妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした

黒木 楓

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3話 セローナ視点

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 城に呼び出されたセローナは、王の間に到着する。

 大部屋には貴族達や王子達が集まっていて、やけに楽しそうだ。

 陛下、王子達は何かを期待しているようにセローナを眺めている。

 ――今は、その期待に応える力がない。

 これもきっと姉シャロンのせいだと、セローナは苛立ちながら思い込むことにしていた。

「今日は休みだと聞いていましたけど……なにかありましたか?」

 セローナが陛下に尋ねると、真っ先に反応したのは婚約者のルゼン殿下だ。

「俺の弟アゼルが開発していた魔道具が、遂に完成したんだ!」

 そう言って……ルゼン殿下は誇らしげに、第三王子アゼル殿下を眺めている。

 アゼル殿下は16歳とは思えない小柄な体躯、少し長くて柔らかそうな金色の髪、赤色の大きな瞳。
 そして防御能力に優れた白衣の魔道具を纏っている美少年で、魔道具の作成に長けているらしい。

 どうやら王の間の人々が歓喜しているのはアゼル殿下の魔道具にありそうだけど……セローナが呼び出された理由が解らない。
 とにかく、理由を聞こうと、セローナがルゼン殿下に尋ねる。

「それはおめでとうございます……私が呼び出されたのは、その魔道具が関わっているのですか?」

 もし聖魔力が必要と言われたら、セローナは期待に応えられるか不安になってしまう。

 必死に失敗した時の言い訳を考えていると、ルゼン殿下はセローナをじっと眺めて、片手で持てるぐらい小さな四角い箱を見せてから告げる。

「安心してくれ、セローナが最近聖魔力を使い過ぎて疲れていることは知っている。今から試して欲しいのは力を確認する魔道具だから、魔力を使うこともない」

「力を確認する魔道具……ですか?」

「そうだ。冒険者ギルドで冒険者登録する時、魔力が大丈夫か確認する魔道具があるだろ? これはそれを更に精巧にした魔道具なんだ!」

 そう言ってから、ルゼン殿下がアゼル殿下の作った魔道具について、説明を始める。

 冒険者ギルドの力を計る魔道具は、一定値を超えているかどうかしか調べることができない。

 魔力が一定値を超えていれば冒険者登録できるけれど、それを更に精巧にした魔道具らしい。

 身体能力や魔力を数値に出し、その人がどの属性魔法が扱いやすいかを触れるだけで確認できる。

 アゼルが作ったという魔道具は白く四角い箱にしか見えないも、触れると上空にモニターを出して、力を数値化、魔力属性の相性を確認するらしい。

 力の数値化よりも、魔力属性の相性が発覚できるのは大きくて――これによって属性に合った魔法を鍛え、優秀な魔法士を量産することが可能だ。

 そうルゼン殿下から説明を受けるも……今のセローナは、力の数値化によって起こる最悪の事態を想定してしまう。

「これでルオドラン国は魔法大国と化すだろう……ここ数日間、城に居た魔法士や騎士隊、一部の魔法学園の者で試してみたが、一切間違いがなく力を確認することができていた!」

「そ、そうですか……あの、私が呼び出されたのは、どうしてでしょうか?」

 尋ねながらも、セローナは嫌な予感がしていると。

「そうだったな。聖女としての力を得たセローナがどれほどの強さなのか、魔力の数値を確認しておこう!」

 嫌な予感が当たって、恐怖するしかない。
 これから婚約者を自慢できると楽しそうにしているルゼン殿下を眺めて……セローナは血の気が引いていた。
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