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「帰ったぞー!」
左右にバカでかい獲物を担いで、腰からはリンゴを詰めた草袋を幾つか下げての帰宅。
我ながらなんだこの格好?
「師匠!お帰りな……なんですかそれッ!?」
「にぃちゃんすごーい!」
タクと近くにいた小さい子が声を掛けてくれた。
そのまま拠点の中央へ。ざわざわと人が集まる。驚くよなそりゃ。でもこれなら百十三人全員が満足できるだろう。
「わぁ……ゲンさん力持ちですねぇ」
「いやいや麗華さん。これそんな次元じゃないッスよ! 兄貴、一体どうなってるッスか?」
麗華さんは相変わらすぽわぽわ可愛い。
ダイの言う通り、普通の人間が七メートルある巨大魚と二メートルのワニ両方を背負うなんてあり得ない。リンゴを配りサケを切り分けながら、これまであったことを話す。
そして現在正座しております。
「ゲン坊、どうしようもない場面があるのはわかる。その巨大な蛇に襲われたのは避けられなかったのかもしれぬ。 しかしの?蛇が木に噛み付いて動けない時、お主なら逃げきれたのではないかの?
儂らは今、集団で一つの生物みたいなもんじゃ。そしてその生物の頭の部分がゲン坊、お主じゃ。頭が潰されればたちまち体も死に絶える……わかるな?今度から格上が相手で、逃げる機会があるのなら迷わず逃げよ」
「そうだよう。ゲン坊や、命あっての物種だよう」
「「「「「むちゃしちゃだめー!」」」」」
うッ!?チビっ子達まで。これは効く……反省してます。だから麗華さんもジト目で睨まないでくれませんかねぇ。
確かに偶々上手くいっただけだ。毒はこの際関係ない。あの大きさの蛇に噛まれた時点で丸呑みか、巻かれて一番搾りのどちらかでアウト。
でも最初から逃げてたら?追ってきたかもしれないし、もしかしたら次の獲物に向かったかもしれない。迎撃するのはその時追ってきてからでもよかった。 薬も病院もないからな。薬草でおっつかない怪我もなるべくしないよう気を付けよう。
オタトリオは俺の心配より水魔法に食いついた。
とりあえず、魔法で出した水が飲めるのかも確認したいから使ってみることに。
「水よ、恵みをもたらせ……ウォーター」
「「「おー!」」」
頭に浮かんだ水の初級魔法を使ってみたが、空中にそれなりの大きさの水球があらわれた。目の前に纏めて用意しておいた、ココナツ容器五つ分ほどにドバッと落下した。
これを10回繰り返すと、魔法が発動しなくなった。魔力切れか? どうやらこの世界の魔力切れは、特に気絶するなどのデメリットは無く、魔法が発動しなくなるだけのようだ。
そして水を飲んでみる。冷たい! 実はオタトリオ達から事前に、冷たい水を出すイメージを持ちながら発動するようアドバイスを受けていたのだ。やるじゃん! 俺はそんなにガッツリと漫画や小説をよんでないからな……コイツらの知識は実際に異世界に来た今は宝の山だろう。
ただドヤ顔やめろ。お前らがやっても可愛くない!
水は大変美味しかった。美味しくなるようにも想像したからだろうか?
飯が出来たようだ。いい匂いがするぞ?
麗華さんには、道中で採取したレモングラスやブナシメジに小松菜、大きめの葉を渡して包み焼きをリクエストしておいた。火の近くに置いてあったので良い感じに葉の中で蒸されているはずだ。
ヤバい涎出そう。では早速。
「いただきます」
周囲でもいただきますの嵐。皆で一斉に包みをあける。
……あぁ匂いだけでもわかったが、この色合いを見て改めて確信。絶対美味い。
色々と足りない材料はある。バターやマヨネーズ、玉ねぎもない。家庭によってレシピは違うだろうが、今の俺達には無いものが多い。
無い無い尽くしの中でいかに美味く作るのか?その工夫がこれには出来ているように思う。
昼間学生達が頑張って作ってくれた木の箸で身を一口大に切り、そこにシメジと小松菜を乗せ口へ運ぶ。……バターなんていらんかったんや。
サケ自身の油が何よりも濃厚で、甘く良い風味を出していて、香りを付ける為のレモングラスが完全に押し負けている。だが味覚の隅っこで邪魔せずに合いの手を入れてくれているので、賑やかしには丁度良い。うむ、居ることを許そう。そして逆に、ほんの少し入れただけの筈の塩を、油が優しく保護して守り、引き立てている。塩は姫ポジですかそうですか。
兎の肉も美味かった。材料が揃えばもっと美味くできるだろう。だが想像していた範囲を越えた美味さではなかった。 だが、このサケは違う。地球の物とは完全に別次元の美味さ。比べることすら申し訳なくなる。
これが、ランクの高い魔物の美味さ……。
因みにチラッと麗華さん一家の方を見ると、皆に囲まれながら三人とも同じ顔して、可愛くドヤ顔をキメとりました。 オタトリオとのこの圧倒的戦力差よ!
