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浜辺に到着。
今日も天気がいいから海が綺麗だ。
その内雨も来るのだろうか。
景色を楽しむのもそこそこに、早速ヤシの実を採る。
ここに来た当初は律儀に登っていたが、今は実の位置まで跳躍できてしまう……恐ろしい事に。
未熟果と成熟果を十分な数揃え、ついでとばかりにお散歩中のヤシガニを十数匹確保。
早々に割り振られた仕事を終わらせた。
「では、こちらは運んで行きますので、師匠もお気をつけて」
「おう、そっちもな。拠点で何かあったら狼煙を上げろよ?ちょくちょくそっちを確認しておくからな」
「わかりました」
ちゃっかり身体強化を入手していたタクを中心に、運搬のために同行していた者達に荷物を任せ、海に潜る準備をする。
下着一丁に右手に銛を持ち、網袋を幾つか腰に下げた不審者がラジオ体操をしている。
……まぁ俺なんだが。
では、行ってみよう。
潜れる深さの場所まで行き、早速海の中を覗いてみた。
水族館自慢の、巨大な水槽の中を無限に広げたようだ。
海の上から見た時の青一色も綺麗だったが、中は色で溢れている。
おかしな部分は多々あるが、俺達のいる場所の環境は熱帯に近いと判断していた。
海の中もその例に漏れず、主に熱帯で見られる綺麗なサンゴが群生していた。
白、ピンク、赤、オレンジ、黄、緑と全体的に赤に近い色のサンゴの森が、岩場を挟みながら茂っている。
サンゴだけじゃない。
サンゴの赤に負けない綺麗な赤い魚や、海の中にあっても尚浮き立つ青い魚、群れで泳ぐ黄色い小魚など、見ていると目が痛みそうな、まるで色彩の暴力だ。
そしてそれら鮮やかなるモノ達を引き立てる存在も忘れてはならない。
岩場に張り付くウニやナマコ、貝類。
底を歩き移動する蟹や海老。
俺からしたら寧ろ、それらの方が本命だ。
美味そうな獲物がウヨウヨしていて、海の中なのに涎が出そうだ。
ヘヘッ!伊勢海老まで居やがる。夕食が楽しみだな!
大漁じゃ大漁じゃ!
波打ち際に土魔法で臨時の生け簀を作り、網袋の中の獲物をそこに離し、また捕りと、往復を続けて暫く経つ。
比較的浅瀬で漁をしているので、往復ペースが中々早い。
海産物は帰る時に一気にシメて運ぶ。
新鮮なのが良いからな。
しかし鮭から取得した水中機動と、ワニから取得した潜水なんだが……これ、海の中では反則級に有用だなぁ。
何せ猛バックで逃げる海老ちゃんを追い越し、先回りして胸の中へウェルカム出来るし、二十分近く潜っていてもまだ息が続く。
俺って人間だよな?……人間の筈だ。
多分、きっと!
そろそろ帰ろうと思いナマコ捕りを中断したところで、沖の方からスルスルと海底を縫うように、人間サイズのシャコが表れた。
先日見た巨大蟹に比べたら大したことないだろって?
いやいや、シャコだぞ?
普通サイズのシャコのパンチでも、人間に対して内出血を負わせる威力があるのに、それがあのサイズだ。
……海の中でも潰れたトマトみたいに、頭パーンされるって!
確実に魔物だろうが、海に潜るのはどうせ俺だけだ。
無理に狩ることもない。
気付かれない様に去るのを見守ろう。
シャコは自身の大きさに比べたら小さい獲物を、暫くの間食べ歩いていたが、ある存在に気付いた様だ。
ああ……君もソレに気付いたかね。
俺も漁を始めて早々に、ソレには気付いていたんだが、動かないし、何があるか分からないから放置をしていた。
岩場の一つに、トゲを入れて直径三メートルはありそうな、巨大ウニがいるのだ。
見た感じ、毒持ちではなさそう。毒持ちはトゲの目立たないのが多いからな。
移動しても速度は遅いし、今はじっと動かない。
ただ、何せデカい。
どう考えても魔物だろコレ?
だから動かないのをいいことに、俺は放置を決め込んでいたんだが……どうやらシャコ君はやる気満々らしい。
なら俺はその戦いを観戦させて貰うが、ジュースとポップコーンはないのかね?
当然だが、先に仕掛けたのはシャコだ。
多足を素早く動かし、スルスル滑るようにウニに接敵後、いきなり十八番のパンチを繰り出した。
たった一発繰り出したパンチで、シャコのいる側面のトゲが何本も吹き飛んだ。
ただ、それだけではウニへの被害は大したことはない。
トゲはまだまだ無数にあるのだ。
ウニも動き始めた。
ウニには人間でいうところの脳は無い。
しかし目と呼べるモノもあるし口もあるしトゲも動く。
黙って食われるつもりはないのだろう、トゲを使って迎撃体勢に入った。
幾つものトゲがシャコの方を向いているが、内一本が素早く伸びた。
「ヴヴヴッ!?」
「……」
咄嗟の判断で頭を反らしたシャコの直ぐ側を、伸びたトゲが通り抜けた。
シャコはいきなりの攻撃に驚いて低い鳴き声が出てしまったようだ。
対してウニは静かなものだな。
そしてシャコが激高し、攻撃の激しさが増した。
……びっくりして声出ちゃったのが恥ずかしかったとかじゃないよな?
