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第 4話 誤算
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決行の朝、いつもの様にモニターを監視していたミシェルは微かな異変を感じていた。
情報担当ということもあり、まわりの動きには敏感なのだが、この日はI国国民の動きが静か過ぎるのだ、いつもの週末ならば朝のこの時間帯、動き出す筈の人の流れが一部の地域でまったく無い。
ミシェルはマークとドナルドに警戒するように伝わると、その原因を探り始める。
原因は直ぐ判明した、人の動きが無い地域で小規模ではあるが、本物のI国の軍隊が行動を起こしている形跡が確認された。
こちら側でも偽クーデターにリアリティをだす為にI国軍の一部を買収して、こちらの動きに合わせて行動する手筈になっていたが計画とは違う地域での動きにミシェルは計画が失敗したと判断し本部に決行の中止を伝えた。
新海達が計画の失敗を知ったのはI国の隣国、F国のホテルの一室だった。
今回の計画が実行されクーデターが発生すれば、テレビやラジオで臨時ニュースが流れるはずである。
それを合図にこの模様を全世界にSNSで発信する為、この部屋に機材を持ち込んで待機していた。
そんな中、思わぬ時間にそのニュースは流れてきた。
「臨時ニュースをお伝えします!」
「隣国のI国で軍事クーデターが発生した模様、詳細はまだ判っておりませんが、一部の軍隊と国軍との間で交戦中との情報もあり、I国の地方都市(テラハ)では煙が上がっているとの目撃情報もあります。」
興奮ぎみにテレビのアナウンサーは伝えている。
そのニュースを見て新海達は慌てた様に席を立ち、テレビの前に駆け寄った。
新海達の計画通り発生したクーデター、しかし、発生した時刻が問題である。
新海達の計画では映像の視覚的効果を狙って夕刻近くを狙って発生の時刻と定めていた。
それが昼のニュースで報じられる筈は無い!
何か想定外の事態が起きている、新海達に緊張が走った。
最初に動いたのは愛東で確かめてくるとだけ告げホテルを出て行った。
愛東が向かった先はホテルからそう遠くない位置に有る雑居ビルの一室、表向きは商社を装っているが実は傭兵部隊の連絡事務所だ。
先のスポーツジムも、そうだが傭兵部隊はF国内にこの様な連絡事務所を数カ所持っている。
計画の実行まで連絡をしないと言う約束を破って愛東が訪れたにも関わらず、ミシェルから情報がすでに伝わっているのか、さほど警戒する様子もなく奥の部屋に通された。
ここの責任者は少し強い口調で本部の得ている情報と決定を説明し出した。
「まず今回の作戦は失敗に終わりました。」
「更に状況は悪い方向に向かっています、ニュースの中にあった一部の軍との衝突、あれはマークの部隊です。」
「彼等はミシェルからの撤退指示が出たのにも関わらずクーデター発生地域に移動し国軍と戦闘を始めたそうです。」
愛東は新海と2人でマーク達に面会した日を思い出し、あの日感じた悪い予感が現実になってしまったことを後悔した。
悪い予感とは新海の言葉、弱者救済の想いを聞いたマーク達の目の輝きが傭兵には似つかわしくない表情に見えたことだ。
新海の話しを聞き終わった後、マーク達が覆面を取り素顔を曝すなど傭兵としては冷静さを欠いている、少なからず新海の言葉に影響されてしまったことが今回のマーク達の行動に繋がっていると愛東は思えてならなかった。
新海に計画の失敗が伝わる数時間前の事。
計画の実行地点に待機していたマークの部隊にミシェルからの撤退指示の連絡が届いたのは、クーデター発生日の午前中のことだった。
こういった時のマーク達の判断は素早い、直ぐさま撤退準備を完了して輸送部隊のドナルド隊との合流地点に移動を開始した。
しかし、郊外を抜け合流地点まで、あとすこしというところで、ふたたびミシェルより緊急連絡がマークの元に入った。
内容は合流地点へのルート上でI国軍と住民が交戦中との事で、マークの部隊にも何らかのアクションが予想される為、細心の注意を払い移動されたしと言うものだった。
ここで言う細心の注意と言うのは、これ以上目立つなと言うことだ。
傭兵部隊の本部としては計画が失敗した以上、傭兵部隊の存在がニュースとして流れるメリットは何も無い。
しかし、今のマークにとって、この内容の情報は伝えてはならないものだった。
いつものマークなら的確な判断の元、ルート変更をしつつも予定時刻には合流地点に到着させる男だ。
それがマークは驚きの提案をしてきた。
「ルートを変更して、戦闘地点に向かう!」
この発言に思わずミシェルが叫んだ。
「やめろマーク!」
「撤退だ‼︎」
「作戦は失敗したんだ!応答しろマーク‼︎」
しかし、マークからの返答はなく、ミシェルはドナルドに意見を求める為、今までの経緯をドナルドに伝えた。
ドナルドはミシェルからの連絡を受けて少し驚いた様子だったが、つぶやくように一言。
「傭兵としては失格だな、だが人間としては、益々マークのことが好きになった。」
ドナルドはそう言うとマークの部隊を支援する為、交戦地点(K地点)に移動するとミシェルに伝えて通信を切った。
ミシェルはこの事態をどの様に本部に報告して良いのか迷っていた。
マークとドナルドの行動は部隊を危険に晒す意味では明らかに間違っている。
が、2人を良く知るミシェルにとって、この事態は意外でもあり驚きだった!
