学園の華たちが婚約者を奪いに来る

nanahi

文字の大きさ
24 / 30

24 王妃

しおりを挟む
「婚約破棄になったんだって!」
「ひどい!今更どうして!?」

学園内はふたりの婚約破棄の話で、蜂の巣をつついたような騒ぎだ。
シャロンはそんな渦中でも、登校していた。

まだ諦めきれないルアージュはシャロンの姿を見ようとクラスに顔を出すも、シャロンはわざとルアージュから顔を背けつづけた。

完全な拒絶だった。
シャロンはもちろん、ルアージュを守るために、本当は悲しみできしむ心を押し殺して、このような態度をとっていた。

生徒たちもそんなふたりに何と声をかければいいのか分からず戸惑うばかりだ。
しばらくシャロンを見つめたあと、ルアージュは肩を落として自分のクラスに戻っていった。

「お気の毒」

私を蔑ろにするから。

ルアージュとシャロンへの同情の声が多い中、ソフィアはひとり冷たく皮肉めいた笑みを浮かべていた。




王妃の私室。
ベッドから半身を起こした王妃がセレストと向き合っている。

「お加減はいかがですか?王妃様」
「今日はだいぶいいのよ」

セレストは王妃のお見舞いに来ていた。
王妃はルアージュの兄、ラングレイが事故死して以来、心労から病がちになり、一年の大半を私室で過ごしていた。

「ベアトリクスは元気?」
「はい。お母様は毎日のように弟の剣の相手をしております」
「まぁ。相変わらず勇ましいわね。私も子どもたちが小さい頃はよく剣の相手をしていたわ」

王妃は昔を懐かしむように目を細めた。

セレストの母、ベアトリクスは騎士系の侯爵家の出で、王妃の従姉妹であった。
王妃の親戚筋であるセレストは、王妃との繋がりが強かった。

「ルアージュ様とシャロンの婚約が白紙になったと聞きました」
「ええ。全て陛下のご決断で。色々とお考えがあってのことでしょうけど、二人には気の毒なことになってしまったわ」

セレストは複雑な気持ちで視線を落とした。

「王妃様、シャロンに会ったことは?」
「あるわ。婚約が決まった際、挨拶に来てくれて。
場慣れしてない感じだったけど、私の質問にテキパキと答えてくれて愛らしい子だったわ。もし──」

王妃が窓の外に目をやり、思い出すように言った。

「ルアージュがシャロンと出会ってなければ、ルアージュの婚約者にはあなたを推すつもりだったのよ」
「……っ」

本当に──?

セレストは息を呑んだ。
自分にはルアージュの婚約者になる大きな可能性があったのだ。

だが、ルアージュは出会ってしまった。
婚約破棄になったが、ルアージュはシャロンのことを簡単には忘れないだろう。

「どうなるのですか?これからルアージュ様は」
「……ほとぼりが冷めるまではそっとしておくわ。
そのあとは改めて婚約者を選定することになるでしょうね。まだ陛下のお考えでどうなるかわからないけれど。
心の準備だけはしておいてね、セレスト」

まだ私にもルアージュ様の婚約者になる可能性が残っている。

ルアージュたちの不幸に付け入るようで後ろめたさはあったが、セレストにとって王妃の存在は一点の希望だった。

ごめん、シャロン。
卑怯だと思われるかもしれないけど、もし私が婚約者候補になったら、私は引き下がらないから。

セレストは心の中で静かに炎を燃やした。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

令嬢の皮を被ったヘビースモーカー、侍女に化けて敵情視察。〜猫を拾ってタバコを吸っていただけなのに、なぜか次期伯爵に愛の告白をされました〜 

御厨そら
恋愛
「婚約破棄されたのよ!」 最悪に仲の悪い姉・ルイーザが泣き崩れる姿を見て、妹のフィオレは歓喜した。 自室にダイブして爆笑し、お祝いに父の書斎からくすねた一級品の葉巻をくゆらす——。 ​そんなフィオレに、父が下した命令は「姉を振った男、ライネーリ伯爵邸への潜入調査」だった。 黒髪おカッパのカツラにメガネ、そばかすメイクで別人『侍女モニカ』に変装し、いざ敵地へ! ​……のはずが。 厨房の男と隠れてタバコを吸い、子猫のルーを拾って可愛がり、義眼の同僚と秘密を共有し、気づけば屋敷の面々と仲良くなっていく。 さらには、姉を振ったはずの次期伯爵ジェラルドが、なぜか偽姿のフィオレを執拗に追いかけてきて……? ​「君に行ってほしくないんだ。結婚してくれ、フィオレ」 ​ちょっと待って。私、変装してるよね? そもそもアンタ、お姉ちゃんの元婚約者でしょ!? そして潜入先の書斎で見つけた、**『次女フィオレは10年前に死亡している』**という不可解な報告書の謎。 ​一つの体を共有する姉妹の、あまりに歪で、あやしい「ヒ・ミ・ツ」の物語。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

婚約破棄ですか、では死にますね【完結】

砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。 私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。 場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。 氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。 そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。 私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは? 婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。

婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?

みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。 婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。 なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。 (つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?) ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる? ※他サイトにも掲載しています。

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?

小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。 しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。 突然の失恋に、落ち込むペルラ。 そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。 「俺は、放っておけないから来たのです」 初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて―― ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

入れ替わって知ったお互いの真実。殿下、元さやはありません! 公爵様がいますので

ミカン♬
恋愛
ブラウン侯爵家の令嬢アーシャと、彼女を「無能」と蔑み疎んじていた婚約者のエリック第二王子が、ある事故を境に人格が入れ替わってしまうことから物語は動き出します。 どうして入れ替わってしまったのか? それよりも互いに知ってしまった真実に、二人は翻弄されます。 ハッピーエンドです。 かる~い気持ちで、暇つぶしに読んでくださると嬉しいです。 8話で完結します。

処理中です...