恋や友情が、なくても

武内れい

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第一章:日常のさざ波

11、LINEグループと話題合わせ(前半)

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 夜の静けさが部屋に広がっている。窓の外ではポツポツと雨が降り始めて、街灯に反射して小さな光の粒が揺れている。布団にくるまりながら、ほのかはそっとスマホの画面を覗いた。

 画面の明かりが顔をほんのりと照らして、部屋の壁に貼った学校のポスターやキャラクターのシールがぼんやり見える。
 いつもなら、寝る前は読書か音楽を聞く時間だけど、今日はなんとなくLINEグループのトークを覗いてみたくなった。

 〈5年2組女子グループ〉――名前だけはちょっと特別に感じる。クラスの女子たちが毎日盛り上がっているトークルーム。ほのかはその輪の中にいるはずなのに、心のどこかで少し距離を感じていた。

 画面には、今日のドラマの話題や人気漫画のキャラクターの話で溢れている。

 〈昨日のあのシーン、泣けたよね~!〉
 〈漫画のあのキャラ、めっちゃ可愛い!〉
 〈絶対、あの展開ありえないって~!〉

 みんなのメッセージが次々と流れていく。ほのかはドラマも漫画もあまり詳しくなくて、正直、どんな話をしているのかよくわからなかった。

(私、まだ見てないし、読んでないし……)
 そう思うと、なんだか胸がぎゅっと締めつけられるような気がした。けれども、既読だけつけて返信しないのは、もっと怖かった。

 もしほのかが話に入らなかったら、みんなから仲間外れにされるんじゃないかって、不安になった。

 だから、ほのかは小さな勇気を振り絞って、スタンプをぽんと送ってみる。するとすぐに「いいね!」のスタンプが返ってくる。少しだけほっとした。

 でも、それだけじゃ足りなくて、今度は短いコメントを打ってみる。

 〈あのキャラ、たしかすごく強いんだよね?〉

 送信ボタンを押す指が少し震えた。正直、ちゃんと合っているのか自信がなかったからだ。

 数秒後、すぐに返信が来た。

 〈そうそう!めっちゃかっこいいよね!〉

 画面の向こうから明るい声が聞こえてきそうな気がした。

 ほのかは思わず、くすっと笑ってしまった。少し安心できたけど、同時に心の片隅に小さな違和感も残った。

(なんだか、私だけ画面の向こうの話に少し遅れてる気がする)

 それでも、会話に参加できる自分が嬉しくて、何度も画面を見返した。

 でもやっぱり、誰かが盛り上がっているのを見ていると、どこか遠くに置いていかれている気もして、少し寂しくなった。

 そっとスマホを置いて、布団の中で目を閉じた。

(孤独でもいい)

 そう思いたいのに、やっぱり誰かとつながっていたい気持ちが強くて、複雑な気持ちのまま眠りについた。
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