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勇者の力
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翌日に4人で依頼を受けることにして、近場の突然現れるようになった数体いる動く鎧の魔物を破壊する。
Aランク依頼だけあってゴーレム並の強さをしていたけど、僕達の敵ではなかった。
草原の戦闘を終えて、僕は離れた場所にいるミナギとクロエをを眺めながら、隣にいるセラに話す。
「ミナギと同じように動ける人は、はじめて見たな」
「私もミナギさんに驚いています……クロエちゃんは魔法が使えないから、勇者より力が強かったので」
僕は魔法で攻撃していたけど、セラは何もしていないからか不安になっている。
表情から察した僕は、尋ねることにした。
「セラは回復魔法が使えるみたいだけど、いつから使えるんだ?」
「それは、その……聖女様の回復魔法を目にすると、使えるようになっていました」
それはつまり、聖女ではないのに使えるということか。
冒険者になっているのだから当然だけど、かなり異質な存在だ。
「見た魔法は使えるみたいです……攻撃魔法だけは、どうしても使えませんけどね」
「その分クロエが強いということか。姉妹で補えているのだからいいんじゃないか」
「そう、ですね……あの、もしかしたら、私が魔人に狙われるかもしれません」
聖女でないのに回復魔法を使える魔法士は異質で、魔王が魔界の脅威と考えているかもしれない。
そうなると別の魔人が再びセラの元に現れそうだから、ミナギと一緒に行動したかったということか。
「それならミナギが倒して、功績にするだけだ」
僕の発言に驚いているようだけど、空に異変が起こる。
これは前に見たことがあり、魔界から魔人バーリスがやって来たようだ。
どうせなら違う魔人が出てきて欲しかったけど、クロエに倒させるとしよう。
そうすれば僕が更に目立たなくなると考えていた時、バーリスがセラを眺めて。
「弱そうな魔法士だが、魔王様の命令は絶対だから消す必要がある……それとミナギ、ここまで早く再戦ができるとは思わなかったぞ!」
どうやら魔王の狙いは本当にセラのようで、聖女でないのに聖なる魔法が使えることが関係していそうだ。
「負けるつもりがないというのなら、彼女を狙う理由を教えて欲しいものだ」
「いいだろう……そこの女は神の加護を受けたらしい、魔王様にとって最も危惧すべき存在だ!」
冥途の土産を渡す性格だからか、バーリスは扱いやすいな。
質問の前に「負けるつもりがないというのなら」と言えば、なんでも教えてくれそうな気がする。
それにしても、セラに神の加護か。
実際にセラが受けているのかわからないけど、僕を狙わない辺り魔王の目は節穴な気がする。
魔界について色々と聞きたかったけど、それより先にクロエが行動した。
「セラを狙う魔人は、今度こそ私が倒す!」
そう叫んでいるけど、今のバーリスは前よりも遥かに強くなっている。
どうやら現れた際に僕達は別空間に送られたようで、この空間は魔界を再現できているようだ。
疑似魔界の結界を張ることで全力が出せるバーリスは、強化魔法を受けたミナギより強い。
クロエでは勝てないから、魔法により吹き飛ばされていた。
僕が咄嗟に強化魔法を使ったから致命傷は避け、ミナギがクロエを受け止める。
セラの傍に置き、ミナギは剣をバーリスに向けた。
「強くなってるみたいだけど、私の敵じゃないわ!」
敵の方が強いのにミナギが堂々としているのは、僕なら対処できると確信しているから。
実際はミナギがそう確信してくれるからこそ、強化された魔人のバーリスでも敵ではなかった。
クロエが負傷して、それをセラが治している。
僕は現状をどうするべきか考え、クロエ達の前に立つことにした。
前回の戦いでの発言を覚えているようで、バーリスは僕を侮りながら尋ねる。
「勇者の力がなければ脆弱な魔法士が、我の攻撃を防げると思っているのか?」
「ミナギに勝つため疑似魔界にする空間魔法が使われているけど、それでも侮っている」
