げた相手にカプッと歯をあてられた。
「ンッ!!…ケロ」
大きな手で肩を掴まれてビクッと身を強張らせる。
「大丈夫だから。
懐中時計はお腹のポケットに入れてあるか?」
「は、はい、入れてあります…ケロ」
「ん、枕元にも置いてあるから心配はいらない」
「は、はい…ケロ」
「ヘケロは本当になにもかもがかわいいなぁ」
ピッタリと背中に密着されると同時にチュッ、チュッ、チュッと後頭部に口づけられて、
「あわわ…ケロロロ…」
と嬉しさよりも混乱が上回った。
「……もう一つ握っておこうか」
目にもとまらぬ素早さで懐中時計が左手に握らされる。
途端にスーッと冷たい布を被せられたかのような空気に覆われてパチパチッと目を瞬かせた。
「焦るつもりはないんだ、焦るつもりは…」
あたかも自分に言い聞かせるように口にして。
背後から手をまわした相手が右手の吸盤をぷにぷにと柔らかく摘まんでくる。
「互いにどれほど特異な存在かよくよくわかっているからな。
でも…どうだろうか…」
「っ!!…ケロ」
手を持ち上げられてチロッと赤い舌先で吸盤を舐められる。
ボンッと頬が赤くなった。
「ダ、ダメです、そ、そんなっ!!…ケロ」
「ん…そうなんだよな。
この程度のお休みのキスだけでもヘケロはとても純朴で感受性が強いから……だからどうだろうか、少しずつ慣れるために甘噛みをさせてもらえないだろうか」
「へっ……ケロ」
いま何を言われたのか。
この程度のお休みのキスが断じてこの程度ではない、そしてとても純朴とは一体、さらに感受性が強いだなんて、しかも甘噛みって――といった言葉が頭の中をグルグルと回り始める。
「はい、しっかり握って」
「は、はい…ケロ」
ギュッと大きな手に包まれて自身でも懐中時計を持った左手に力を入れた。
「つまりどういうことかというと、ほんの少し歯をあてるだけなんだ。
ただ耐性を付けるために。
心配しなくても大丈夫だ、本気噛みは絶対にしない。
求愛を受け入れてもらって身も心も結ばれる時にでないと意味がないからな。
だが、事あるごとに気を失っていてはこれから先も困るだろう?
だからオレに対してほんの少し免疫を付けると思って、ちょっとだけ歯をあてさせてもらえないだろうか」
(いや…そんな…)
その提案はものすごく理に適っているようにも、ものすごく唐突のようにも、ものすごく外堀を埋められているようにも思えるのは気のせいだろうか。
(本気噛み…は絶対にしない…って言ってるけど…)
もちろんかつてアルファだった者からすれば、噛む、噛まれるという行為がどういう意味合いを持っているかなど十分にわかっている。
相手を番にする時に首筋などにされる愛の誓いとも隷属化とも言われる儀式のようなモノだ。
「あのあのあの…ケロ」
「甘噛みだけだから、オレを信じて…な?」
そう艶っぽく囁かれても。
ものすごく甘噛みだけでも許したら最後のような気もするし、ものすごくして欲しいような気もするしで目をクルクルさせてしまう。
「オレはヘケロの嫌がることは絶対にしない…だから、ね?」
「あのあのあの…ケロ」
さらに、ものすごく戦略家のような気もするし、ものすごく大切にされているような気もするしが混乱する内部感情に加わる。
「試しにほんの少し指先だけだから…ん?」
指先に唇を付けられたまま、とろりとした蜂蜜のように甘い眼差しで請われてゴクリと嚥下した。
「でもでもでも…きゅきゅ吸盤が…きゅきゅ吸盤に…ゆゆ指先にきゅきゅ吸盤だなんて……ケロ」
混乱するあまりに意味不明な言葉が口から出た。
「大丈夫、この吸盤だからいいんだよ」
そう告げた相手にカプッと歯をあてられた。
「ンッ!!…ケロ」
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