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第2章
鉱石を採取する
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マルールは落ち着きを取り戻すように大きく深呼吸をしてから口を開く。
「それで、ゴーレムの鉱石を採りたいんだったよな?」
「そうそう。腕や足についてる鉱石で充分だから、倒す必要はない。
頑張れば剣でも斬れるんだろうけど、数が多くてなー」
「採れたらここまでダッシュで戻ります。できる限り体力を消耗しないように――」
「当然だろ!こんなしょうもない行動に全力出すわけないじゃん!」
「ですよね……」
(悪かったな、しょうもない行動で)
とはいえ、なんだかんだで手伝ってくれているのだから文句は言えない。
言うつもりもないが。
「とりあえず行きましょう」
無言のまま移動し、ゴーレム達の住処に戻ってきた。眼前には彼等が擬態した岩が転がっている。
極力姿を見せないようしているようだ。
(1体ゴーレムにしたら周りも連動して擬態を解く。マルールが増えたとはいえ、このまま行ったら何も変わらないんじゃないか?)
いくら副団長でも攻撃の通りにくいゴーレム複数はキツイだろう。
立ち止まった俺を見てデュークさんが軽く肩を叩いてきた。
「あれ~?行かないの~?モトユウちゃん?」
「……………………」
考え込んでいるとマルールが大きなため息をついて俺の前に出る。
「あー!もう!じれったいな!怖気づくなよ!
ルーが攻撃してやるから何とかしろ!」
「え、いや、怖気づいてるわけじゃ――」
「ライトニングレイン!!」
俺の言い訳も聞かずにマルールは岩に雷撃を放ってしまった。すぐに地響きがして10体のゴーレムが俺達を取り囲み、腕を振るってくる。
避けれたと思ったら今度は別の個体の足がとんできた。すかさず地面に伏せる。
「おわぁッ⁉」
(怖気づいてたんじなくて作戦を練ってたんだけど⁉)
「ヒハハハッ!俺ら潰されるじゃんー」
「そんな余裕ぶっこいてる場合か!あわわッ⁉」
そう言いながらマルールが空中に逃げた。空にも逃げる選択肢があるのが羨ましい。
しかしそんな悠長なことを考えている場合ではなかった。
なぜなら避けるのに必死で誰も攻撃を仕掛けられていないからだ。
(さっきはすぐに逃げたからわからなかったけど、連携してる。
1回戻るか?)
この状況でも逃げられるとは思うが、また戻るのも面倒だしマルールに嫌味を言われるのは間違いない。
(斬りかかるしかないか……)
柄を強く握りしめたと同時にマルールが降りてきた。そして呆気なく剣を取られてしまう。
「剣借りるぞ!」
「え?は、はい……」
(取った後に言われても。それにけっこう力強いな)
スラリとした体型だが意外と鍛えているのかもしれない。
マルールを見ると攻撃を受けないように再び空中に浮かんで、
右手を剣にかざしながら呪文を唱えていた。何をしているのか見当がつかない。
「ニンゲン!ゴーレムのいない所まで走れ!」
「はい⁉」
わけがわからないまま言われたとおりにする。
ゴーレム達の猛攻を避けて開けた所に行くと、マルールが剣を投げつけてきた。
「ほらよッ!」
「わっ⁉」
どうにかキャッチした俺は愕然とする。
なんと炎がコーティングされている。
「こ、これは?」
「火魔法を剣に付与したんだ。剣が折れたら大変だろ!」
「そんなことできるの⁉」
「これぐらい常識だ!バーカ!」
(知らなかったんだから仕方がないだろ。
でも、これならいけそうだ!)
口は悪いもののサポートはしてくれたので、完全に敵と認識されていないだけマシなのかもしれない。
直線上にいる1体のゴーレムに狙いを定めて、頭の中に疑問符が浮かぶ。体に杭のようなものが突き刺さっていて、地面まで貫通していたからだ。
あれでは1歩も動けないだろう。何事かと周囲を見回すと、マルールがゴーレム達に短杖を向けていた。
(拘束魔法か。無抵抗の相手に斬りかかるのはちょっと辛いけど、動きを止めないとこっちが攻撃できないからな)
「おりゃあっ!!」
大きく振り下ろした。3分の1のところで止まってしまったが、明らかに最初に斬りつけたときと感覚が違う。
素早くゴーレムから距離を取って反撃に備えた。
(もう少し勢いがいる。でも走ってジャンプしても――そうだ!)
