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2章
40話
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翌日――聖堂を出て飛行艇に乗り、私達はアークス国に戻っていた。
解散して迎えの馬車に乗り、私はキャビンの中で一人になっている。
今朝の出来事を思い返して……別れ際のアスファの発言を、思わず口にしてしまう。
「リリアン様がこの国の聖女となり、レックス様が聖女の騎士になって欲しかったです」
アスファはレックス殿下に懐いていて、願望を話していた。
ゲオルグからは聖女に向いてないと言われたけど……レックス殿下が騎士として傍にいてくれるのなら、聖女になってもいいのではないかと思ってしまう。
それ程までに、聖堂での日々は有意義だった。
聖堂での日々を思い返して、私はバダムについて考える。
ロウデス教団員のバダムは改心して行動を起こさず、ロイとカレンは聖堂の試験を受けることができた。
これは推測になるけど……私が試練を受けられなかったのは、ゲームによる世界の影響を受けたのもあるのでしょう。
それでも私は聖堂内で魔法を学び、扱うことで魔力が明らかに強くなっていた。
レックス殿下も剣に魔力を纏う技を学んだから――夏休みに聖堂へ向かったのは間違いではない。
聖堂で聖魔力と聖魔法について学ぶことができたから、二学期の準備は万全だ。
「二学期に入れば……ゲームと違う出来事が、起こる可能性は高いわね」
私は呟き、二学期のことばかり考えてしまう。
バダムが私の前に現れたのは、ゲームにはなかった出来事だ。
ロウデス教も本気で私を狙ってくるだろうし、ゲーム以上に行動してくるはず。
対抗するためロイの夏休みイベントを経て、私達は返り討ちにする為の力を得ることができた。
不安になるのは仕方ないけど、全力を尽くすだけ。
――今はとにかく、残りの夏休みを満喫しよう。
私は今を全力で楽しもうと、決意することができていた。
◇◆◇
私達はアークス国に戻り、その後の夏休みも楽しく有意義だった。
楽しい日々はあっという間に過ぎていき――夏休みの最終日となっている。
夏休み最終日は、婚約者であるレックス殿下と共に過ごす約束をしていた。
行きたい場所があったから私は、レックス殿下と共に馬車に乗って屋敷を出る。
レックス殿下は私の行きたい場所ならどこでも行くと言ってくれて、目的地に到着した。
そこは、国外れの何もない場所で――海がよく見え、夏休みの最後に相応しい。
「海か……」
「意外でしたか?」
場所を聞いて驚いていたレックス殿下に、私は尋ねる。
今まで一度も来たことがないからか、頷いたレックス殿下が呟く。
「ああ。リリアンは魔力の溢れている場所や、魔法を使う場所ばかり行っていたからな」
「……そういえば、そうですね」
「海に来たのは、水の魔法を使いたいからか?」
今までの言動のせいで、海を眺めに来ても魔法を使う為だと思われているようだ。
私は首を左右に振りながら、レックス殿下に話す。
「違います……ただ、この世界の大半を占める海を、見たくなりました」
「この世界か……」
レックス殿下は理解した様子だけど、私は話を続ける。
「ロウデス教……邪神は世界を滅ぼすかもしれないと、聖堂の本に書かれていました」
聖堂の邪神について書かれた本を読み、その内容を話す。
ゲームの知識もあり、邪神を崇め復活を目論むロウデス教は必ず倒さなければならない。
私は決意を強めて、レックス殿下に本心を伝える。
「私はこの世界を守りたい――その為なら、ロウデス教と戦うつもりです」
「ああ。俺もリリアンと一緒に戦おう!」
ロウデス教の狙いは私だから、国外に出れば問題ないのかもしれない。
そう考えてしまったことがあるけど、そうなれば別の手を打つ可能性もある。
もし別の方法で邪神が復活して――それを対処できる可能性が一番ある私が国外に出ていたら、何もできず世界が終わるかもしれない。
私はアークス国でゲーム通りの日々を送り、ゲーム通りロウデス教を、邪神と共に消すつもりだ。
決意を話して――レックス殿下の発言を思い返し、私は海で試したい魔法を思いついていた。
「リリアン?」
「……少し、試してみたい魔法があります」
レックス殿下の発言を否定してしまったけど、思いついたのだから仕方がない。
私は海に向かって歩き、魔力を扱う。
水魔法の応用で水面の上に乗ることができて、海の水を生物のように操れた。
海の水が生物のように空を舞い、私は歓喜しながら叫ぶ。
「レックス殿下! 海では水魔法がここまで扱えますよ!!」
「ははっ! リリアンは凄いな!」
違いますとか言ってしまったけど、魔法を使って楽しんでいるから違わないわね。
私は魔法に夢中となって、レックス殿下も楽しそう。
最高の夏休みを送れたと実感して――明日から二学期が始まるけど、今だけは楽しんでいたい。
その後は魔法を使っての水の掛け合いをしながら、この日々を守りたいと決意を強める。
レックス殿下との日々はとても幸せで――二学期になれば、この日常が崩れるかもしれない。
「私は、この日常を守りたいです」
「ああ。俺もリリアンと同じ気持ちだ!」
レックス殿下とこの世界の海を楽しみ、この世界を体感しながら時間は過ぎていく。
