婚約者の王子が危険すぎるから、奪おうと目論んでいた妹に譲ります

黒木 楓

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18話

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 あれから飛行魔法で港に到着した私とラッセルは、宿で一泊した後に魔力船に乗って大陸を渡っていた。

 これからケルクト国に向かう……私は部屋で1人、今後のことを考えている。

「捜索することはないと思うけど、名前は変えられないから、見つかる恐れはあるわね……」

 魔法を扱う時には、頭の中で魔方陣を描く必要がある。

 自分の名前というのは重要な役割があるみたいで、他に名前があると魔方陣の質が弱まる可能性があるらしい。

 新しい名前を完全に受け入れれば大丈夫だけど、生まれてから数十年もの間、私はミレイユで生きている。

 今になって別の名前になったところで、自分がミレイユだったことは忘れられないから……名前を変えることはできなかった。

「冒険者になるつもりでいたけど……ラッセルのお陰で、冒険者にならなくてもよさそうかも」

 魔法職として優秀だった私は、もう冒険者になって生きる以外に道はないと思っていた。

 冒険者になると世界中に私個人の情報が記録されてしまうから、捜索依頼を出すだけで私が最近どの場所で依頼を受けたとかがすぐにわかる。

 そうなると……逆恨みしたフルディやマルーア家が、私の元にやってくる可能性があった。

「ラッセルには感謝するしかないわね……でも、ケルクト国に着いてから、どうするのかしら?」

 着いてから聞けばいいような気がするけど、魔力船でも1週間ぐらいかかる船旅だから、私は気になってしまう。

 隣の部屋で休んでいると言っていたから、私はラッセルの部屋まで行く。

 ノックした音的に扉はかなり薄いから、普通に喋っても声が届きそうだ。

「ラッセル、居る?」

 私が恐る恐る尋ねると、薄い扉の奥から声が聞こえる。

「居るけど……ミレイユが、俺の部屋に来るとは思わなかった」

 そう言って扉を開けて、私はラッセルの部屋に入るけど……ベッドと2人用の椅子があるだけの、私と同じ小さな部屋だ。

 椅子に座って対面して、私はラッセルに尋ねる。

「これからのことなんだけど……ケルクト国に着いたら、どうするつもりなの?」

「それは……ミレイユが落ち着いてから話そうと思っていたけど、大丈夫か?」

「えっ?」

「昨日は不安そうにしていたから、今後のことを話すべきではないと判断したけど……気になるよな」

 さっき部屋に来るとは思わなかったと言っていたのは、私が不安になっていたかららしい。

 敬語でなくなったラッセルは頷き、私の様子を見て安堵しているようだ。

 どうやらラッセルは私を心配してくれたみたいで――心配されているだなんて、今まで考えたこともなかった。

 そこに嬉しさを覚えながら……これからどうするのか、私はラッセルに尋ねようとしていた。
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