それからのシャコはまるで人間のボクサーの様に、ウニの周りを素早く移動しながらヒット&アウェイを繰り返し、着実にトゲの数を減らしていった。
その間、ウニも黙ってやられていた訳ではなく、動き回るシャコ目掛けてトゲを伸ばしていたのだが、何せシャコが素早い。
一本も当てる事が出来ずに、遂には逆さにひっくり返されてしまった。
海底の砂の部分に頂点のトゲが突き刺さり、逆さまのまま動けないウニに、シャコが勝者の余裕を漂わせながら悠然と近付く。
表情が有ればドヤ顔決めてそうだなアイツ。
トドメのパンチをかまそうと、腕に力を溜めながら近付くシャコだったが、しかし、そのパンチが放たれる事はなかった。
完全な油断。
勝利を核心しながら近付くシャコに、今までトゲを伸ばして攻撃していたウニは、今度は小さめのトゲを射出して攻撃した。
しかもこの射出されたトゲ、どうやら電撃を纏っているようで、トゲが胴体に突き刺さったシャコは痺れて動けなくなっている。
シャコ君からは「こんなのアリかよ!?」と言う声が聞こえてきそうだ。
俺も完全に同意する。
魔物ってやっぱ怖えぇーー!!
それはともかく、この素晴らしい戦いを見せてくれた二者を讃えなければならないな。
トゲの射線に気を付け、拍手をしながら彼等に近付いた。
「ブクガボボー!ブクガボボー!(ブラボー!ブラボー!)」
水の中だから上手く声が出ないし、拍手の音も出せなかったが……まぁいい。
君達はよく戦った。
まずシャコ君、君のパンチは間違いなく世界を狙える。
しかし、最後の最後で油断したのは残念だった。
もう少しだったのにな?
そしてウニちゃん、君のその最期まで諦めない姿勢にはとても感銘を受けた。
俺もそうありたいものだ。
俺は君達の戦いを忘れないだろう、ありがとう!
そして俺は動けないでいる彼等に素早くトドメを刺した。
《新しいスキルを取得しました》
もう聞こえていないだろうが君達にこの言葉を贈ろう。
……漁夫の利って最高じゃんね!
今日も天気がいいから海が綺麗だ。
その内雨も来るのだろうか。
景色を楽しむのもそこそこに、早速ヤシの実を採る。
ここに来た当初は律儀に登っていたが、今は実の位置まで跳躍できてしまう……恐ろしい事に。
未熟果と成熟果を十分な数揃え、ついでとばかりにお散歩中のヤシガニを十数匹確保。
早々に割り振られた仕事を終わらせた。
「では、こちらは運んで行きますので、師匠もお気をつけて」
「おう、そっちもな。拠点で何かあったら狼煙を上げろよ?ちょくちょくそっちを確認しておくからな」
「わかりました」
ちゃっかり身体強化を入手していたタクを中心に、運搬のために同行していた者達に荷物を任せ、海に潜る準備をする。
下着一丁に右手に銛を持ち、網袋を幾つか腰に下げた不審者がラジオ体操をしている。
……まぁ俺なんだが。
では、行ってみよう。
潜れる深さの場所まで行き、早速海の中を覗いてみた。
水族館自慢の、巨大な水槽の中を無限に広げたようだ。
海の上から見た時の青一色も綺麗だったが、中は色で溢れている。
おかしな部分は多々あるが、俺達のいる場所の環境は熱帯に近いと判断していた。
海の中もその例に漏れず、主に熱帯で見られる綺麗なサンゴが群生していた。
白、ピンク、赤、オレンジ、黄、緑と全体的に赤に近い色のサンゴの森が、岩場を挟みながら茂っている。
サンゴだけじゃない。
サンゴの赤に負けない綺麗な赤い魚や、海の中にあっても尚浮き立つ青い魚、群れで泳ぐ黄色い小魚など、見ていると目が痛みそうな、まるで色彩の暴力だ。
そしてそれら鮮やかなるモノ達を引き立てる存在も忘れてはならない。
岩場に張り付くウニやナマコ、貝類。
底を歩き移動する蟹や海老。
俺からしたら寧ろ、それらの方が本命だ。
美味そうな獲物がウヨウヨしていて、海の中なのに涎が出そうだ。
ヘヘッ!伊勢海老まで居やがる。夕食が楽しみだな!
大漁じゃ大漁じゃ!
