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24 ふたりの令嬢

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「そこのあなた」

王宮の廊下をうろうろしていた例の令嬢をまたもや見かけたブランカが、厳しめの声でジェーンを呼び止める。

ジェーンは気品あふれる所作で振り返る。アプリ魔術に自動翻訳機能があるおかげで、異国の地でも言語には不自由しなかった。

金髪碧眼同士の令嬢が睨み合う。緊張感でその場の空気がどんどん冷え切っていく。

「あなたの家門の爵位は?」

そう先に質問を投げかけたのはジェーンだった。

「第一等級、この王国の筆頭貴族よ」

わたくしのことを知らないなどと、どこの馬の骨かしらね。とおかしく思いながらもブランカは誇らしげに答える。自慢のストレートのブロンドヘアを片手で優雅に払いながら、見下すように。

「数字??? 一体何の冗談かしら?? 爵位もご存じないの? 当家は上位貴族の侯爵よ」

「そちらこそ何ですの? その訳のわからない侯なんとかいうのは。私は王太子妃の最有力候補ですけれど、何か?」

「わたくしの方こそ、王太子妃の最有力候補ですけれど、何か?」

一歩も引かず睨み合うふたり。住む世界は違えど、プライドの高さは引けを取らない。双方の金髪が逆立っていくかのごとく火花が散る。ブランカが鋭く問う。

「未来の王妃になるために、最も必要なことは何かしら?」

ブランカはジェーンの返答を待ちながら思う。
財力? 美貌? 猛烈な努力? いいえ、どれも違うわ。これが分からない者に王妃は務まらない。

しかしジェーンは迷いなく朗々とした声で答えた。

「権謀術数よ」

ふたりの令嬢はしばし睨みあった後、ブランカが口火を切った。

「ふふ。初めて気が合いましたわね」

権謀術数。それは、自分の利益のために他人をたくみに欺き貶める策謀のことだ。きれいごとだけでは王妃の座には座れない。そのことを名門貴族のふたりの令嬢は心底理解していた。

ふたりは表情をいくぶん和らげる。互いに文化の違う国の出身だろうことは何となくわかってきた。だが、殿下を奪い合う相手となれば敵認定だ。

「ただし、殿下は渡さなくてよ」

「わたくしこそ、負けませんわ」

ふたりの意味する殿下は実はそれぞれ人物が違うのだが、この時のふたりはまだ理解していないままだった。
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