一人当たり結構なボリュームがあった筈だか、あっという間に食べきってしまった。それでもまだ少し食い足りない。
七メートルあった巨大なサケは頭と皮周辺に骨、雄の為に入っていた白子を残して、殆どが百十三人の胃袋へと消えた。
余った身は全て味付け無しで蒸したあと、綺麗な衣服を重ねて濾した、汚れを除いた海水少量とココナッツオイルで、和えて簡易ツナ擬きにして今は保存。
二センチ程に身をわざと残した皮は、なけなしの塩を全て塗して水抜したあと、干して鮭とばにするつもりだ。
白子は、ココナッツオイルとレモングラスで平たい石の上で焼き、桃ソースを途中でかけて小さく切り分け、更に少し焼いて食べたい人だけで食べる。って皆が手を挙げた。足りるかこれ?
鮭の白子って臭いイメージが強かったが、こいつは問題なく美味かった。次はイクラが食べたいよな。
そして頭は豪快に兜焼き。目玉は俺とシゲ爺で食べる。他に食べたい人はいなかった。美味いのに解せぬ。
脳ミソは子供達へ優先で。本当か知らんが、なんとか成分がどうとかこうとかであれやこれやに良いらしい。俺ちゃん良くわかんない。
後の部分は仲良く分けましたとさ。
ワニの肉は一口大に切り、ニラと少しの海水と揉んでココナツ容器に入れて蓋をしてある。明日の朝に焼いて食べよう。
ワニの皮は鞣して革へ。頑丈だから採取用の鞄にして、麗華さんとその手伝いの子達に渡すか。
そして余ったサケとワニの骨。頑丈さもそれほどないようだし、鳴子にでもするか。
鮭の歯は前歯の長いの数本だけ、同じようにナイフへ。
雑事をこなし、暗くなってきた中で焚き火に木をくべていると数人が話があると近寄ってきた。
なんだろう?
左右にバカでかい獲物を担いで、腰からはリンゴを詰めた草袋を幾つか下げての帰宅。
我ながらなんだこの格好?
「師匠!お帰りな……なんですかそれッ!?」
「にぃちゃんすごーい!」
タクと近くにいた小さい子が声を掛けてくれた。
そのまま拠点の中央へ。ざわざわと人が集まる。驚くよなそりゃ。でもこれなら百十三人全員が満足できるだろう。
「わぁ……ゲンさん力持ちですねぇ」
「いやいや麗華さん。これそんな次元じゃないッスよ! 兄貴、一体どうなってるッスか?」
麗華さんは相変わらすぽわぽわ可愛い。
ダイの言う通り、普通の人間が七メートルある巨大魚と二メートルのワニ両方を背負うなんてあり得ない。リンゴを配りサケを切り分けながら、これまであったことを話す。
そして現在正座しております。
「ゲン坊、どうしようもない場面があるのはわかる。その巨大な蛇に襲われたのは避けられなかったのかもしれぬ。 しかしの?蛇が木に噛み付いて動けない時、お主なら逃げきれたのではないかの?
儂らは今、集団で一つの生物みたいなもんじゃ。そしてその生物の頭の部分がゲン坊、お主じゃ。頭が潰されればたちまち体も死に絶える……わかるな?今度から格上が相手で、逃げる機会があるのなら迷わず逃げよ」
「そうだよう。ゲン坊や、命あっての物種だよう」
「「「「「むちゃしちゃだめー!」」」」」
うッ!?チビっ子達まで。これは効く……反省してます。だから麗華さんもジト目で睨まないでくれませんかねぇ。
確かに偶々上手くいっただけだ。毒はこの際関係ない。あの大きさの蛇に噛まれた時点で丸呑みか、巻かれて一番搾りのどちらかでアウト。
でも最初から逃げてたら?追ってきたかもしれないし、もしかしたら次の獲物に向かったかもしれない。迎撃するのはその時追ってきてからでもよかった。 薬も病院もないからな。薬草でおっつかない怪我もなるべくしないよう気を付けよう。
オタトリオは俺の心配より水魔法に食いついた。
とりあえず、魔法で出した水が飲めるのかも確認したいから使ってみることに。
「水よ、恵みをもたらせ……ウォーター」
「「「おー!」」」
頭に浮かんだ水の初級魔法を使ってみたが、空中にそれなりの大きさの水球があらわれた。目の前に纏めて用意しておいた、ココナツ容器五つ分ほどにドバッと落下した。
これを10回繰り返すと、魔法が発動しなくなった。魔力切れか? どうやらこの世界の魔力切れは、特に気絶するなどのデメリットは無く、魔法が発動しなくなるだけのようだ。
そして水を飲んでみる。冷たい! 実はオタトリオ達から事前に、冷たい水を出すイメージを持ちながら発動するようアドバイスを受けていたのだ。やるじゃん! 俺はそんなにガッツリと漫画や小説をよんでないからな……コイツらの知識は実際に異世界に来た今は宝の山だろう。
ただドヤ顔やめろ。お前らがやっても可愛くない!
