愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓

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2話

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 バラド王子の部屋で、愛せないなら別れると私は断言する。

 婚約期間は長かったけど、バラドがラミカと出会ってからは最悪の日々だった。

 ようやく解放されそうで内心は飛び跳ねるように喜びたかったけど、この場では冷静を装う。

 発言が理解できなかったようで、バラド殿下は私を眺めながら。 

「そこまでは酷いことはしない。フロンは正妃となり、ラミカを側妃にする。お前はラミカを支えてくれればいい」

 それは別れるよりも酷い提案なのに、配慮している風に言ってきたのが信じられない。

 さっきまで睨んできたのに、宥める大人な仕草で肩をすくめたのも不愉快だ。

「意味がわからないのでもう一度尋ねますが、私を愛せないのですよね?」

「ああ。何度聞いてもそこは絶対に変わらない。それでもお前は俺の傍にいられるのだから幸せだろう」

「傍にいたくないから、別れようとしています」

 問題ばかり起こすラミカを支えるなんて、その時点で問題だらけだ。

 ここまで人を忌々しく思えることに、自分でも驚いてしまう。

 私もバラドを愛せなくなったから、別れた方がいいに決まっている。

 それなのにバラドの方は、理解できないという風に困惑していた。

「王妃になれるというのに、何が不満なんだ?」

「まず貴方が何も理解できていないことですね。王妃になれるからなんだというのですか?」

 ラミカが側妃になれば、私達の住むミドアルダ国が崩壊する可能性が高い。

 そんな未来が想像できて、今までは我慢してきたけど愛せないと断言されている。

 結婚の時が迫っていたから気持ちを明確にしたかったようだけど、それにより私も決意できた。

 発言的に私が王子の傍にいたいから、王妃になれればなんでもするとバラドは思ってそう。

 愛せないと断言しておいてこれだから、どれほど自分に魅力があるつもりなのだろうか?

 別れを告げたことで覚悟を決めた私に対し、バラドは取り乱す。

「俺の傍にいられるのだぞ! それで十分じゃないか!」

「王妃になりたくありません。婚約を解消することにします」

「ふざけたことを言うな!」

 叫ぶバラドだけど、私の行動を止めることはできない。

 それは現状から、私を王妃にしたくない勢力が多いからだ。

「私を王妃にしたくない派閥があることは知っています。婚約を解消したいと私が望めば、その派閥の方々は嬉々として行動するでしょう」

「フロンは何を言っている!? 妄想も大概にしろ!!」

 そういえばバラドは常にラミカと遊んでいたから、派閥の存在を知らないのか。

 城の内情をまったく知らないようで、それなら好都合でもある。

「妄想かどうかすぐにわかります。私がこの場を去り、お父様に報告すればいいだけです」

「それは――待ってくれ! お前には色々と助けられている! いなくなると困るかもしれない!!」

 かもしれないではなく、間違いなくバラドは困る。

 愛せないとか言っておいて未練がありそうな言動が嫌になり、私はバラドの伸ばした手を避けて距離をとった。

「さようなら。これからはラミカと幸せに暮らしてください」

 本性を知った後も、今までと同じようにラミカを愛せるだろうか?

 私は王子の部屋を出て、城からも出て行くことにした。
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