無自覚少女は夢をあきらめない 〜鏡を見ろ? 何を言われても魔王を目指して頑張ります!〜

ナナカ

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五章 十四歳の再会

(28)結界魔法

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 ところで、メリアンさんに教えてもらう結界魔法というものは、効果の大きさの割りに地味な魔法だ。だから魔法を使える人材が集まっている都でも、結界魔法を極めた人物はほとんどいないらしい。
 つまり、結界魔法だけでいうと、スラグさんとメリアンさんは頂点クラスの実力者になる。
 もちろん、宮廷魔法使いともなると、国の守りとしてかなり強力な結界は張れると言うけれど、魔獣を完全に封鎖してしまうような綿密なものは難しいのではないか、というのがメリアンさんの見解だ。

 それを聞いて、私はなるほどと納得した。都の外壁は、王国の中心都市と言うには緩めに感じたのは間違いなかったようだ。
 だから、あのおかしなカラスが自由に出入りできるのだろう。あのカラスは絶対にあやしいのに、どうして簡単に出入りしたのか不思議だった。でも知ってしまえば、事実は意外に単純だ。

 そういう超絶技巧派なメリアンさんが、私に基礎の基礎から結界魔法を叩き込んでくれた。
 もともと私は、結界のほころびを見つけて、抜け出したり入り込んだりするのは得意だ。ヘイン兄さんにそのことを言った時は、お前の将来が心配だとか何とかブツブツ言われたものだ。
 でもすり抜けるのは得意でも、結界を張る方はそう簡単にはいかない。初めて自分で結界を作れて感動したけれど、どんなに頑張ってもすぐに破れる薄紙くらいのものがやっとで、その上とても効率が悪かった。

 それでも慣れてくると、細やかなレース編みのような魔法もこなせるようになってきた。習い始めて半年も経つと、魔獣の運動場を囲む大きさの結界の張替えができるようになり、仕事として任せられるようになった。
 スラグさんは、いい人手を拾ったとご機嫌だった。これはたぶん、誇っていいのだと思う。給料もその分跳ね上がった。はっきり言ってびっくりするくらいだ。手渡された給料袋は笑ってしまうほど重かった。

 でも……田舎育ちの私には、ここまでくると現実味がなくなる。
 だから、ヘイン兄さんに自慢してみたいと思うようになった。兄さんなら、私の一月の給料がどのくらい多いのか、何がどれくらい買えるのか、と私にも理解できるように教えてくれるだろう。
 でも私は家出中の身だ。衝動的に何度か手紙を書きかけたけれど、それを破り捨てて我慢した。
 兄さんは私の家出を黙認してくれている。ナイローグにも行き先などは内緒にしてもらっているはずだ。でも昔から兄さんとナイローグは仲がいい。何から情報が漏れるかわからないし、ヘイン兄さんを知り尽くす彼なら、兄さんの言葉の欠片から真実を簡単に導き出しそうな気がする。だから、ヘイン兄さんを信用していても近況報告はできない。我慢だ。

 一人寂しく悦に入るしかない私は、誰かに自慢できない腹いせに、ますます結界魔法に熱中した。
 でも、結界魔法を実際に使っていて気がついた。この魔法は応用がきく。気配を消したりしてこっそり後をつけることも、身体の周りに隠遁の結界を張るだけだから簡単なのだ。
 これは非常に使える。
 もっと効率のいい隠遁魔法があるのかもしれないけれど、まずは応用結界魔法で十分だ。なぜ他の人は結界魔法をもっと習得しないのだろう。メリアンさんにそう聞くと、最近の流行りではないから、らしい。
 納得していないけれど、魔族が闊歩していた暗黒の時代は遠くなっているから、そんなものなのかもしれない。
 重要なのは、他にすごい使い手がいないってことだ。
 つまり、敵はほぼいないに等しい!
 
 ついでにいえば、魔獣監視用に透視魔法というものも習った。
 言うまでもなく離れた場所を見るための魔法で、これを使えば飼育所に居ながら都の外壁の内部のことも見ることができる。心が痛んだけれど、それを悪用してちょっと後ろ暗そうな場所も眺めてみた。その下見を元に、休日に都に行ったりしているうちに、王立魔道学院にたどり着いた。偽装身分証明書の存在も知った。
 どうやら意外に外部者が入り込める場所のようだ。
 そうと知ったら、行動あるのみ。
 まず、都の外壁内に住む場所を探し、そこから飼育場まで通う生活を始めた。
 メリアンさんはとても心配してくれて、私の年齢の出稼ぎなら絶対に借りれないような、非常にしっかりした場所に部屋を探してくれた。スラグさんとメリアンさんの紹介は効果絶大だ。
 それから、魔獣と戯れていた休みの時間を魔道学院のための時間に変え、怪しげな学生や不審な業者の後をつけて偽装身分証明書も手に入れた。
 お金はかかったけれど、魔獣飼育の仕事ならすぐに取り戻せる。
 そしてドキドキしながら魔道学院に足を踏み入れて……肩透かしするほど簡単で偽りだらけの二重生活は、あっという間に過ぎて行った。
 
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