水は大変美味しかった。美味しくなるようにも想像したからだろうか?
飯が出来たようだ。いい匂いがするぞ?
麗華さんには、道中で採取したレモングラスやブナシメジに小松菜、大きめの葉を渡して包み焼きをリクエストしておいた。火の近くに置いてあったので良い感じに葉の中で蒸されているはずだ。
ヤバい涎出そう。では早速。
「いただきます」
周囲でもいただきますの嵐。皆で一斉に包みをあける。
……あぁ匂いだけでもわかったが、この色合いを見て改めて確信。絶対美味い。
色々と足りない材料はある。バターやマヨネーズ、玉ねぎもない。家庭によってレシピは違うだろうが、今の俺達には無いものが多い。
無い無い尽くしの中でいかに美味く作るのか?その工夫がこれには出来ているように思う。
昼間学生達が頑張って作ってくれた木の箸で身を一口大に切り、そこにシメジと小松菜を乗せ口へ運ぶ。……バターなんていらんかったんや。
サケ自身の油が何よりも濃厚で、甘く良い風味を出していて、香りを付ける為のレモングラスが完全に押し負けている。だが味覚の隅っこで邪魔せずに合いの手を入れてくれているので、賑やかしには丁度良い。うむ、居ることを許そう。そして逆に、ほんの少し入れただけの筈の塩を、油が優しく保護して守り、引き立てている。塩は姫ポジですかそうですか。
兎の肉も美味かった。材料が揃えばもっと美味くできるだろう。だが想像していた範囲を越えた美味さではなかった。 だが、このサケは違う。地球の物とは完全に別次元の美味さ。比べることすら申し訳なくなる。
これが、ランクの高い魔物の美味さ……。
因みにチラッと麗華さん一家の方を見ると、皆に囲まれながら三人とも同じ顔して、可愛くドヤ顔をキメとりました。 オタトリオとのこの圧倒的戦力差よ!
一人当たり結構なボリュームがあった筈だか、あっという間に食べきってしまった。それでもまだ少し食い足りない。
七メートルあった巨大なサケは頭と皮周辺に骨、雄の為に入っていた白子を残して、殆どが百十三人の胃袋へと消えた。
余った身は全て味付け無しで蒸したあと、綺麗な衣服を重ねて濾した、汚れを除いた海水少量とココナッツオイルで、和えて簡易ツナ擬きにして今は保存。
二センチ程に身をわざと残した皮は、なけなしの塩を全て塗して水抜したあと、干して鮭とばにするつもりだ。
白子は、ココナッツオイルとレモングラスで平たい石の上で焼き、桃ソースを途中でかけて小さく切り分け、更に少し焼いて食べたい人だけで食べる。って皆が手を挙げた。足りるかこれ?
鮭の白子って臭いイメージが強かったが、こいつは問題なく美味かった。次はイクラが食べたいよな。
そして頭は豪快に兜焼き。目玉は俺とシゲ爺で食べる。他に食べたい人はいなかった。美味いのに解せぬ。
脳ミソは子供達へ優先で。本当か知らんが、なんとか成分がどうとかこうとかであれやこれやに良いらしい。俺ちゃん良くわかんない。
後の部分は仲良く分けましたとさ。
ワニの肉は一口大に切り、ニラと少しの海水と揉んでココナツ容器に入れて蓋をしてある。明日の朝に焼いて食べよう。
ワニの皮は鞣して革へ。頑丈だから採取用の鞄にして、麗華さんとその手伝いの子達に渡すか。
そして余ったサケとワニの骨。頑丈さもそれほどないようだし、鳴子にでもするか。
鮭の歯は前歯の長いの数本だけ、同じようにナイフへ。
雑事をこなし、暗くなってきた中で焚き火に木をくべていると数人が話があると近寄ってきた。
なんだろう?
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