平成生まれの昭和人

塩爺

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 第 3話 進み始めた計画

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彼女の存在はこの計画を実行するうえでとても大きかった、普通ならばチャオハイ氏が主導権を取るはずが、愛東が立案した計画の見事さに口出し出来ずただ頷くだけだった。

愛東が立案した計画の概要はこうだ、まず御手洗の資金で傭兵部隊を雇い、I国の国軍を装って軍事クーデターを起こしその様子を世界中にSNSで配信、世論の傾きを見つつチャオハイがI国の国民に軍事クーデターを阻止すると言う名目でデモを拡大、そのままデモ隊により軍事政権を打破し民主化すると言うシナリオである。

しかし、ここでひとつの問題が浮かび上がる、民主化した後の政権代表を誰にするのかという事だ。

順当にゆけばチャオハイが代表になるのが筋なのだろうが、チャオハイでは名前が知られすぎていて今回の政権打倒が隣国のF国によるものという印象を世界に与えかねないだろうと愛東が主張し、チャオハイ本人もこれ以上目立ちたくないのか、その意見に納得して新たな代表選びが始まった。

まず名前が上がったのがI国の活動家、ホイコーミ氏である彼女はI国 国内でそこそこ名前が売れており、なにより理想に向かって進むだけの力を持っていた。

彼女の名前を挙げたのは御手洗である、彼は過去にある現場で彼女と一つの問題を解決した事で彼女の人間性を高く評価していた。

その問題とは人種差別からなる労働者どうしの傷害事件とストライキ問題だ。

周囲からは同国側に付くと思われたホイコーミ氏だが一貫して中立を貫いて、瞬く内にストライキを解決し傷害事件を起こした当事者達に自ら名乗りを挙げさせるという手際の良さを見せ一緒に問題解決に当たっていた御手洗に絶対の信頼を与えたのが今回の推薦理由だ。

その意見に反対する者はなく、ホイコーミ氏の承諾を得ぬまま全員の一致で民主化したI国の代表は彼女とすることに決定した。

彼女への説明と説得は御手洗に任せ新海にはもうひとつ大きな仕事があった、それは偽の国軍となりえる傭兵部隊の選出だ。

新海にはまったく未知の分野なので愛東に任せきりだったのだが、最終選出には立ち会ってもらいたいと言うことで愛東と2人である施設に向かった。

その施設は外見はなんてことはないスポーツジムで、誰もここが傭兵部隊と関係があるとは思わないだろう。

実際、このスポーツジムの関係者は傭兵とは無関係で、仮に調査機関の捜査が入って調べてもこのスポーツジムから傭兵部隊の痕跡を見つけることはできない。

傭兵部隊はなんらかの方法でこの日の為にこのスポーツジムを利用したのだろう。

新海は思った、各国をまたにかけて活動する傭兵部隊ならば当たり前なのだろう。

面識の有る愛東ならばいざ知らず初対面の新海を、いくら愛東が同行しているとはいえ傭兵部隊の本拠地に案内するなどというミスを冒す部隊は信用できなかった。

階段を登ったところのストレッチルームで何重かのチェックを受けその先の事務所で傭兵の代表者と会った。

代表者と名乗るその男の横には各隊の隊長だと言う3人の男達が並んでおり、全員が覆面を着けて素顔はわからない。

しかし、その体に纏ったオーラは彼等が只者ではないことを物語っていた。

新海は思った、今日の選出面会は新海側が彼等を選ぶ場ではなく、彼等に新海達が信用に値する人物かを判断させる場だと。

新海は今まで見てきた事、やらなければならない事、やる為には何が必要かを正直な気持ちと言葉で語った。

数々の修羅場を潜ってきた傭兵達にしてみれば新海の言葉は幼な子の戯言に聴こえるだろう、しかし、新海が話し終わった時、3人の男は覆面を取って、それぞれの自己紹介を始めた。

向かって右側の男からミシェル、マーク、ドナルド、もちろん偽名なのだろうが、仮に本名だとしてもこの世界のどこにも彼等の戸籍は存在しない。

ミシェルは情報部隊、マークは実行部隊、ドナルドは輸送部隊を率いて今回の作戦に当たる計画になった。

愛東はこの傭兵部隊に決まる事をすでに予想していた様で、作戦の細部に至るまで事前に傭兵部隊と打ち合わせしていた為、新海は最終確認を短時間した後、今後は計画の実行までお互いに連絡を取らないことを確認し新海と愛東はこの場所を後にした。







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