婚約者の王子が危険すぎるから、奪おうと目論んでいた妹に譲ります

黒木 楓

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32話

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 トールズ魔道具店が始まって、1カ月が経っていた。

 店が開店する前……居間でソファーに座っている私はラッセルと対面している。

 ラッセルは紙を取り出して、溜息を吐きながら。

「1ヶ月経って……後半は人が増えてきたけど赤字のままか。大赤字の予定が赤字で済んだだけ、ミレイユは凄いんだけど……」

 そう言いながらラッセルが困っている原因は、私が活躍しすぎたことにある。

「店員に金を稼がせてるクズ店主……確かに今月の稼ぎの大半はミレイユだけど、流石に酷いだろ……」

「まあまあ、気にしない方がいいわよ」

「そこは気にしないようにするとしても、一番嫌なのはミレイユ目当てのお客さんが多いことだよ……いや、もうアレは客と呼んでいいのだろうか?」

「買物をしてくれるのだから、お客さんに決まってるじゃない」

「それは、そうだけどさ……」

 結構な頻度で私の強さを尋ねてきたり、魔本の使い方を質問していた。

 結構な頻度で冒険者にならないか勧誘されているけど、どうやらラッセルとしてはそれが一番不満の様子だ。

「明日は定休日にするらしいけど、どうするの?」

 私は話を変えると、ラッセルが頷いて。

「それなんだけど……魔道具を宣伝しながら冒険者のようなことをするのなら、ダンジョンに行った方が効果が高いと思うんだよね」

 確かにトールズ魔道具店には、ダンジョン用の魔道具もあるけど。

「……意外ね」

 今までは私がモンスターを狩りに行くのを止めようとしていたけど、今回は一緒に行きたそうにしている。

 私が驚いていると、ラッセルはグッと右手を握りしめて。

「なにより……俺が活躍している所を誰かが見れば、クズ店主がクズ店主でないと証明できるはず!」

 多分、それが一番の目的のような気がする。

 そんなに私に養われていると思われるのが、ラッセルにとっては嫌なのだろうか?

「男の矜持ってやつね」
 
「そ、そうかな……とにかく、明日はダンジョンへ行こう!」

 そう言って魔道具店が開き、翌日――私とラッセルはダンジョンに向かおうとしていた。
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