悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

文字の大きさ
95 / 109
2章

76話

しおりを挟む
 魔法披露会の二日目も、一日目のように問題なく終えることができていた。
 屋敷に戻って、部屋で私は一人になって――この二日間の出来事を思い返す。
 楽しい二日間だったと確信していて、それは今まで不安だった出来事が終わっているからだ。
 
 中間試験の婚約破棄は起こらず、前夜祭で国外追放を言い渡されていない。
 レックス殿下の傍にまだいられることが嬉しいけど、遂に明日はロウデス教徒の決戦だ。
 私に異変はないけど……本当に明日はゲームと同じように、邪神が復活するのだろうか?

「調べてみたけど、異変は一切確認できてない」

 とにかく明日は邪神が目覚める最高のタイミングで、何も起きなければ諦めたと確信できる。
 前夜祭を終えてから、ゲームと違うと吹っ切れつつあって、最高の二日間だった。
 この二日間を思い返し、私は本心を呟く。

「――明日を、乗り越えたい」

 魔法披露会の最終日、そこでロウデス教との決着がつく。
 今まで魔法披露会という名前の学園祭は平和に過ぎていたけど、それはゲームでも同じだ。

「この二日が楽しかったのは、ゲーム通りでもあります」

 全てが解決して幸せな二日間を送っていた主役カレンは、最終日にトラブルに巻き込まれる。
 学園全体を巻き込んだ大惨事の犯人が自棄になった悪役令嬢リリアンだと判明して、邪神を復活させた。
 主役カレンは恋人となった人と協力することで、不完全な邪神を倒すことに成功する。
 今までゲーム通りだけど……ゲームとは違い、私はレックス殿下に婚約破棄を受けていない。

「破滅しなかったこともあって、ここ二日間は最高に幸せだった」

 何も不安に思うことがなく、私はレックス殿下に躊躇う必要がない。
 最高の二日間を思い返すと――明日が怖くなってしまう。

「ゲームも二日間は幸せに過ごしていたけど、最終日は激動だった……」

 最終日の出来事を思い返すけど、恐らく規模はゲームの時より増すはずだ。
 ゲームと違い、ロウデス教は残党を残さず全力で攻めてくる可能性が高い。
 それでも乗り越えてみせると――私は、決意を強めていた。

   ◇◆◇

 早朝――屋敷に来てくれたレックス殿下と一緒に、私は馬車に乗っている。
 披露会の準備は万全で、私はあることを考えていた。
 ロウデス教を倒すことができたなら――私は全力で、今までの集大成ともいえる魔法を披露する。
 目立つことになるだろうけれど、もう見本となっていたゲームの出来事は存在していない。

「緊張していそうだが、リリアンなら何も問題ないだろう」

 レックス殿下が声をかけて、私は頷く。
 魔法披露のことだと思っていそうだけど、今まで私は魔法で失敗したことがない。
 魔力切れにも最近なっていないし、失敗することはないと断言してくれる。

「そうですね……私は、今日を楽しむことにします」

 魔法披露会を楽しんで、万全の状態でロウデス教との決戦に臨む。
 レックス殿下が傍にいてくれて、今まで私に迫る危機は一緒に対処していた。
 そのレックス殿下がいるのだから――今日も大丈夫に違いない。
 そう確信していると、馬車はグリムラ魔法学園に到着しようとしていた。

   ◇◆◇

 私達は待ち合わせ場所の広場に集合して、私、レックス殿下、ロイ、ルート、カレンが集まっている。
 魔法披露は午後からで、一日目は一年生の一組以外のクラス代表が魔法を披露していた。
 二日目は全学年の代表が行うけど、前半は普通のクラスだ。
 そして最終日となる今日は、特待生クラスの番で……私とラギルは特別扱いをされて、最終日となっている。

「最終日ですし、今日は全員で魔法披露会を巡りませんか?」

 カレンがそう提案するのは、今日の出来事を警戒しているからだ。
 私を守る為の戦力は多い方がいいから、一昨日と昨日は二人きりにしてくれたに違いない。
 そして今日は全員で行動したいと提案して、ロイが頷く。

「そうだね。来年について話し合っておくのも悪くないと思うよ」

 ロイも賛同してくれて――最終日は私達五人で魔法披露会を楽しもうと決めていた。
 私は出し物を楽しみながらも、時間が経つにつれて不安になっていく。

 前夜祭から今まで、ロウデス教は何も仕掛けていなかった。
 それでも……ゲームの知識から、水面下で動いているのはわかっている。
 楽しみつつ怪しい場所をレックス殿下と調べたけど、怪しい点はなかった。
 私達を警戒している可能性が高くて、仕掛けるなら今日で間違いない。

「……嫌な予感がします」

 午前は楽しもうと決意していたのに、徐々に不安になっていく。
 私の隣にレックス殿下がいたから、思わず呟いてしまう。
 呟きは聞こえていたようで、レックス殿下は自信満々に返答してくれた。

「大丈夫だ。俺が必ず傍にいる」

「はい。レックス殿下が一緒なら、大丈夫だと想っております」

 私はレックス殿下の手を、震えながら握りしめる。
 そして――ロウデス教との最終決戦の時が、着実に迫っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。