何故ならミシェルの知るマークという男は部下の安全を最優先に考え行動する思考の持ち主で、過去に失敗に終わった作戦でも部下からの信頼は揺るがなかった。
それとは逆にドナルドは、【冷徹のドナルド】と噂されるほどの鉄の意志を持っており。
合流時刻になったら味方部隊が残っていようが撤退を開始する男だ。
しかし、作戦の中で其処が合流地点と決まったならば、其処がどんなに危険でも必ず行く男で。
昔からマークとドナルドは気が合ってチームを組んできた。
それが今回の2人の真逆の行動はミシェルにとって予想外で想定外だった。
ミシェルは事の成り行きを有りのままに本部に報告すると2人を追いかけるように移動を開始した。
マークが交戦地点に到着したのは移動開始から2時間後のことだった。
そこでマークが見た光景は悲惨なものだった、暴走した一部のI国軍による一方的な虐殺!
傭兵のマークにとって、この様な光景は珍しくないことだったが、この日、少し熱くなっていたマークは、思わず攻撃を開始してしまった。
情報担当ということもあり、まわりの動きには敏感なのだが、この日はI国国民の動きが静か過ぎるのだ、いつもの週末ならば朝のこの時間帯、動き出す筈の人の流れが一部の地域でまったく無い。
ミシェルはマークとドナルドに警戒するように伝わると、その原因を探り始める。
原因は直ぐ判明した、人の動きが無い地域で小規模ではあるが、本物のI国の軍隊が行動を起こしている形跡が確認された。
こちら側でも偽クーデターにリアリティをだす為にI国軍の一部を買収して、こちらの動きに合わせて行動する手筈になっていたが計画とは違う地域での動きにミシェルは計画が失敗したと判断し本部に決行の中止を伝えた。
新海達が計画の失敗を知ったのはI国の隣国、F国のホテルの一室だった。
今回の計画が実行されクーデターが発生すれば、テレビやラジオで臨時ニュースが流れるはずである。
それを合図にこの模様を全世界にSNSで発信する為、この部屋に機材を持ち込んで待機していた。
そんな中、思わぬ時間にそのニュースは流れてきた。
「臨時ニュースをお伝えします!」
「隣国のI国で軍事クーデターが発生した模様、詳細はまだ判っておりませんが、一部の軍隊と国軍との間で交戦中との情報もあり、I国の地方都市(テラハ)では煙が上がっているとの目撃情報もあります。」
興奮ぎみにテレビのアナウンサーは伝えている。
そのニュースを見て新海達は慌てた様に席を立ち、テレビの前に駆け寄った。
新海達の計画通り発生したクーデター、しかし、発生した時刻が問題である。
新海達の計画では映像の視覚的効果を狙って夕刻近くを狙って発生の時刻と定めていた。
それが昼のニュースで報じられる筈は無い!