そして、ゲームでは最も重要となる――激動の二学期が、始まろうとしていた。
解散して迎えの馬車に乗り、私はキャビンの中で一人になっている。
今朝の出来事を思い返して……別れ際のアスファの発言を、思わず口にしてしまう。
「リリアン様がこの国の聖女となり、レックス様が聖女の騎士になって欲しかったです」
アスファはレックス殿下に懐いていて、願望を話していた。
ゲオルグからは聖女に向いてないと言われたけど……レックス殿下が騎士として傍にいてくれるのなら、聖女になってもいいのではないかと思ってしまう。
それ程までに、聖堂での日々は有意義だった。
聖堂での日々を思い返して、私はバダムについて考える。
ロウデス教団員のバダムは改心して行動を起こさず、ロイとカレンは聖堂の試験を受けることができた。
これは推測になるけど……私が試練を受けられなかったのは、ゲームによる世界の影響を受けたのもあるのでしょう。
それでも私は聖堂内で魔法を学び、扱うことで魔力が明らかに強くなっていた。
レックス殿下も剣に魔力を纏う技を学んだから――夏休みに聖堂へ向かったのは間違いではない。
聖堂で聖魔力と聖魔法について学ぶことができたから、二学期の準備は万全だ。
「二学期に入れば……ゲームと違う出来事が、起こる可能性は高いわね」
私は呟き、二学期のことばかり考えてしまう。
バダムが私の前に現れたのは、ゲームにはなかった出来事だ。
ロウデス教も本気で私を狙ってくるだろうし、ゲーム以上に行動してくるはず。
対抗するためロイの夏休みイベントを経て、私達は返り討ちにする為の力を得ることができた。
不安になるのは仕方ないけど、全力を尽くすだけ。
――今はとにかく、残りの夏休みを満喫しよう。
私は今を全力で楽しもうと、決意することができていた。
◇◆◇
私達はアークス国に戻り、その後の夏休みも楽しく有意義だった。
楽しい日々はあっという間に過ぎていき――夏休みの最終日となっている。
夏休み最終日は、婚約者であるレックス殿下と共に過ごす約束をしていた。
行きたい場所があったから私は、レックス殿下と共に馬車に乗って屋敷を出る。
レックス殿下は私の行きたい場所ならどこでも行くと言ってくれて、目的地に到着した。
そこは、国外れの何もない場所で――海がよく見え、夏休みの最後に相応しい。
「海か……」
「意外でしたか?」
場所を聞いて驚いていたレックス殿下に、私は尋ねる。
今まで一度も来たことがないからか、頷いたレックス殿下が呟く。
「ああ。リリアンは魔力の溢れている場所や、魔法を使う場所ばかり行っていたからな」
「……そういえば、そうですね」
「海に来たのは、水の魔法を使いたいからか?」
今までの言動のせいで、海を眺めに来ても魔法を使う為だと思われているようだ。
私は首を左右に振りながら、レックス殿下に話す。
「違います……ただ、この世界の大半を占める海を、見たくなりました」
「この世界か……」
レックス殿下は理解した様子だけど、私は話を続ける。
「ロウデス教……邪神は世界を滅ぼすかもしれないと、聖堂の本に書かれていました」
聖堂の邪神について書かれた本を読み、その内容を話す。
ゲームの知識もあり、邪神を崇め復活を目論むロウデス教は必ず倒さなければならない。
私は決意を強めて、レックス殿下に本心を伝える。
「私はこの世界を守りたい――その為なら、ロウデス教と戦うつもりです」
「ああ。俺もリリアンと一緒に戦おう!」
ロウデス教の狙いは私だから、国外に出れば問題ないのかもしれない。
そう考えてしまったことがあるけど、そうなれば別の手を打つ可能性もある。
もし別の方法で邪神が復活して――それを対処できる可能性が一番ある私が国外に出ていたら、何もできず世界が終わるかもしれない。
私はアークス国でゲーム通りの日々を送り、ゲーム通りロウデス教を、邪神と共に消すつもりだ。
決意を話して――レックス殿下の発言を思い返し、私は海で試したい魔法を思いついていた。
「リリアン?」
「……少し、試してみたい魔法があります」
レックス殿下の発言を否定してしまったけど、思いついたのだから仕方がない。
私は海に向かって歩き、魔力を扱う。
水魔法の応用で水面の上に乗ることができて、海の水を生物のように操れた。
海の水が生物のように空を舞い、私は歓喜しながら叫ぶ。
「レックス殿下! 海では水魔法がここまで扱えますよ!!」
「ははっ! リリアンは凄いな!」
違いますとか言ってしまったけど、魔法を使って楽しんでいるから違わないわね。
私は魔法に夢中となって、レックス殿下も楽しそう。
最高の夏休みを送れたと実感して――明日から二学期が始まるけど、今だけは楽しんでいたい。
その後は魔法を使っての水の掛け合いをしながら、この日々を守りたいと決意を強める。
レックス殿下との日々はとても幸せで――二学期になれば、この日常が崩れるかもしれない。
「私は、この日常を守りたいです」
「ああ。俺もリリアンと同じ気持ちだ!」
レックス殿下とこの世界の海を楽しみ、この世界を体感しながら時間は過ぎていく。
そして、ゲームでは最も重要となる――激動の二学期が、始まろうとしていた。
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