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55 魔物襲来
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【並行世界】ノスカ王国、離宮の地下室。
フードの男が大きな培養器の前に立っている。培養液に満たされた透明な円筒カプセルの中には、ヒト型の培養物が卵型の薄い膜に包まれ浮かんでいる。
カプセルの前方に浮かぶ卵の絵のアイコンをタップし、数値を確認する男。
「完成までもう少し。万が一の事が起こった時の保険だ」
フードの男は培養器から離れ、階段を登り、地上へと出た。人気のない離宮の庭園へと急ぐ。林の隅にノイズを走らせながらワープホールがその口を開けている。
「さっき確認に来た時に、一度消えたワープホールが復活していた。ただ、通信が微弱でいつまた消えてしまうかわからない状態だ」
並行世界空間移動術により、ここからガネシュがルヒカンド王国へワープした。その後、ジェーンに頼まれ、自分が同じく平行移動術によりジェーンをルヒカンド王国へと送り出した。
男はアプリでジェーンにメッセージを送るも既読にならない。
「何通も送っているのに全然既読にならない。ジェーンに何かあったのだろうか……? 頼むから、ふたりが無事に帰るまでは消えないでくれよ……!」
男はワープホールに懇願するように声をかけた。
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
夜明けのマハ王国。
どうん、どうん──どこからか地響きが伝わってくる。
「何の音だ?」
日の出前から畑仕事をしていたマハの農夫が体を起こして遠くを見る。
「ギリリリギリリ」
奇妙な声をもらしながら、ナマズに足が生えたような巨大な魔物がこちらへやって来た。
「うわああああ!! ばけもんだ──!!!」
農具を放り出し死に物狂いで逃げ出す農夫。
魔物出現の報告は伝令によりマハ王宮にまで伝わった。一報を受けたルシウスが王宮の物見の塔の上から、日の出の方角を確認すると、真っ黒で不気味な魔物がのたのたと王宮を目指し、近づいてくるのが見えた。魔物の通り道となった森や街はその重みと毒でえぐられ、原型を失っている。
王都へと侵入しようとする魔物を大砲や魔術で迎撃するマハの王立軍。
「打てえ!」
ドン!
放たれた鉄の砲弾には魔術師による魔封じの術が施されている。
砲弾は見事、魔物の腹に命中し、その肉を焼いた。
「ギー!!」
だが、怒った魔物が全身から毒液を発射した。
ジュウウウ!
「ぎゃあああ!!」
毒液をくらった兵士たちの体が解けていく。
「ひ、ひけえ!! 全員退避!! 至急、女王陛下ならびに王族ご一同を退避させよ!!」
指揮官の命令で一斉に兵士たちが散らばる。
「平行移動者の厄災が始まったのか」
魔物との戦闘を見ていたルシウスは「翡翠を早く脱出させなければ」と呟き走り出した。
フードの男が大きな培養器の前に立っている。培養液に満たされた透明な円筒カプセルの中には、ヒト型の培養物が卵型の薄い膜に包まれ浮かんでいる。
カプセルの前方に浮かぶ卵の絵のアイコンをタップし、数値を確認する男。
「完成までもう少し。万が一の事が起こった時の保険だ」
フードの男は培養器から離れ、階段を登り、地上へと出た。人気のない離宮の庭園へと急ぐ。林の隅にノイズを走らせながらワープホールがその口を開けている。
「さっき確認に来た時に、一度消えたワープホールが復活していた。ただ、通信が微弱でいつまた消えてしまうかわからない状態だ」
並行世界空間移動術により、ここからガネシュがルヒカンド王国へワープした。その後、ジェーンに頼まれ、自分が同じく平行移動術によりジェーンをルヒカンド王国へと送り出した。
男はアプリでジェーンにメッセージを送るも既読にならない。
「何通も送っているのに全然既読にならない。ジェーンに何かあったのだろうか……? 頼むから、ふたりが無事に帰るまでは消えないでくれよ……!」
男はワープホールに懇願するように声をかけた。
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夜明けのマハ王国。
どうん、どうん──どこからか地響きが伝わってくる。
「何の音だ?」
日の出前から畑仕事をしていたマハの農夫が体を起こして遠くを見る。
「ギリリリギリリ」
奇妙な声をもらしながら、ナマズに足が生えたような巨大な魔物がこちらへやって来た。
「うわああああ!! ばけもんだ──!!!」
農具を放り出し死に物狂いで逃げ出す農夫。
魔物出現の報告は伝令によりマハ王宮にまで伝わった。一報を受けたルシウスが王宮の物見の塔の上から、日の出の方角を確認すると、真っ黒で不気味な魔物がのたのたと王宮を目指し、近づいてくるのが見えた。魔物の通り道となった森や街はその重みと毒でえぐられ、原型を失っている。
王都へと侵入しようとする魔物を大砲や魔術で迎撃するマハの王立軍。
「打てえ!」
ドン!
放たれた鉄の砲弾には魔術師による魔封じの術が施されている。
砲弾は見事、魔物の腹に命中し、その肉を焼いた。
「ギー!!」
だが、怒った魔物が全身から毒液を発射した。
ジュウウウ!
「ぎゃあああ!!」
毒液をくらった兵士たちの体が解けていく。
「ひ、ひけえ!! 全員退避!! 至急、女王陛下ならびに王族ご一同を退避させよ!!」
指揮官の命令で一斉に兵士たちが散らばる。
「平行移動者の厄災が始まったのか」
魔物との戦闘を見ていたルシウスは「翡翠を早く脱出させなければ」と呟き走り出した。
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