何か想定外の事態が起きている、新海達に緊張が走った。
最初に動いたのは愛東で確かめてくるとだけ告げホテルを出て行った。
愛東が向かった先はホテルからそう遠くない位置に有る雑居ビルの一室、表向きは商社を装っているが実は傭兵部隊の連絡事務所だ。
先のスポーツジムも、そうだが傭兵部隊はF国内にこの様な連絡事務所を数カ所持っている。
計画の実行まで連絡をしないと言う約束を破って愛東が訪れたにも関わらず、ミシェルから情報がすでに伝わっているのか、さほど警戒する様子もなく奥の部屋に通された。
ここの責任者は少し強い口調で本部の得ている情報と決定を説明し出した。
「まず今回の作戦は失敗に終わりました。」
「更に状況は悪い方向に向かっています、ニュースの中にあった一部の軍との衝突、あれはマークの部隊です。」
「彼等はミシェルからの撤退指示が出たのにも関わらずクーデター発生地域に移動し国軍と戦闘を始めたそうです。」
愛東は新海と2人でマーク達に面会した日を思い出し、あの日感じた悪い予感が現実になってしまったことを後悔した。
悪い予感とは新海の言葉、弱者救済の想いを聞いたマーク達の目の輝きが傭兵には似つかわしくない表情に見えたことだ。
新海の話しを聞き終わった後、マーク達が覆面を取り素顔を曝すなど傭兵としては冷静さを欠いている、少なからず新海の言葉に影響されてしまったことが今回のマーク達の行動に繋がっていると愛東は思えてならなかった。
新海に計画の失敗が伝わる数時間前の事。
計画の実行地点に待機していたマークの部隊にミシェルからの撤退指示の連絡が届いたのは、クーデター発生日の午前中のことだった。
こういった時のマーク達の判断は素早い、直ぐさま撤退準備を完了して輸送部隊のドナルド隊との合流地点に移動を開始した。
しかし、郊外を抜け合流地点まで、あとすこしというところで、ふたたびミシェルより緊急連絡がマークの元に入った。
内容は合流地点へのルート上でI国軍と住民が交戦中との事で、マークの部隊にも何らかのアクションが予想される為、細心の注意を払い移動されたしと言うものだった。
ここで言う細心の注意と言うのは、これ以上目立つなと言うことだ。
傭兵部隊の本部としては計画が失敗した以上、傭兵部隊の存在がニュースとして流れるメリットは何も無い。
しかし、今のマークにとって、この内容の情報は伝えてはならないものだった。
いつものマークなら的確な判断の元、ルート変更をしつつも予定時刻には合流地点に到着させる男だ。
それがマークは驚きの提案をしてきた。
「ルートを変更して、戦闘地点に向かう!」
この発言に思わずミシェルが叫んだ。
「やめろマーク!」
「撤退だ‼︎」
「作戦は失敗したんだ!応答しろマーク‼︎」
しかし、マークからの返答はなく、ミシェルはドナルドに意見を求める為、今までの経緯をドナルドに伝えた。
ドナルドはミシェルからの連絡を受けて少し驚いた様子だったが、つぶやくように一言。
「傭兵としては失格だな、だが人間としては、益々マークのことが好きになった。」
ドナルドはそう言うとマークの部隊を支援する為、交戦地点(K地点)に移動するとミシェルに伝えて通信を切った。
ミシェルはこの事態をどの様に本部に報告して良いのか迷っていた。
マークとドナルドの行動は部隊を危険に晒す意味では明らかに間違っている。
が、2人を良く知るミシェルにとって、この事態は意外でもあり驚きだった!
何故ならミシェルの知るマークという男は部下の安全を最優先に考え行動する思考の持ち主で、過去に失敗に終わった作戦でも部下からの信頼は揺るがなかった。
それとは逆にドナルドは、【冷徹のドナルド】と噂されるほどの鉄の意志を持っており。
合流時刻になったら味方部隊が残っていようが撤退を開始する男だ。
しかし、作戦の中で其処が合流地点と決まったならば、其処がどんなに危険でも必ず行く男で。
昔からマークとドナルドは気が合ってチームを組んできた。
それが今回の2人の真逆の行動はミシェルにとって予想外で想定外だった。
ミシェルは事の成り行きを有りのままに本部に報告すると2人を追いかけるように移動を開始した。
マークが交戦地点に到着したのは移動開始から2時間後のことだった。
そこでマークが見た光景は悲惨なものだった、暴走した一部のI国軍による一方的な虐殺!
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