「デュークさん!俺を剣でうち上げてください!」
「リョーカイッ!そんなに高くなくていいんだろ?」
俺の考えが伝わったのか、デュークさんは2つ返事で答えるとダッシュで俺の側に来てくれた。正直とても嬉しい。
「はい!ゴーレムを超えるぐらいでお願いします!」
「ウェーイ!行ってきな!」
地面に沿うようにして突き出された大剣に飛び乗ると同時に空に打ちあげられる。この感覚にも少し慣れてきた。
俺の要望通り、ゴーレムより少し高い位置で止まり、落下が始まる。
(高さバッチリ!)
「でりゃああッ!!」
落下の勢いとコーティングされた炎のおかげで、ゴーレムから腕が離れた。
「斬れたっ⁉」
地面につく前に切断部分をキャッチする。渡す物なので傷がついたら価値が下がってしまうかもしれない。
まさか自分から「モトユウちゃん砲」を頼むことになるとは思っていなかったが、こうして無事に鉱石を採れたので結果オーライだ。
「戻ります!!」
炎剣を鞘に納めると宣言通りダッシュで岩場の入口まで戻る。ゴーレムの腕は俺より倍以上の大きさなので、
手の部分を引きずる事になってしまったが仕方がない。振り返るとデュークさんとマルールがこちらに向かってきているのが見えた。
やっぱりゴーレム達は追ってきていなかったが、マルールの魔法が解けていないだけなのかもしれない。
まだ炎のコーティングか残っていたので腕を持ち運べる大きさに切断し、
不要な部分は地面に埋めた。
(ここまでスムーズだったのはマルールがいたからだな。
お礼言おうっと)
「マルール……?」
なぜか怯えた目で俺を見ていた。それに少しだが震えているような気がする。
「ッ⁉と、採れてよかったな‼じゃあな‼」
お礼を言う間もなくマルールは慌てて去って行った。それに合わせて剣のコーティングも消える。
あまりの速さに呆然としているとデュークさんから声をかけられた。
「モトユウちゃーん、採れてよかったじゃん!」
「そうなんですけど……」
「ン?どーした?」
「マルールが俺を怖がってたような気がして」
そう言うとデュークさんは腕を組んで何回か首を捻ったあと、口を開く。
「怖がる?モトユウちゃんがマルールちゃんに何かするワケないもんな~。
誰かに姿を重ねたとかじゃないの?」
「だといいんですけど……」
特に変な行動はしていないはずだが、無意識の内に気にくわないことをしてしまったのかもしれない。
(ゴーレムと対峙する前までは普通だった。対峙中にしたことといえば、
デュークさんに協力してもらったぐらいで――え、まさか⁉)
俺とデュークさんが連携したことにビックリしたのだろうか。しかし思いた当たることはそれぐらいだ。
やっぱり魔族の間では連携するという考えが浮かびにくいらしい。
「モートユーウちゃーん?」
「はいー―デッ⁉」
力強く頭を掴まれる。怒っているわけではなさそうだが、少し不機嫌だ。
ニンマリと笑って顔を近づけてきた。
「ツケ、1個目な?」
「あ!!」
(ヤベッ!考え込んでた!)
ツケとは、俺がデュークさんの前で考え込むことで溜まってしまう物だ。
何個で実行に移すかわからないのが怖い。
ただ1つ言えるのは、実行されたら俺の身体が危ないということだ。トラウマになるかもしれない。
(やっちまった……。気をつけないと)
「ヒハハッ!そう落ち込むなって~。ツケって溜めるのが楽しいだろ~?」
「そ、そうですけど……」
(だめだ。イヤな予感しかしねぇ)
無邪気に笑っているデュークさんを見ているとそう思う。
さすがに1回目ではなかったが、次からは危ないだろう。
「モトユウちゃんは先に帰っときなー。俺はまだやることがあるからさー」
(あ、クリアシープの肉獲りか。あれ?俺も一緒に獲るってことになってたよな?)