そう言い、僕はバーリスの背後に楽屋魔法による渦を発生させる。
別空間に送り込むのが狙いではなく、魔力で作られた空間を魔力で壊すためだ。
空間魔法で作られた空間は、それ以上の魔力を持つ空間魔法を使うと壊れる。
恐らく魔王が使っていた空間魔法は消滅して、僕の魔法で作られた渦がバレていない。
誰も見えない場所に発生させたからそれを消せば、ミナギの力によるものと思うはずだ。
「これが勇者の力よ!」
実際はミナギには何が起きたのかわかっていないけど、僕の発言に合わせてくれる。
それでも魔王の力を得ているのかバーリスの方が強いようで、次の手を打つことにした。
隠蔽魔法を解除した状態で、ミナギ達を強化していく。
完全に想定外の魔力を感じ取ったのか、バーリスが取り乱した。
「待て!? 貴様の魔力はなんなんだ!?」
「前に話しただろ。勇者の力で僕の魔力が強化されている」
「ふざけるな! そんな説明では考えられないほどの膨大な魔力だ!? 今までこれほど力を隠していたのか!?」
どうやらバーリスにはバレてしまったようだけど、それも仕方ない。
魔王の魔法は強力で、隠蔽魔法を解除しなければ壊せなかった。
本来の魔力をバーリスが知り唖然としている間に、更に余計なことを言う前に始末しよう。
「全てミナギの勇者スキルによるものだ。そして、お前を消すのはミナギではない」
「なにっ!?」
唖然としていたのは、バーリスの意識が僕とミナギにしか向いていなかったからだ。
一蹴したことで意識から消えていたクロエが、全快してバーリスの背後に迫っている。
これは本来の力を発揮した僕の強化魔法によるもので、セラを強化していたから回復力も上がっている。
裏方としてクロエとセラには結果を出して欲しかったから、ミナギには動かないようサインを送っていた。
「これが勇者の力――ということにしておこう」
バーリスが逃げる前に仕留めたクロエだけど、僕の力を把握しているのかもしれない。
これでクロエの冒険者カードにも、魔人バーリスを討伐したことが記録される。
後はクロエとセラがパーティに入ってくれれば、僕は最高の裏方に近づけそうだ。
Aランク依頼だけあってゴーレム並の強さをしていたけど、僕達の敵ではなかった。
草原の戦闘を終えて、僕は離れた場所にいるミナギとクロエをを眺めながら、隣にいるセラに話す。
「ミナギと同じように動ける人は、はじめて見たな」
「私もミナギさんに驚いています……クロエちゃんは魔法が使えないから、勇者より力が強かったので」
僕は魔法で攻撃していたけど、セラは何もしていないからか不安になっている。
表情から察した僕は、尋ねることにした。
「セラは回復魔法が使えるみたいだけど、いつから使えるんだ?」
「それは、その……聖女様の回復魔法を目にすると、使えるようになっていました」
それはつまり、聖女ではないのに使えるということか。
冒険者になっているのだから当然だけど、かなり異質な存在だ。
「見た魔法は使えるみたいです……攻撃魔法だけは、どうしても使えませんけどね」
「その分クロエが強いということか。姉妹で補えているのだからいいんじゃないか」
「そう、ですね……あの、もしかしたら、私が魔人に狙われるかもしれません」
聖女でないのに回復魔法を使える魔法士は異質で、魔王が魔界の脅威と考えているかもしれない。
そうなると別の魔人が再びセラの元に現れそうだから、ミナギと一緒に行動したかったということか。
「それならミナギが倒して、功績にするだけだ」
僕の発言に驚いているようだけど、空に異変が起こる。
これは前に見たことがあり、魔界から魔人バーリスがやって来たようだ。
どうせなら違う魔人が出てきて欲しかったけど、クロエに倒させるとしよう。
そうすれば僕が更に目立たなくなると考えていた時、バーリスがセラを眺めて。
「弱そうな魔法士だが、魔王様の命令は絶対だから消す必要がある……それとミナギ、ここまで早く再戦ができるとは思わなかったぞ!」
どうやら魔王の狙いは本当にセラのようで、聖女でないのに聖なる魔法が使えることが関係していそうだ。
