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3話
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引き留めようとしたバラド王子に対して、私は無視して部屋から出て行く。
愛せないと言うだけあり、部屋の外まで追いかけてくることはない。
もしラミカに引き留めている姿を目撃されたら、何を言われるかわからないからだ。
私は城から出ようと廊下を歩き、目の前には短い緑髪の小柄な少女が現れる。
彼女はバラド王子が愛している平民ラミカで、八重歯を見せつけるように笑顔を浮かべた。
「フロンじゃない。バラド殿下から聞いたかしら? 私が側妃になったら貴方は王妃の立場でも下僕よ」
初対面の時は敬語だったのに、次第に見下した態度になって今では下僕呼ばわりだ。
これが侯爵令嬢に対する平民の態度なのか。
最後に会ったのは半年前たけど、増長が半端ないわね。
「ラミカ様。側妃となる人がその態度はどうかと思います」
「わかってるわよ。この場には私と貴方しかいないし、他の人の前ではちゃんとするわ」
「そうですか」
「王子の婚約者である貴方と親しいから、私は側妃になれたことにするみたいね。ちゃんと覚えておきなさい!」
私が親しいからラミカを側妃にするとか、ほとんど会ってないのによく言えたものだ。
ラミカはミドアルダ国でも最強の魔法士とされているから、権力を持てば全て思い通りになると確信してそう。
「……魔法士として優秀でも、性格に難がありすぎです」
「はぁっ!? いま私のこと馬鹿にした!? フロン如きが!!」
小声が漏れてしまうとラミカは一気に激怒して、私は焦るしかない。
風魔法の達人でもあるラミカの周囲から暴風が発生し、距離があるのに私は後ろに飛ばされそうになってしまう。
沸点が低すぎるけど、魔法の性能はミドアルダ国最強の魔法士だけはある。
それでも私はバラド王子とラミカの言動に我慢の限界がきて、酷い目に合ったとしても言いたかった。
「城内でも魔法を使い脅してくる。性格に難があるのは間違いないでしょう」
「王妃の方が上と思ってそうだから、軽く痛めつけて懲らしめるだけよ!!」
理不尽な発言から手の平を見せつけ、暴風を私に向けて飛ばしてくる。
風の弾丸を受ければ私の体は吹き飛び、激痛から気を失うほどの威力がありそう。
対処するためには魔法を使うしかないけど、私の魔法は「鞭魔法」と呼ばれる微力な魔法だった。
周辺に一本の黒い鞭が発生して、それを自由自在に操れる。
自由というのは伸縮も操作も自由で、本当に鞭のようだけど欠点があった。
「使えない鞭魔法で防いでみなさいよ! 貴重な固有魔法の癖に鞭と同じ性能でしょ!!」
風の弾丸を飛ばす直前に、ラミカの叫び声が聞こえた。
魔法で作り操作できる鞭は性能が普通の鞭と同じな上に、出している間は魔力が減っていく。
そのせいで「普通の鞭を使った方がいい」という評価で、使えない固有の特殊魔法とされていた。
それでも無防備よりマシだから、私は目の前に黒い鞭を発生させる。
せめて一矢報いたい――バラドや正面で蔑んでくるラミカに対する憎しみを強めて、私は魔法で作られた鞭を意思で操作する。
いつも通り使ったのに今までとは鞭の動きが違い、暴風を弾き飛ばして左右の壁が抉れていく。
どうやらラミカは全力で風魔法を使ったようで、それを私の魔法が弾き飛ばせたようだ。
愛せないと言うだけあり、部屋の外まで追いかけてくることはない。
もしラミカに引き留めている姿を目撃されたら、何を言われるかわからないからだ。
私は城から出ようと廊下を歩き、目の前には短い緑髪の小柄な少女が現れる。
彼女はバラド王子が愛している平民ラミカで、八重歯を見せつけるように笑顔を浮かべた。
「フロンじゃない。バラド殿下から聞いたかしら? 私が側妃になったら貴方は王妃の立場でも下僕よ」
初対面の時は敬語だったのに、次第に見下した態度になって今では下僕呼ばわりだ。
これが侯爵令嬢に対する平民の態度なのか。
最後に会ったのは半年前たけど、増長が半端ないわね。
「ラミカ様。側妃となる人がその態度はどうかと思います」
「わかってるわよ。この場には私と貴方しかいないし、他の人の前ではちゃんとするわ」
「そうですか」
「王子の婚約者である貴方と親しいから、私は側妃になれたことにするみたいね。ちゃんと覚えておきなさい!」
私が親しいからラミカを側妃にするとか、ほとんど会ってないのによく言えたものだ。
ラミカはミドアルダ国でも最強の魔法士とされているから、権力を持てば全て思い通りになると確信してそう。
「……魔法士として優秀でも、性格に難がありすぎです」
「はぁっ!? いま私のこと馬鹿にした!? フロン如きが!!」
小声が漏れてしまうとラミカは一気に激怒して、私は焦るしかない。
風魔法の達人でもあるラミカの周囲から暴風が発生し、距離があるのに私は後ろに飛ばされそうになってしまう。
沸点が低すぎるけど、魔法の性能はミドアルダ国最強の魔法士だけはある。
それでも私はバラド王子とラミカの言動に我慢の限界がきて、酷い目に合ったとしても言いたかった。
「城内でも魔法を使い脅してくる。性格に難があるのは間違いないでしょう」
「王妃の方が上と思ってそうだから、軽く痛めつけて懲らしめるだけよ!!」
理不尽な発言から手の平を見せつけ、暴風を私に向けて飛ばしてくる。
風の弾丸を受ければ私の体は吹き飛び、激痛から気を失うほどの威力がありそう。
対処するためには魔法を使うしかないけど、私の魔法は「鞭魔法」と呼ばれる微力な魔法だった。
周辺に一本の黒い鞭が発生して、それを自由自在に操れる。
自由というのは伸縮も操作も自由で、本当に鞭のようだけど欠点があった。
「使えない鞭魔法で防いでみなさいよ! 貴重な固有魔法の癖に鞭と同じ性能でしょ!!」
風の弾丸を飛ばす直前に、ラミカの叫び声が聞こえた。
魔法で作り操作できる鞭は性能が普通の鞭と同じな上に、出している間は魔力が減っていく。
そのせいで「普通の鞭を使った方がいい」という評価で、使えない固有の特殊魔法とされていた。
それでも無防備よりマシだから、私は目の前に黒い鞭を発生させる。
せめて一矢報いたい――バラドや正面で蔑んでくるラミカに対する憎しみを強めて、私は魔法で作られた鞭を意思で操作する。
いつも通り使ったのに今までとは鞭の動きが違い、暴風を弾き飛ばして左右の壁が抉れていく。
どうやらラミカは全力で風魔法を使ったようで、それを私の魔法が弾き飛ばせたようだ。
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