冗談だと思われたのだろうか。それに肝心のマルールが帰ってしまったにもかかわらず、1人でやるつもりのようだ。
手伝いたかったのはやまやまだが、ドーワ族と交渉しないといけないので諦める。
「じゃあ、先に戻ってますね」
「おうよ~」
少し心残りだったが、デュークさんと別れると魔王城へ向かった。
「それで、ゴーレムの鉱石を採りたいんだったよな?」
「そうそう。腕や足についてる鉱石で充分だから、倒す必要はない。
頑張れば剣でも斬れるんだろうけど、数が多くてなー」
「採れたらここまでダッシュで戻ります。できる限り体力を消耗しないように――」
「当然だろ!こんなしょうもない行動に全力出すわけないじゃん!」
「ですよね……」
(悪かったな、しょうもない行動で)
とはいえ、なんだかんだで手伝ってくれているのだから文句は言えない。
言うつもりもないが。
「とりあえず行きましょう」
無言のまま移動し、ゴーレム達の住処に戻ってきた。眼前には彼等が擬態した岩が転がっている。
極力姿を見せないようしているようだ。
(1体ゴーレムにしたら周りも連動して擬態を解く。マルールが増えたとはいえ、このまま行ったら何も変わらないんじゃないか?)
いくら副団長でも攻撃の通りにくいゴーレム複数はキツイだろう。
立ち止まった俺を見てデュークさんが軽く肩を叩いてきた。
「あれ~?行かないの~?モトユウちゃん?」
「……………………」
考え込んでいるとマルールが大きなため息をついて俺の前に出る。
「あー!もう!じれったいな!怖気づくなよ!
ルーが攻撃してやるから何とかしろ!」
「え、いや、怖気づいてるわけじゃ――」
「ライトニングレイン!!」
俺の言い訳も聞かずにマルールは岩に雷撃を放ってしまった。すぐに地響きがして10体のゴーレムが俺達を取り囲み、腕を振るってくる。
避けれたと思ったら今度は別の個体の足がとんできた。すかさず地面に伏せる。
「おわぁッ⁉」
(怖気づいてたんじなくて作戦を練ってたんだけど⁉)
「ヒハハハッ!俺ら潰されるじゃんー」
「そんな余裕ぶっこいてる場合か!あわわッ⁉」
そう言いながらマルールが空中に逃げた。空にも逃げる選択肢があるのが羨ましい。
しかしそんな悠長なことを考えている場合ではなかった。
なぜなら避けるのに必死で誰も攻撃を仕掛けられていないからだ。
(さっきはすぐに逃げたからわからなかったけど、連携してる。
1回戻るか?)
この状況でも逃げられるとは思うが、また戻るのも面倒だしマルールに嫌味を言われるのは間違いない。
(斬りかかるしかないか……)
柄を強く握りしめたと同時にマルールが降りてきた。そして呆気なく剣を取られてしまう。
「剣借りるぞ!」
「え?は、はい……」
(取った後に言われても。それにけっこう力強いな)
スラリとした体型だが意外と鍛えているのかもしれない。
マルールを見ると攻撃を受けないように再び空中に浮かんで、
右手を剣にかざしながら呪文を唱えていた。何をしているのか見当がつかない。
「ニンゲン!ゴーレムのいない所まで走れ!」
「はい⁉」
わけがわからないまま言われたとおりにする。
ゴーレム達の猛攻を避けて開けた所に行くと、マルールが剣を投げつけてきた。
「ほらよッ!」
「わっ⁉」
どうにかキャッチした俺は愕然とする。
なんと炎がコーティングされている。
「こ、これは?」
「火魔法を剣に付与したんだ。剣が折れたら大変だろ!」
「そんなことできるの⁉」
「これぐらい常識だ!バーカ!」
(知らなかったんだから仕方がないだろ。
でも、これならいけそうだ!)
口は悪いもののサポートはしてくれたので、完全に敵と認識されていないだけマシなのかもしれない。
直線上にいる1体のゴーレムに狙いを定めて、頭の中に疑問符が浮かぶ。体に杭のようなものが突き刺さっていて、地面まで貫通していたからだ。
あれでは1歩も動けないだろう。何事かと周囲を見回すと、マルールがゴーレム達に短杖を向けていた。
(拘束魔法か。無抵抗の相手に斬りかかるのはちょっと辛いけど、動きを止めないとこっちが攻撃できないからな)
「おりゃあっ!!」
大きく振り下ろした。3分の1のところで止まってしまったが、明らかに最初に斬りつけたときと感覚が違う。
素早くゴーレムから距離を取って反撃に備えた。
(もう少し勢いがいる。でも走ってジャンプしても――そうだ!)