「負けるつもりがないというのなら、彼女を狙う理由を教えて欲しいものだ」
「いいだろう……そこの女は神の加護を受けたらしい、魔王様にとって最も危惧すべき存在だ!」
冥途の土産を渡す性格だからか、バーリスは扱いやすいな。
質問の前に「負けるつもりがないというのなら」と言えば、なんでも教えてくれそうな気がする。
それにしても、セラに神の加護か。
実際にセラが受けているのかわからないけど、僕を狙わない辺り魔王の目は節穴な気がする。
魔界について色々と聞きたかったけど、それより先にクロエが行動した。
「セラを狙う魔人は、今度こそ私が倒す!」
そう叫んでいるけど、今のバーリスは前よりも遥かに強くなっている。
どうやら現れた際に僕達は別空間に送られたようで、この空間は魔界を再現できているようだ。
疑似魔界の結界を張ることで全力が出せるバーリスは、強化魔法を受けたミナギより強い。
クロエでは勝てないから、魔法により吹き飛ばされていた。
僕が咄嗟に強化魔法を使ったから致命傷は避け、ミナギがクロエを受け止める。
セラの傍に置き、ミナギは剣をバーリスに向けた。
「強くなってるみたいだけど、私の敵じゃないわ!」
敵の方が強いのにミナギが堂々としているのは、僕なら対処できると確信しているから。
実際はミナギがそう確信してくれるからこそ、強化された魔人のバーリスでも敵ではなかった。
クロエが負傷して、それをセラが治している。
僕は現状をどうするべきか考え、クロエ達の前に立つことにした。
前回の戦いでの発言を覚えているようで、バーリスは僕を侮りながら尋ねる。
「勇者の力がなければ脆弱な魔法士が、我の攻撃を防げると思っているのか?」
「ミナギに勝つため疑似魔界にする空間魔法が使われているけど、それでも侮っている」
そう言い、僕はバーリスの背後に楽屋魔法による渦を発生させる。
別空間に送り込むのが狙いではなく、魔力で作られた空間を魔力で壊すためだ。
空間魔法で作られた空間は、それ以上の魔力を持つ空間魔法を使うと壊れる。
恐らく魔王が使っていた空間魔法は消滅して、僕の魔法で作られた渦がバレていない。
誰も見えない場所に発生させたからそれを消せば、ミナギの力によるものと思うはずだ。
「これが勇者の力よ!」
実際はミナギには何が起きたのかわかっていないけど、僕の発言に合わせてくれる。
それでも魔王の力を得ているのかバーリスの方が強いようで、次の手を打つことにした。
隠蔽魔法を解除した状態で、ミナギ達を強化していく。
完全に想定外の魔力を感じ取ったのか、バーリスが取り乱した。
「待て!? 貴様の魔力はなんなんだ!?」
「前に話しただろ。勇者の力で僕の魔力が強化されている」
「ふざけるな! そんな説明では考えられないほどの膨大な魔力だ!? 今までこれほど力を隠していたのか!?」
どうやらバーリスにはバレてしまったようだけど、それも仕方ない。
魔王の魔法は強力で、隠蔽魔法を解除しなければ壊せなかった。
本来の魔力をバーリスが知り唖然としている間に、更に余計なことを言う前に始末しよう。
「全てミナギの勇者スキルによるものだ。そして、お前を消すのはミナギではない」
「なにっ!?」
唖然としていたのは、バーリスの意識が僕とミナギにしか向いていなかったからだ。
一蹴したことで意識から消えていたクロエが、全快してバーリスの背後に迫っている。
これは本来の力を発揮した僕の強化魔法によるもので、セラを強化していたから回復力も上がっている。
裏方としてクロエとセラには結果を出して欲しかったから、ミナギには動かないようサインを送っていた。
「これが勇者の力――ということにしておこう」
バーリスが逃げる前に仕留めたクロエだけど、僕の力を把握しているのかもしれない。
これでクロエの冒険者カードにも、魔人バーリスを討伐したことが記録される。
後はクロエとセラがパーティに入ってくれれば、僕は最高の裏方に近づけそうだ。
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