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第四章:さけめの中へ
64、小部屋の結界会議(後半)
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みなみが再び席に戻り、テーブルに肘をついて、深く息を吐いた。窓の外を見れば、午後の陽光はやわらかな黄金色に変わり、遠くのビルの窓ガラスを煌めかせている。
時折通り過ぎる車の音が遠くから聞こえ、カフェの窓の向こうでは街のざわめきが続いている。けれどこの小さな部屋の中は、時間の流れがまるで止まったように静謐だった。
「呪文の言葉は、何度も繰り返してみないと、強さを増せないと思うんだ」
とみなみが声を震わせながら言った。手元の紙に書かれた文字はまだ不完全で、何度も消し書きされた跡が残っている。ペンのインクはかすれて、書き直した部分が紙に染みていた。
蒼は、テーブルに広げられた地図の一角に置かれた小さな手鏡を手に取り、静かに覗き込んだ。鏡に映る自分の顔は疲れた表情で、眉間にしわが寄っている。しかしその目は確かな決意を秘めていた。
「結界って、ただの防御じゃなくて、言葉の力で支えられてるんだ……僕たちの言葉が結界を織り成す糸なんだよな。」
叶多が声を潜めてそう呟く。彼の視線はパレードのパンフレットの隅にある、細かな模様に注がれていた。その模様は、普段は華やかで楽しい印象を与えるが、今はなぜか冷たく硬質なものに見える。
「テーマパークのあの場所、笑い声が消えたって言ったけど、あれはきっと結界の糸が切れたせいなんだ……」と叶多は言葉をつなぐ。
部屋の空気は一層ひんやりとし、みなみの背筋に鳥肌が走った。彼女は膝を抱えるように座りながらも、仲間たちの顔を見渡す。全員の目が真剣に輝いていて、心の中に浮かぶ不安と恐怖を共有しているのが伝わってきた。
「裂け目を封じるって言っても、どうやって? 本当にできるの?」
みなみの問いに、こころが静かに答えた。
「大山先生が言ってた。封印の言葉は、心を込めて唱えないと力は出せないって。だから私たちが気持ちを一つにしないと……」
その言葉に、春がゆっくりとうなずいた。彼の手には一輪の花が握られていた。花弁は繊細で薄く、夕陽を浴びてほんのりと透けている。その花の香りが小部屋の中にふわりと漂い、緊張の糸を和らげるようだった。
「花言葉は気持ちの言葉でもあるんだ。言葉には形があって、意味があって、それが力になる。だから僕たちの気持ちも込めて、封印を強くしよう。」
こころがゆっくりと立ち上がり、封印用の紐を手に取る。紐は鮮やかな赤と青の糸が複雑に絡まり、見る者に不思議な力を感じさせた。彼女の指先が紐の節を丁寧に撫でながら言う。
「この紐を裂け目に巻きつける。言葉の呪文と一緒に。私たちの声で、結界を強く縫い直すんだ。」
蒼がうなずきながら、地図の一部を指した。
「この場所は、駅の地下で人が立ち入らなくなった所。ここから封印を始めるのがいいかもしれない。」
その時、ふと部屋のドアが軽く軋んだ。子どもたちの視線が一斉にドアへ向かう。そこにはカフェの店主が静かに立っていた。彼は優しい目で見つめながら、穏やかに言った。
「皆、ずっと頑張ってるね。この店も、皆の力を信じてるよ。」
その言葉に一同がほっと胸をなでおろし、みなみが笑顔を見せた。日常の小さなぬくもりが、今この場所に確かに息づいていることを実感させられた。
「さあ、行動しよう。時間はあまりない」
とこころが口火を切り、みなみ、蒼、春、叶多も静かに立ち上がった。小部屋の明かりが五人の影を壁に映し出し、その影はひとつに溶け合っていた。
彼らの足音が木の床を軋ませ、心臓の鼓動と共に、新たな戦いの幕開けを告げていた。
外の世界は依然として喧騒に満ちている。しかし、この静かな一室で紡がれた言葉と想いは、やがて街の裂け目を縫い合わせ、希望の結界となって広がっていくだろう。
時折通り過ぎる車の音が遠くから聞こえ、カフェの窓の向こうでは街のざわめきが続いている。けれどこの小さな部屋の中は、時間の流れがまるで止まったように静謐だった。
「呪文の言葉は、何度も繰り返してみないと、強さを増せないと思うんだ」
とみなみが声を震わせながら言った。手元の紙に書かれた文字はまだ不完全で、何度も消し書きされた跡が残っている。ペンのインクはかすれて、書き直した部分が紙に染みていた。
蒼は、テーブルに広げられた地図の一角に置かれた小さな手鏡を手に取り、静かに覗き込んだ。鏡に映る自分の顔は疲れた表情で、眉間にしわが寄っている。しかしその目は確かな決意を秘めていた。
「結界って、ただの防御じゃなくて、言葉の力で支えられてるんだ……僕たちの言葉が結界を織り成す糸なんだよな。」
叶多が声を潜めてそう呟く。彼の視線はパレードのパンフレットの隅にある、細かな模様に注がれていた。その模様は、普段は華やかで楽しい印象を与えるが、今はなぜか冷たく硬質なものに見える。
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「裂け目を封じるって言っても、どうやって? 本当にできるの?」
みなみの問いに、こころが静かに答えた。
「大山先生が言ってた。封印の言葉は、心を込めて唱えないと力は出せないって。だから私たちが気持ちを一つにしないと……」
その言葉に、春がゆっくりとうなずいた。彼の手には一輪の花が握られていた。花弁は繊細で薄く、夕陽を浴びてほんのりと透けている。その花の香りが小部屋の中にふわりと漂い、緊張の糸を和らげるようだった。
「花言葉は気持ちの言葉でもあるんだ。言葉には形があって、意味があって、それが力になる。だから僕たちの気持ちも込めて、封印を強くしよう。」
こころがゆっくりと立ち上がり、封印用の紐を手に取る。紐は鮮やかな赤と青の糸が複雑に絡まり、見る者に不思議な力を感じさせた。彼女の指先が紐の節を丁寧に撫でながら言う。
「この紐を裂け目に巻きつける。言葉の呪文と一緒に。私たちの声で、結界を強く縫い直すんだ。」
蒼がうなずきながら、地図の一部を指した。
「この場所は、駅の地下で人が立ち入らなくなった所。ここから封印を始めるのがいいかもしれない。」
その時、ふと部屋のドアが軽く軋んだ。子どもたちの視線が一斉にドアへ向かう。そこにはカフェの店主が静かに立っていた。彼は優しい目で見つめながら、穏やかに言った。
「皆、ずっと頑張ってるね。この店も、皆の力を信じてるよ。」
その言葉に一同がほっと胸をなでおろし、みなみが笑顔を見せた。日常の小さなぬくもりが、今この場所に確かに息づいていることを実感させられた。
「さあ、行動しよう。時間はあまりない」
とこころが口火を切り、みなみ、蒼、春、叶多も静かに立ち上がった。小部屋の明かりが五人の影を壁に映し出し、その影はひとつに溶け合っていた。
彼らの足音が木の床を軋ませ、心臓の鼓動と共に、新たな戦いの幕開けを告げていた。
外の世界は依然として喧騒に満ちている。しかし、この静かな一室で紡がれた言葉と想いは、やがて街の裂け目を縫い合わせ、希望の結界となって広がっていくだろう。
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