無自覚少女は夢をあきらめない 〜鏡を見ろ? 何を言われても魔王を目指して頑張ります!〜

ナナカ

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七章 十六歳の前にそびえる壁

(38)大人の世界の現実

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 魔法を自在に操れるようになれば、自動的に売れっ子魔法使いになる。
 ……そう信じて、希望に胸を膨らませていた時期もあった。
 でもそれがただの幻想だったことを知るのに、それほど時間は必要なかった。大人の世界の現実は、浮かれた若者に厳しいらしい。
 目の前にそびえる巨大な門は堅固な守りの象徴だけれど、今の私にとっては超えなければいけない関門だ。だから閉まりかける門に取り付いて、必死でアピールを続けた。

「ちょっとだけでいいんです! お願いですから話を聞いてください! 私はこんな結界を作ることができるんです! 無敵の結界ですよ!」
「あー、すごいのかもしれんけどな、残念ながら俺にはわかんねぇよ。ま、あと五年経ってもまだ気が変わらなかったらまた来てみろ。あんたは美人だから、魔法とは無縁の意味でなら仲間に入れてもらえるぜ」

 人相が悪いわりに親切な門番は、私が手を挟んだりしないよう気を使いながら、でも容赦なく門を閉めてしまった。
 この門は悪人たちの根城の入り口だ。放置されていた古い城を勝手に改修したもので、往時の堅牢さには及ばないものの、普通の地元の警備隊とか賞金目当ての傭兵とか、そういうレベルでは歯が立たない程度には堅固な作りになっている。
 そして頭領格の男は、ただの悪人で収まる器量ではなかった。豪快さと気風のよさに引き寄せられて、どんどん悪人が集まっている。それに南方で一年近く続いていた戦争が完全に終わったから、この辺りも傭兵崩れも増えてきた。
 この古城もいつしか悪人集団の一大拠点になってしまい、近隣の住民たちは、火の粉が自分たちにかからないことを祈りながら息を潜めるしかない。そして憂さを飲み込み、この根城の悪人どもに酒や食料を売り渡していた。
 でも大きくなりつつある悪人集団には、一つ重大な欠陥があった。
 私はそこを補う方策を示しにここにきた、はずだったのだけれど、いまだに門前払いを受けていた。

「おじさん! 話を聞いてよ! と言うか、五年後なんて私は二十一歳の行き遅れじゃないか!」

 私は門に向かって叫んだ。
 鋲をびっしり打った門は、ぴくりとも動かない。
 本当は蹴りつけたかったが、鉄製の鋲があるからそれはあきらめた。
 それに、今の私は昔のような気軽な男装ではない。十六歳という成人の年齢にふさわしい長いスカートをはいている。その長いスカートを持ち上げて素足をさらす行為は、年頃の娘としていかがなものかと考える理性もある。
 ただの苦情に、大人としての外面をかけるほどではない。
 一応、私も成長したのだ。
 十六歳というのはそういう年齢で、もう大人と同じ仕事をしてもいいはずだ。
 なのに、この門前払いはひどい。

「話くらい聞いてくれてもいいじゃないか! 門番のおじさん!」

 妙齢の娘にしてはやや不本意ながら、私が大きな声で訴えると、門の上の方から見慣れた門番が顔を出してきた。いかつい顔は呆れ一色だ。

「あのなぁ、俺はあんたのためを思って追い返しているんだぜ。あんたは若すぎるし、そもそも美人すぎるんだよ。ここには娼婦は常駐しているけど、子供相手でも盛る変態だっているんだ。あんたぐらい美人だったら、なおさらだ。だからな、さっさと平和な街に戻ってしまいな」
「だから! 私は魔法使いなんです! 本気になったらこの門だって吹き飛ばせるんですよ! 私が味方になったら、ここはもっと堅固になるんです。超級の魔法使いに攻められても平然とできるくらいにはなりますから! それに、私は子供じゃないですよ!」
「子供じゃないならもっとだめだよ、お嬢ちゃん。おとなしくお家に帰って、しっかりお袋さんの手伝いをするんだ。せっかく美人なんだから、いい旦那を捕まえなよ」

 門番はそう言って、顔を引っ込めた。
 あとは、何を叫んでも反応を返してくれない。私はしばらく門前でがんばった。母さんに村を出ることを反対された時と同じくらいに頑張った。でも門番のおじさんはやっぱり顔を見せてくれなくて、結局私は、疲れ果てたまま撤退するしかなかった。

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