聖騎士と眠りの魔女 ―ダブルワーク女子は抱き枕の身代わり―

uca

文字の大きさ
38 / 87
十年待ったといわれても

7.

しおりを挟む

 昼と夜で態度が違う、などと思っていたがそうではなかった。夜に甘かったのは抑えようとして抑えきれなかったということか。

――喜んでいいのか、分からない。

 望んでも得られないと思っていたものが、考えもしないかたちでそこにすでにあったということになる。

「ステラ」

 呼ばれてエステルはびくり、と肩を震わせた。

「もしかして、この名前で呼んではいけなかったか? 呼ぶたびに機嫌が悪くなるようだが」
「そ、そんなことは、――気づいておいでだったんですか?」
「ああ。いいか? ステラと呼んでも」
「ええ」

 掌にゆっくりと頬ずりされる。
 す。
 睫毛が掌を掠めた。
 不思議な気持ちだ。掌のすぐそこに、あの青く澄んだ目がある。くすぐったくて、もろく不確かでもどかしい。それが何か、つきつめたら壊れてしまいそうで怖い。
 強く逞しい目の前の男の内側へ踏み込めば、十年前と同じくもろく傷つきやすいやわらかい何かがきっとある。知りたくてたまらない。けれど、知らないことにしたい。認めたくない。かまいたがりで世話好きで、枕を偏愛する奇人かと思えば子どもにガチ恋十年の執着男に心惹かれているなんて。
 エステルの手はゆっくり目から頬、顎から首筋へと団長の肌を撫でた。その手の動きに導かれるように団長がエステルを抱く。
 目を閉じれば、部屋の何もかもが遠くなる。炎を小さく揺らめかせる暖炉、ランプ。硬いベッド。飾り気のない士官宿舎のシーツ。そして触れあうごとに近づいてくる未来、厄介ごとの数々。

――駄目。もうやめなければ。

 心と裏腹に、肌をくすぐる吐息をたよりにエステルは頬を寄せた。少し冷たくなった鼻の先が触れあう。はじめおずおずと探るように、やがて互いの肌をすりあわせるように抱き合ううち

「……」

 唇が重なった。びくりと震えたエステルの肩を大きな手が撫でる。
 ちゅ。ちゅ。
 重ねるたびに口づけが深まる。互いの服と下着が剥ぎとり、生まれたままの姿で抱き合った。ヴェーメル団長はエステルの手を取り、額に押しいただいた。いとおしげに繰り返し、額をすり寄せる。

「団長……」
「ルドだ」

 掌に口づけたままの団長――ルドと目が合う。いつも凪いで、どちらかというとひんやりとして見える青い目が炎のようだ。

「ステラ、名前を呼んでくれ」
「ルド、さま」

 唇が手首、腕、と口づけながらのぼってきた。急きたてられているかのように熱いのに、焦らすかのようにゆったりと愛撫される。
「ん、……っあ」

 肌に口づけられるたびに体の奥深くが少しずつ開く。それまで存在を知りもしなかった泉が開く。肌があぶられたように熱く、抑えようとしても腰がわななき、跳ねる。乳房に口づけられて、蜜口をぬぷぬぷと広げられ、体の至るところがずくずくとしたうずきに支配される。

「きみが好きだ。十年、待った。……ああ、やっと」

 ず、ぬぬ、ぬ。
 熱く硬い塊が秘所をゆっくりと貫いた。
 今まで毎日抱き合って眠っていても、それ以上のことはなかった。これからもそうなのだと思いこんでいた。痛みはある。違和感もある。でも、心と体の奥深いところが満たされている。凪が破られてそれでもエステルは不思議に落ち着き、ルドを受け容れていた。
 まるでずっと昔から決まっていたかのようだ。

「ステラ、……っ」

 切なげにうめきルドはエステルの最奥で欲望を解き放った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。

にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします  結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。  ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。  その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。  これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。 俯瞰視点あり。 仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

渡りの乙女は王弟の愛に囚われる

猫屋ちゃき
恋愛
現代日本から異世界へと転移した紗也。 その世界は別の世界からやってくる人や物を〝渡り〟と呼んで大切にする。渡りの人々は五年間、国の浄化などを手伝うことと引き換えに大切に扱われる。 十五歳のときに転移した紗也はその五年間を終え、二十歳になっていた。紗也をそばで支え続けた王弟であり魔術師のローレンツは彼女が元の世界に帰ることを望んでいたが、紗也は彼のそばにいたいと願っていた。 紗也ではなくサーヤとしてこの世界で生きたい、大好きなローレンツのそばにいたい——そう思っていたのに、それを伝えると彼はがっかりした様子で…… すれ違い年の差ラブストーリー

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

処理中です...