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終章:幸せになっちゃいました

お菓子みたいな呪い

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 当初はすっとぼけていたが、どうやらヘケロから聞き取りをした際に、全くといっていいほどに思い付かなかったらしいのだ。
 ところがしばらくして自分の中での最高峰の名言をパクればいいかと閃いた。
 そこでいつぞやの、

『王子はオメガとしての幸せを得られずともそれに勝る魅力を得て、必ずや愛する者と結ばれて幸せになる』

 にあてはめようとヘケロから告げられた内容を元にアレンジを始める。

 まず最初に、
 
『見た目をまんま愛する者が現れずともそれに勝る魅力を得て、必ずや愛する者と結ばれて幸せになる』

 とブツブツ言いながら書いて、いや今回は見た目をそのまま愛する者が現れたんだとおほ?と気が付き、二重線を引いて書き損じとした。

 次に、

『ケロケロ言うことがやめられなくてもそれに勝る魅力を得て、必ずや愛する者と結ばれて幸せになる』

 とブツブツ言いながら書いて、いやケロケロの口調は別に関係なかったなぁとおほ?と気が付き、またしても二重線を引いて書き損じとした。

 さらに、

『元の人間としての幸せを得られずともそれに勝る魅力を得て、必ずや愛する者と結ばれて幸せになる』

 とブツブツ言いながら書いて、かなりいい出来だと手応えを感じた。
 ところが後から聞かれた時に、それでは自分の時ともろ同じではないかとツッコまれるという、そもそもの問題点にも気が付いた。
 そこで二重線を引いて書き損じとし、その結果、

『毒には毒を呪いには呪いをの黄金法則を経て、必ずや愛する者と結ばれて幸せになる』

 と変化を持たせた文言にした――とのことだった。
 いや、これはどう考えても迷走しすぎだろう。
 しかも魔術本に直書きしておいて書き損じ扱いってどういうことだよと呆れ果てる。
 けれども指示系統がそんな風に意味不明であったがために、着ればカエルで脱げば人間という現象となったのだから、よしとしよう。

 そう、かつてのくそみたいな呪いが役に立ち、例えるならば、おもちゃ付きのお菓子みたいな呪いの上書きとなったのだ。
 なんとも愉快で幸せなことじゃないか。
 これを災い転じて福となすというべきなのか。
 妙におかしくてフフッと笑った。


 こうして――人生の初っ端からくそみたいな呪いをかけられた王子は。
 善良たる魔法使いたちの祝福に守られ、やがて王となり、勤勉な忠臣たちに支えられ、おもちゃ付きのお菓子みたいな呪いへと変則ワザを決めた後に、唯一無二の番と幸せに暮らしたとのことです。


おしまい
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