「デュークさん!俺を剣でうち上げてください!」
「リョーカイッ!そんなに高くなくていいんだろ?」
俺の考えが伝わったのか、デュークさんは2つ返事で答えるとダッシュで俺の側に来てくれた。正直とても嬉しい。
「はい!ゴーレムを超えるぐらいでお願いします!」
「ウェーイ!行ってきな!」
地面に沿うようにして突き出された大剣に飛び乗ると同時に空に打ちあげられる。この感覚にも少し慣れてきた。
俺の要望通り、ゴーレムより少し高い位置で止まり、落下が始まる。
(高さバッチリ!)
「でりゃああッ!!」
落下の勢いとコーティングされた炎のおかげで、ゴーレムから腕が離れた。
「斬れたっ⁉」
地面につく前に切断部分をキャッチする。渡す物なので傷がついたら価値が下がってしまうかもしれない。
まさか自分から「モトユウちゃん砲」を頼むことになるとは思っていなかったが、こうして無事に鉱石を採れたので結果オーライだ。
「戻ります!!」
炎剣を鞘に納めると宣言通りダッシュで岩場の入口まで戻る。ゴーレムの腕は俺より倍以上の大きさなので、
手の部分を引きずる事になってしまったが仕方がない。振り返るとデュークさんとマルールがこちらに向かってきているのが見えた。
やっぱりゴーレム達は追ってきていなかったが、マルールの魔法が解けていないだけなのかもしれない。
まだ炎のコーティングか残っていたので腕を持ち運べる大きさに切断し、
不要な部分は地面に埋めた。
(ここまでスムーズだったのはマルールがいたからだな。
お礼言おうっと)
「マルール……?」
なぜか怯えた目で俺を見ていた。それに少しだが震えているような気がする。
「ッ⁉と、採れてよかったな‼じゃあな‼」
お礼を言う間もなくマルールは慌てて去って行った。それに合わせて剣のコーティングも消える。
あまりの速さに呆然としているとデュークさんから声をかけられた。
「モトユウちゃーん、採れてよかったじゃん!」
「そうなんですけど……」
「ン?どーした?」
「マルールが俺を怖がってたような気がして」
そう言うとデュークさんは腕を組んで何回か首を捻ったあと、口を開く。
「怖がる?モトユウちゃんがマルールちゃんに何かするワケないもんな~。
誰かに姿を重ねたとかじゃないの?」
「だといいんですけど……」
特に変な行動はしていないはずだが、無意識の内に気にくわないことをしてしまったのかもしれない。
(ゴーレムと対峙する前までは普通だった。対峙中にしたことといえば、
デュークさんに協力してもらったぐらいで――え、まさか⁉)
俺とデュークさんが連携したことにビックリしたのだろうか。しかし思いた当たることはそれぐらいだ。
やっぱり魔族の間では連携するという考えが浮かびにくいらしい。
「モートユーウちゃーん?」
「はいー―デッ⁉」
力強く頭を掴まれる。怒っているわけではなさそうだが、少し不機嫌だ。
ニンマリと笑って顔を近づけてきた。
「ツケ、1個目な?」
「あ!!」
(ヤベッ!考え込んでた!)
ツケとは、俺がデュークさんの前で考え込むことで溜まってしまう物だ。
何個で実行に移すかわからないのが怖い。
ただ1つ言えるのは、実行されたら俺の身体が危ないということだ。トラウマになるかもしれない。
(やっちまった……。気をつけないと)
「ヒハハッ!そう落ち込むなって~。ツケって溜めるのが楽しいだろ~?」
「そ、そうですけど……」
(だめだ。イヤな予感しかしねぇ)
無邪気に笑っているデュークさんを見ているとそう思う。
さすがに1回目ではなかったが、次からは危ないだろう。
「モトユウちゃんは先に帰っときなー。俺はまだやることがあるからさー」
(あ、クリアシープの肉獲りか。あれ?俺も一緒に獲るってことになってたよな?)
冗談だと思われたのだろうか。それに肝心のマルールが帰ってしまったにもかかわらず、1人でやるつもりのようだ。
手伝いたかったのはやまやまだが、ドーワ族と交渉しないといけないので諦める。
「じゃあ、先に戻ってますね」
「おうよ~」
少し心残りだったが、デュークさんと別れると魔王城へ向かった。
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