上 下
11 / 71

11 冷たい王女

しおりを挟む
王太子は王女を星の館のうち五等星の間に入らせることにした。

ブランカは王妃候補が入る一等星の間だ。そうしなければ、アンダルケが納得しないだろうことはわかっていた。

五等星の間はブランカの居室から一番遠い位置にある。マール家の嫌がらせから守るため、あえて位の低い部屋に移したのだ。


「そういえば王女はいつから床に膝をつかされていたのだ」


王女付きの侍女を呼び出し尋ねると、侍女は声を震わせて答えた。


「まる30時間にございます」

「なん、だと……!?」


侍女が口を押さえながら続けた。


「王女様は微動だにせずお耐えになり……でもそのせいで、両膝が腫れ上がってしまわれて」


侍女が、いくら蛮族の姫様だとしてもおいたわしい、と言って泣きだした。

王太子は王女目がけて自室を飛び出した。


∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵


王女は寝室で眠っていた。
顔色が悪い。
王太子は王女の手を取った。


氷のように冷たい──!


「冷え切っているではないか! もっと布団をもて!」

「それが、いくら温め申し上げても、一向に体温が上がらないのです」


侍女がストーブを持ち運びながら、オロオロと答える。
確かに毛布や掛け布団がこれ以上無理なほど、王女の上に積み上がっている。

王女は目を固く閉じたまま、ただ細い息をしている。


何とかしなければ。


「至急、私の主治医を呼べ!」

「はっ、はい!」


周囲がバタバタと動き回る。
王太子はおもむろに自分の上着を脱ぎ、王女の隣に滑り込む。
皆はギョッとした顔で王太子の方を見るも、あえて見ないフリをし始める。


「王女……守りきれず、すまなかった」


冷たい王女の体を布団の中で抱き寄せる。
王女は反応しない。


頼む、回復してくれ……!


王太子は初めて神に本気で祈った気がした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】王太子は元婚約者から逃走する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:158

追放された聖女のお話~私はもう貴方達のことは護りません~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:2,811

【本編完結】旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:221,485pt お気に入り:9,412

最後に全ては噛み合った

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,960pt お気に入り:67

クローゼットから出てきたら、婚約者が違う人になってた。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:9

殿下の運命は私ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,732pt お気に入り:30

嫁がされた先は白豚公爵のはずですが?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:810

行ってきますはさようなら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:944pt お気に入り:10

私のかわいい婚約者【完結】

nao
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,285pt お気に入り:1,340

処理中です...