波打ち際に土魔法で臨時の生け簀を作り、網袋の中の獲物をそこに離し、また捕りと、往復を続けて暫く経つ。
比較的浅瀬で漁をしているので、往復ペースが中々早い。
海産物は帰る時に一気にシメて運ぶ。
新鮮なのが良いからな。
しかし鮭から取得した水中機動と、ワニから取得した潜水なんだが……これ、海の中では反則級に有用だなぁ。
何せ猛バックで逃げる海老ちゃんを追い越し、先回りして胸の中へウェルカム出来るし、二十分近く潜っていてもまだ息が続く。
俺って人間だよな?……人間の筈だ。
多分、きっと!
そろそろ帰ろうと思いナマコ捕りを中断したところで、沖の方からスルスルと海底を縫うように、人間サイズのシャコが表れた。
先日見た巨大蟹に比べたら大したことないだろって?
いやいや、シャコだぞ?
普通サイズのシャコのパンチでも、人間に対して内出血を負わせる威力があるのに、それがあのサイズだ。
……海の中でも潰れたトマトみたいに、頭パーンされるって!
確実に魔物だろうが、海に潜るのはどうせ俺だけだ。
無理に狩ることもない。
気付かれない様に去るのを見守ろう。
シャコは自身の大きさに比べたら小さい獲物を、暫くの間食べ歩いていたが、ある存在に気付いた様だ。
ああ……君もソレに気付いたかね。
俺も漁を始めて早々に、ソレには気付いていたんだが、動かないし、何があるか分からないから放置をしていた。
岩場の一つに、トゲを入れて直径三メートルはありそうな、巨大ウニがいるのだ。
見た感じ、毒持ちではなさそう。毒持ちはトゲの目立たないのが多いからな。
移動しても速度は遅いし、今はじっと動かない。
ただ、何せデカい。
どう考えても魔物だろコレ?
だから動かないのをいいことに、俺は放置を決め込んでいたんだが……どうやらシャコ君はやる気満々らしい。
なら俺はその戦いを観戦させて貰うが、ジュースとポップコーンはないのかね?
当然だが、先に仕掛けたのはシャコだ。
多足を素早く動かし、スルスル滑るようにウニに接敵後、いきなり十八番のパンチを繰り出した。
たった一発繰り出したパンチで、シャコのいる側面のトゲが何本も吹き飛んだ。
ただ、それだけではウニへの被害は大したことはない。
トゲはまだまだ無数にあるのだ。
ウニも動き始めた。
ウニには人間でいうところの脳は無い。
しかし目と呼べるモノもあるし口もあるしトゲも動く。
黙って食われるつもりはないのだろう、トゲを使って迎撃体勢に入った。
幾つものトゲがシャコの方を向いているが、内一本が素早く伸びた。
「ヴヴヴッ!?」
「……」
咄嗟の判断で頭を反らしたシャコの直ぐ側を、伸びたトゲが通り抜けた。
シャコはいきなりの攻撃に驚いて低い鳴き声が出てしまったようだ。
対してウニは静かなものだな。
そしてシャコが激高し、攻撃の激しさが増した。
……びっくりして声出ちゃったのが恥ずかしかったとかじゃないよな?
それからのシャコはまるで人間のボクサーの様に、ウニの周りを素早く移動しながらヒット&アウェイを繰り返し、着実にトゲの数を減らしていった。
その間、ウニも黙ってやられていた訳ではなく、動き回るシャコ目掛けてトゲを伸ばしていたのだが、何せシャコが素早い。
一本も当てる事が出来ずに、遂には逆さにひっくり返されてしまった。
海底の砂の部分に頂点のトゲが突き刺さり、逆さまのまま動けないウニに、シャコが勝者の余裕を漂わせながら悠然と近付く。
表情が有ればドヤ顔決めてそうだなアイツ。
トドメのパンチをかまそうと、腕に力を溜めながら近付くシャコだったが、しかし、そのパンチが放たれる事はなかった。
完全な油断。
勝利を核心しながら近付くシャコに、今までトゲを伸ばして攻撃していたウニは、今度は小さめのトゲを射出して攻撃した。
しかもこの射出されたトゲ、どうやら電撃を纏っているようで、トゲが胴体に突き刺さったシャコは痺れて動けなくなっている。
シャコ君からは「こんなのアリかよ!?」と言う声が聞こえてきそうだ。
俺も完全に同意する。
魔物ってやっぱ怖えぇーー!!
それはともかく、この素晴らしい戦いを見せてくれた二者を讃えなければならないな。
トゲの射線に気を付け、拍手をしながら彼等に近付いた。
「ブクガボボー!ブクガボボー!(ブラボー!ブラボー!)」
水の中だから上手く声が出ないし、拍手の音も出せなかったが……まぁいい。
君達はよく戦った。
まずシャコ君、君のパンチは間違いなく世界を狙える。
しかし、最後の最後で油断したのは残念だった。
もう少しだったのにな?
そしてウニちゃん、君のその最期まで諦めない姿勢にはとても感銘を受けた。
俺もそうありたいものだ。
俺は君達の戦いを忘れないだろう、ありがとう!
そして俺は動けないでいる彼等に素早くトドメを刺した。
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もう聞こえていないだろうが君達にこの言葉を贈ろう。
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